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明日への階段

たかが1次選考。。。。。


されど1次選考。。。。。


1次選考の結果発表の前に明かされた驚愕の真実。


今回の応募総数、


14058組


アタシは尋常じゃない速度で全身を鳥肌が駆け巡るのを感じた。


事務局は何十人ものスタッフで約3ヶ月、応募開始から締切後の間を掛けて全て聴くらしい。


そんな途方も無いコト、聞いたダケでどっと疲れがくる。


スタッフに感服。


その中から2次選考に進めたのは60会場×15〜20組。


この時点で既に概算で1/12くらいに絞られて、次の3次選考には各会場から2組ずつ。


更に1/7。


最初からは一気に1/140。


そのコトがアタマにあったかどうかも分からない程演奏中のコトは全く憶えていなかった。


まるで夢の中にいたかのような感覚で。




ステージから退く時にみんなからもみくちゃにされた辺りからは憶えていた。


それくらい無我夢中だった。


「2次選考、当ブロック通過者2組目は、wonderful☆worldの皆さんです!!」


えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?????


前のテッちゃん、微動だにせず。


アタシの背後からみんなの声がする。


誰かがアタシに抱きつく。


やっちゃったよ・・・。




「まだ2次だよ。まだ浮かれていられないよ」


終了後のミーティング。


喜ぶナオくんとセンちゃんと何故か付いてきた関に一喝、テッちゃんがいつも通りcoolに言い放った。


アタシは通過したコトがまだイマイチ把握出来てないのと、“moon”を演るのが近付いてきている猛烈な緊張で心中はぐっちゃぐちゃだった。


「今日くらい浮かれさせろよ」


畏縮するセンちゃんと関。


強めに反論するのはナオくん。


「このくらいで浮かれんな!!お楽しみは取っとけ!」


いつにない真剣なまぁクンにみんな何も言い返せなかった。


まぁクンらしくない。


ソレがみんなの正直な感想だったと思うよ。


でも分かった。


誰よりもコレに懸けているのはまぁクンなんだって。


まぁクンは誰よりもアツい男。


もちろんみんな音楽のコトにはアツいケドまぁクンは中でも1番アツい。


ソレが原因でバンドが長続きしないって自分で言ってた。


「次からは2曲ずつだ。と言うコトでバラードとアップテンポ1曲ずつがイイと思うんだけど」


ドキ→→→→→→→→→→ン!!!!!


