少年よ大志を抱け!!
・・・・・・・・・・
飛び出したのはいいケド、、、、、
どうしよう.....
居ても立ってもいられなくて指輪を持って飛び出したはいいケド・・・、
どうすんだ?アタシ。
会見て、ドコでやってんだろうか。
アホだアタシ。
無計画にも程がある。
「何やってんだよ!!」
関が追いかけてきた。
思いっ切りバツの悪さ爆裂のアタシ。
『真壁サンのトコ、行かなきゃ』
アタシの一言に関は思いっ切り眉をつり上げた。
「オマエ、バカだろ」
容赦ない関のコトバ。
わかってる。
わかってるよ!?
だけど行かなきゃ。
『ケリつけなきゃ!!』
あれ?
あの車って。
「行くぞ!!」
えっ?やっぱり???.....
龍神サン達が自分達の車で現れた。
「ここから真壁の事務所までは車ならすぐだ。関も乗れ!」
龍神サン・・・。
鳥肌が立ち、とたんに涙が込み上げてきた。
視界がぼやける。
『どうして・・・?』
泣き声で。
「早くしないと会見終わるぞ?」
凱サンに急かされ、関とvivien号に乗り込んだ。
高級国産ワゴン車vivien号、
初乗車!!!!!
「イイんですか!?コイツのやろうとしているコトは火に油を注ぐようなモンなんですよ!?」
声を荒げる関にvivienのメンバーサン達はみんなただただ笑顔で交わす。
「そうは思わねぇけど?」
風雅サンが含み笑いで言った。
「じゃなかったら援護しねぇよ」
流雅サンも。
『どうしてわかったんですか?』
まだうるうるしてる。
「妹だもん」
何気ない龍神サンの一言にアタシの理性は壊滅寸前だった。
「さすがに真っ先に気付いたのは龍神。すっげー嬉しそうに降りてきてたよ」
雷神サンが教えてくれた。
関は仏頂面でアタシをにらんでいる。
「オマエ、バカだろ」
関の目が怖い。
殺気すら感じる。
本気だ。
「まぁまぁ関クン怒るなよ。面白いコトになるから大丈夫だよ。楽しみにしといてよ」
何やらイヤらしさすら感じる凱サンに関は困惑の様子。
テレビをつけると中継は終わっていてスタジオトークに変わっていた。
「終わったんじゃないですか?帰りましょ」
気が気じゃない関。
「中継が終わっただけだよ。まだやってるよ」
運転席のローディーの半沢サンが言った。
『皆さんにご迷惑お掛けして申し訳ありません。しかも半沢サンにまで』
ホントに申し訳ないよぉ。
「みんな迷惑だなんてこれっぽっちも思ってないですから気にしないで。ねぇ!」
半沢サンのコトバにvivienの皆さん全員が超笑顔で頷いてくれた。
またしても目頭が熱くなるよ。
事務所の前の玄関にいた警備員サンがウチらの顔を見て唖然としていた。
「中に話通しといて下さいねぇ。失礼しま〜っす」
唖然とする警備員サンをヨソに飄々としながら半沢サンは通過。
さすが大御所。
スタッフも堂々としている。
事務所の前にベタ付けしてくれた。
みんなに背中を押され大きく深呼吸して車を降りた。
早速受付に話が行ったらしく受付のお姉さんが立って待ち構えていた。
「いらっしゃいませ」
かなり困惑気味の受付のお姉さん。
『おはようございます。wonderful☆worldの彩沢陽依です。会見の会場って、何階ですか?』
ドキドキはしていなかった。
むしろ穏やかだった。
お姉さんにも冷静に挨拶。
「に、2階の会議室でございます」
受付のお姉さん、あたふたしてる。
アタシが殴り込みに来たかとでも思ってるんじゃなかろうかってくらいに。
強ち間違いではないけどね。
階段を昇っていると真壁サンのマネージャーさんがモノ凄い勢いで駆け寄ってきた。
「陽依ちゃん!!!!!」
鬼気迫る声。
『おはようございます。ケリつけに来ました』
満面の笑顔で。
自分のコトながら若干恐ろしかった。
この、心臓に毛が生えてるんじゃないだろうかって程の度胸が。
「ケリって。これ以上もっと迷惑掛けるかも知れないよ?」
必死に止めようとするマネージャーさん。
でもヘンに冷静なアタシは思った。
“これ以上???”
って。
さっきの龍神サン達ばりに眉毛を思い切りつり上げて。(ココロの中でネっ!)
これ以上なんてないだろ。
アタシが学校休んで事務所にマスコミが押し寄せて龍神サン達にも迷惑かけて、
これ以上何があるってのよ!!!!!
ココロの中ではそう思いながらアタシは構わず突き進んだ。
『まだ会見って、やってますか?』
背後のマネージャーさんに向かって。
「イイの?ホントに」
かなり弱気なマネージャーさん。
『大丈夫です』
後ろを見ずに。
「まだやってるよ。なかなか静哉がはっきり言えなくて」
ふぅぅぅ。
情けないなぁ。
天下の真壁静哉はそんなにへたれだったの!?
『じゃ、ちょうどイイですねっ』
ドアに手を掛けたらマネージャーさんが開けてくれた。
「ゴメンね」
弱々しく一言そう呟いて。
アタシはドアが開く瞬間、大きく息を吸った。
やるしかない!!!!!
ココロの中で拳を突き上げて。
アタシの登場に会場全体がどよめいた。
「ひー・・・、ちゃん」
顔面蒼白の真壁サン。
アタシも真壁サンも大量のフラッシュを浴びてる。
真壁サンの隣に座っていた真壁サンの事務所の社長さんが、慌てて席を空けてくれた。
さすがにほんの少しダケでも怯むワ。
お礼(?)に軽くアタマを下げてみる。
アタシは硬直する真壁サンの横で立ち止まり、息つく間も無く指輪を突き出して言った。
『お邪魔いたします。wonderful☆worldの彩沢陽依です。やっぱりアタシには受け取れません。まだ高校生ですし。せっかくですがお返しします。売ったトコロでマスコミの方にスクープされるのも厄介なので直接お返しします』
アタシの異様な迫力に圧倒されてるのかドン引きなのか会場の空気が凍り付いている。
ココで怯まないのが残念なアタシ。
さらに畳み掛ける。
『よってたかって大の大人が1人に集中攻撃はいかがなモノでしょうか。言いたいコトも言えないんじゃないでしょうか。これ以上はイイ大人のするコトじゃないと思います。アタシは自分の意思でココにいます。今回のコトについてはフタマタだなんてちっとも思ってません。真壁サンはまだ数少ない芸能界の親しくさせてもらっている方の1人なダケです。そもそも奥様はもう身重なんです。奥様に万が一のコトがあったら大人として責任取れますか?』
社長のトコロにあったマイクで言ってやった。
ざわつく会場内。
『失礼しました』
そう言ってアタシはドアに向かった。
真壁サンのマネージャーサンがドアを開けて待っていてくれた。
「ありがとう」
眉を細めて。
アタシは笑顔で挨拶して会場を後にした。
「あっぱれ!」
ロビーでみんなが待っていてくれた。
アタシはたまらず龍神サンに駆け寄ってしまった。
「良くやった!あっぱれだよ!!」
龍神サンの顔は見れなかったけど声は神憑り的に温かく聴こえた。
安心感からか全身の力が抜けてヘタリ込んでしまった。
「撮んないんスか?」
えっ!?
雷神サンが誰かに言った。
振り向くとアタシの後ろに気まずそうな数人のマスコミがいた。
「撮ってイイッスよ?訴えないッスから。むしろバンバン使っちゃって下さい」
笑顔の凱サンにマスコミは怯んだようで、メチャクチャうろたえて逃げるように去って行った。
みんなが笑う中アタシは笑えなかった。
ん?電話が鳴ってる。
モトさんだ。
「バカヤロー!!!!!」
“もしもし”を言う前にモトさんに怒鳴られた。
『へっ?』
何で??