「だろうな」

「賛成」

「オレも」


テッちゃんの提案にみんな即答するなかアタシは1人、何も反応出来ないでいた。


「来たっ!!!!!」


1人喜ぶ関。


何だかムカつくわぁ。


つい関をキツく睨んでしまう。


その後、上目遣いでテッちゃんを見る。


やっぱり涼しげな顔のテッちゃん。


みんな口々に上げた候補曲の中に当然moonも上がった。


アタシは恐れ多くてmoonを挙げれなくて別の曲を挙げた。


でも結局moonは候補の中に上がってしまい、数日後に控えているライヴでのリストにも入ってしまった。


また眠れない日々が続くわぁ。


アタシが大人しすぎるコトを不思議に思ったセンちゃんがアタシの顔を覗き込んできた。


「ヒヨ?」


『ん?』


ん?って言ったつもりが声が上ずっちゃって、“ん”じゃなくて気の抜けた“ふぅ”になっちゃった。


「ちなみに“moon”はイントロでヒヨのキーボード入れるから」


「えぇぇぇぇぇ?」


今回はナオくんの絶叫が店内に響いた。


一気に周りの視線がウチらに集まる。


相変わらず恥ずかしい。


しかも今回は加えて自分のコトだし。


「オマエ、いつの間にそんな」


唖然としているナオくん。


「ココんとこ忙しいのに御苦労さん。ましてやオマエが一番忙しいのにな」


センちゃんの優しい笑顔に思わずジーンとなる。


「ヒヨが、加入してしばらくの間あまりにもオレらが出来上がり過ぎてたから、自分が足手まといになるんじゃないかって悩んでたんだって」


ぷぅ→→→→→→→→→→


テッちゃん・・・。


恥ずかしいぃぃぃぃぃ。


照れ臭くて顔を上げられないよ。


今にも顔から火を噴きそうだよ。


「やるなぁ、ひー!」


隣のまぁクンに羽交い締めにされた。


目にはうっすら涙。


羽交い締めに遇ったからではないよ。


あえてみんなの前で言われちゃうとね。


「じゃ、練習行くか」


テッちゃんがスッと立ち上がった。


せっかくみんな休み取ってるからって、2次選考が通ってもダメだったとしても終了後に練習は入れようってコトになってた。


否応なしにアタシはみんなの前で“moon”を演るハメになり。


それはそれはもう半端ない緊張につぐ緊張で。


手が震えちゃって。


たかがイントロの12小節足らずなのに情けない。


でもみんな温かい笑顔で拍手してくれた。


それでまた泣いちゃった。


かろうじてミスは無かったケド。


その後も何回かみんなで合わせて。


「決定だな」


とんでもないコトを言ってくれちゃったのはナオくん。


だけど他のメンバーもみんな頷いてる。


関を含め。


とりあえずライヴで演るコトになってしまった。





ライヴと言ってもまだまだ動員数のほとんどは身内や知り合い。


自分達のノルマをさばくのがやっとで。


まだ数回しか演ってないけど。


グレイトロックって言ってもまだ2次選考だからメディアで取り上げられるワケじゃないから知名度は変わってない。


着替えと道具の入った一段と大きなバッグを持って学校から直行。


やっぱり関も一緒。


関もなぜか大きなバッグを持っている。


「おはよーございまっす」

『おはよーございまぁす』


2人揃って会場入りした時にはもうリハーサルが始まっていた。


取り急ぎ制服のままでリハーサル。


えっ!?


同じく制服のままの関は一眼レフを片手にステージに向かってカメラマンみたいな格好してる。


『どーしたの?ソレ!』


歌そっちのけで関に突っ込む。


「アニキの借りてきた」


ビックリしたぁ。


さすがにいくらなんでもあんなご立派な一眼レフを自費購入まではしないよね。


ナオくんやまぁクンはかなり興味を持っているよう。


ウチらのリハーサルが終わり、アタシの準備中男子はみんな一眼レフに夢中だった。


みんな凄く子供みたいな顔してる。


『アンタは何なのよ』


何の違和感もなくウチらの中に溶け込んでいる関にアタシは違和感炸裂。


ヘアアイロンで髪をセットしながら鏡越しに関に噛みつく。


「もう純也は完璧にスタッフだろ」


隣のナオくんが言った。


みんな黙認。


『アンタ自分のバンドどうすんのよ!』


更に噛みつく。


関は高校の軽音部でバンドを演っている。


ポジションはボーカル。


「問題ねぇよ。他のヤツらもみんな校外で別に演ってるから」


何喰わぬ顔の関。


ダメだこりゃ・・・。




ウチらの出番が終わった時に関はいなかった。


舞台袖で待ってるかと思ったら。


楽屋にもいなかった。


どこ行ったんだ?アイツ。


アイツの荷物は置きっぱなし。


大事な一眼レフもある。


フロアにでもいるのかな。


構わず着替える。


しばらくすると関は満面の笑顔で戻ってきた。


「おぅお帰り」


至って自然に挨拶するテッちゃん。


「お疲れ様でした!!バンドチェンジの間にビラ配って来ました」


やりきった感爆裂の関。


『ビラ?』


すかさず聞き返す。


自信満々の関がバッグから出したのは1枚のビラだった。


「すげぇ・・・」

「ぅおぉぉぉ!!!!!」

「やるなぁ純也!!」

「頼もしいな」


みんながみんな口々に絶賛してるのを、アタシはなぜか素直になれないでいた。


素っ気なくあしらっちゃって。


でも、確かにクオリティは高かった。


「オマエ才能あんなぁ」


べた褒めにやたらと照れている関。


かくしてコレを機に関は完全にウチらのスタッフに染まってしまったのだった。




とは言え関もバイトしてるから何でもかんでもくっついて来るワケじゃなく校内で常に2人でいるワケでもなく。


気になるのはライヴの時や勝手にポスターやビラなんかを作ってくる時くらいで。


しかもステッカーまで作っちゃって。


“何者なんだ”って呆れを通り越して唖然としちゃう。


バンドはと言えば、


“今度の日曜、店空いてるって。”


なんてセンちゃんからのメールが来てはバイト先の店長に頭下げて休みもらって。


“「全国大会行かなかったら当分無給な」”


なんて冗談まじりだけどみんな協力してくれている。


休みを代わってくれるバイト仲間も、


“全国行かなかったら当分お昼おごってね。”


なんて。


みんなにアタマが上がらない。


是が非でも進まなきゃ。


イイ意味でのプレッシャーだよ。


“「くれぐれも練習し過ぎて喉やられたとか腱鞘炎になったとかアホなコト言わないでね」”


ってテッちゃんに念を押されてるからあまり無理はしないようにしてるモノのやっぱり練習は無理しちゃうよね。


でもやっぱりそれより気を遣っているのは喉。


のど飴は結構マメになめてる。


飲み物もお茶やミネラルウォーターを飲むようにしてるし。


風邪引かないようにも注意して。


“「ここまで来たら後は自己管理だ」”


ともテッちゃんから言われる。


アタシは大人しく従っている。


最近ホントに忙しいから。


もう少しで冬休みなんだけど今すぐに冬休みが来ないかなって祈っちゃう程忙しい。


ココで根を上げてたらこの先まだまだあるのにとてもじゃないけどもたないけど、


こんな日々、経験ないから正直キツい。


3次選考進出はそれでもまだ120組。


7会場から2組ずつ選ばれて、その後が全国大会。


全国大会で優勝した1組が晴れてグレイトロックに出場出来る。


当然だけど、進めば進む程忙しくなる。


さすがに根は上げないけどただ1つ、


“休みを下さい...”


“当たり構わず作戦”の成果がイイ方向に出て、ちょっとずつオーディションが重なって信じられない程の忙しさだから。


カラダ壊さない方がおかしいんじゃないかって思う。






そして冬休み初日、


事件は起きた。






キーボードを背負ったままでアタシは会場を見上げたまましばらくその場に立ち尽くした。


何度か観客としては来たコトのあるホール。


まさかココにこうして来ちゃうなんて。。。


今更ながら畏縮。


アタシのそんな気持ちはもちろん御構い無しに大会は粛々と進み、、、、、




「発表します!」


心臓、ぶち破れそう。


何度か客としてはライヴを観に来たコトのあるホールのステージの上。


アタマが真っ白になった演奏を終え結果発表の時。


自分の心臓の音のあまりの大きさに周りの音を掻き消す程の威力。


「グレイトロックフェス全国大会、当ブロックもう1組の代表は・・・」


気絶しそう。


足が震えてる。


力が入りすぎて手が痛い。


目が潤んでる。


「wonderful☆worldです」


ピ→→→→→→→→→→


アタシの耳にはそんな音が聴こえていた。


まさに思考停止‥‥‥


どうやらアタシは立ったまま気絶してたらしい。


ブロック大会からテレビカメラが入っていたコトによりアタシのトリップ状態は後にモノの見事に全国放送で流れてしまうコトになるのだが、


立ったまま気絶したと言う事実はかろうじてメンバーしか気付いてなかったらしい。






とにもかくにも、


wonderful☆world、


グレイトロックフェス、


約1/1400の確率の全国大会に


出場決定.....


してしまいました→→→→→→→→→→!!!!!

























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