「中継復活してたんだよ。オマエの啖呵が全国にオンエアされたんだよ!!」
『え゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ??????????』
力の限り叫んでしまった。
「良くやった」
はぃ????????????????????
何ですと?
呆気に取られるアタシを見て何故かvivienのメンバーがハイタッチで大喜びしている。
「社長も大喜びしてたよ。龍神サンに代われるか?」
ワケが分からない。
言われるがまま龍神サンに渡した。
「お疲れ様です」
モトさんと話しながら龍神サンはアタシの手を引っ張ってアタシを立ち上がらせてくれた。
『ありがとうございます』
アタシが立ち上がると同時にみんなが歩き出した。
「今夜はハデに祝ってやりたいんですけど、イイですか?」
龍神サンが何か言ってる。
アタシはキョロキョロみんなの表情を確かめた。
みんなどう見ても笑顔だ。
関以外は。
「オマエ、自分が何をしでかしたか解ってんのか?」
かなりお怒りの関。
「まぁまぁ関クン、そう怒るなって」
流雅サンが関のアタマを軽く叩く。
「今頃ワンワーのHPもヒヨのブログも事務所も大変なコトになってるから見とけ」
したり顔で言う風雅サン。
アタシも関も全くついていけてない。
「クレームでじゃなくてですか?」
関の発言に小さく頷く。
「コレがこの世界の面白いトコロだよ」
会話を終えた龍神サンがアタシにスマホを渡しながら言った。
「しかし、やっぱスゲェよヒヨは。真壁や龍神じゃなくても惚れ惚れするワ」
ビックリするコトを平気で言うのは雷神サン。
「だろ?さすがオレが認めたヤツだ」
ドキ→→→→→→→→→→ン↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
だからどうして龍神サンはこう言うコトをサラリと言っちゃうのよぉ!!!
勘違いしちゃうよ。
事務所に戻ると騒然としているようだった。
「おぅヒヨ!!お帰り!」
・・・どう見てもご機嫌な社長が迎えてくれた。
何だココは。
アタシ、別の世界に来ちゃった???
アタシのしたコトはマスコミにケンカを売ったんじゃないの???
ワンワー自体に悪影響なんじゃないの?
「反響がハンパないぞ!インタビューのオファーやら何やらでさっきから電話がなりっぱなしだ」
えぇぇぇぇぇ??????????
ぽっ・・・かぁ〜〜〜ん。
アタマの中、真っっっ白。
「だから言ったろ?コレがこの世界の面白いトコだって。“桜の樹の下で”は益々とんでもないコトになるぞ」
関が凱サンに羽交い締めにされている。
「オレら、とりあえず行くワ。連絡する」
そう言って龍神サン達は帰っていった。
『ありがとうございました!!』
アタシの声にみんな振り向かずに背中を向けたままで、ただ手を上げて消えていった。
カッコいい.....
見とれて立ち尽くすアタシは関の声で我に返った。
「ひー!!」
余韻、ぶち壊し。
振り返ると関はパソコンに釘付けになっていた。
「見ろよ、コレ」
関が見ていたのはワンワーのHPだった。
“ひーちゃんブラボー!!”
“良く言った!!!!!”
モノ凄い数のコメントが、
モノ凄い速度で送られてきている。
「こっちもスゴいわよ」
隣のデスクでは事務のスタッフさんが真壁サンのHPをチェックしている。
真壁サンのHPなのにアタシの名前が濫立状態。
もちろん中には中傷的な意見もあるよ。
“調子に乗り過ぎ”
とか、
“出しゃばりオンナ”
とか女子同士だから容赦ない。
でも驚くコトに絶賛の声もある。
“同じオンナとしてあの度胸に感服!”
とか、
“同じオンナとして見習わなきゃと思った”
なんて。
恐れ多い限りです。
「vivienサンのトコもスゴいよ!!」
別のスタッフさんがコーフン気味に。
龍神サン???
あ゛っっっ!!!!!
アタシはとっさに自分のスマホをチェックした。
スゴい数の着信と受信が。
関以外のメンバー、サヨリ、パパママ、学校の友達、バイト友達、とにかくスゴい数。
自分のしたコトの重大さに今更ながら驚く。
後悔はしてないんだけどぉ。
メンバーからのメールはみんな優しかった。
“お疲れさん”(なおクン)
“あっぱれ!!さすがはウチの看板娘!”(センちゃん)
“ばぁ〜っか!”(まぁクン)
“ひよらしいよ。”(テッちゃん)
誰も怒ってない。
龍神サンのブログを見てみた。
“あっぱれ”
このタイトルはもしや。
更新時間がちょっと前だし・・・。
“みんな見たか?我が妹、舎弟の勇姿を!!いやぁ、我ながら鳥肌が立ったね。さすがオレのファンだけあってメンタルの強さは人並み外れてんな”
ぴ→→→→→→→→→→
恥ずかしさMAX!!↑↑↑↑↑
“まぁ、もちろんアレを悪く言うヤツはいるだろう。否定はしない。ただ間違いなく言えるコトは、オレは完全に支持するってコト。手前味噌だって言われたらそうかも知れないケド、批判するヤツに言ってやりたいね、“じゃあお前にはあんな度胸があんのか?”って”
龍神サン・・・。
涙がにじむ。
他のメンバーさんのブログもみんな似たような感じだった。
“龍神が言い出すわけじゃなく誰も何も言わずに自然とワンワーの事務所に向かっていた”
コレは雷神サン。
“アレ、ガチだからね。台本とか打合せとか一切なしだから”
凱サンも。
“ひーちゃんを悪く言うヤツはオレが許さん!!”
流雅サン、
“ビビったね、マジで”
風雅サンも。
みんな移動中になのか、ちゃんと載せてくれてる。
すかさず龍神サンにメールした。
“ありがとうございます。ありがとうございます!”
って。
それしか見つからなかったから。
“今日は1日、とっても慌ただしかったです。実は真壁サンからパルミナを頂いたのは昨夜で、そのコトで全然眠れないまま朝を迎え、気晴らしに行ったコンビニで新聞を見てしまい。何が何だか分からないままモトさんに言われるがまま東京に来て。まさに激動の1日でした。会見は事務所で関やvivienの皆さんと見ていました。マスコミに責められるばかりで何も言えない真壁サンがもどかしくて、無意識のウチに事務所を飛び出してしまっていました。寝ていない故のナチュラルハイもあったのかも知れませんが。“ケリをつけなきゃ!”と思ってはみたモノの、追い駆けてきた関にメチャクチャ怒られました。でも、龍神サン達がすぐに車で来てくれて、察した龍神サン達が真壁サンの事務所に連れていって下さいました。”
ブログとワンワーのHPで経緯を説明した。
自分の気持ちも素直に打ち明けた。
“アタシ1人の身勝手な行動に、周りのたくさんの大人の皆さんはとても温かく護ってくれました。社長もモトさんも、事務所のみんな、そして関以外のメンバーからも。あの会見の場であんなコトバが出たのは正直自分自身驚いています。完全にあの場でとっさに出たアドリブです。今回のコトで、ワンワー関係はもちろん、真壁サン、そしてvivienの皆さんのブログやHPにたくさんの賛否両論のコメントが寄せられて、自分のしたコトの重大さを痛感しています。多くの皆さんにご迷惑とご心配をお掛けしてしまったコトを、この場を借りてお詫び申し上げます。大変申し訳ありませんでした。そして、たくさんの人達に最上級のありがとうを言いたいです。ホントにホントにありがとう!!”
“更新”っっっと!