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くるくる

その夜、超単純なアタシは久しぶりに掛かってきた龍神サンからの電話に、さっきまでのモヤモヤがまるで嘘のように、


ウルトラスーパーハイテンションに変わった。


単純・・・。


“「新人賞祝いしなきゃな。カウントダウンの時何も出来なかったから」”


いつもながら身に余る光栄な御言葉に恐縮しきりのアタシ。


『とんでもないです!!この前ダイブラを頂いたばかりなのに』


声が上ずる。


アタシの緊張が伝わっちゃったのか、笑う龍神サン。


「ホントに気にすんなって。何にもやましい気持ちとかプレゼントしたからってどうこうしようなんてワケじゃないから」


高らかに笑う龍神サンにアタシはモーレツに恥ずかしくなった。


『ですよねぇ。。。親子ほどの年の差の小娘ですからねぇぇぇ』


超恐縮。


「ソレもないな」


へっっっっっ!?!?!?!?!?


なっ、何が???


唖然とする。


結構マジメに反論されたから。


「確かに妹として見てるけど、“親子ほどの小娘”なんて見方はしてないよ」


ドドドドドドキ→→→→→→→→→→ン↑↑↑↑↑


どうしてそう言うコトをサラッと言っちゃうかなぁ…、この人は。


無言になっちゃうよ。


「何か欲しいものある?」


動揺を隠せないこんな状態で何も考えられないよ。


1つしか思い付かない。


でも、コレはまた何かとトラブルがぁ・・・。


“ドライブ”。


しかも今回はお食事付で。


んなコトしたら今度こそ確実にスッパ抜かれるだろ。


アタシ得意の暴走妄想モードに瞬間的に脳が移動する。


ダメだめ駄目ぇぇぇぇぇ!!


「解った!!!任せといて!!」


えっっっっっ???


何?この龍神サンの無邪気な声。


解ったって、何だろう。










週末になり再び上京したアタシに、龍神サンの“解った”の意味の答えが待っていた。


「龍神サンから」


笑顔のモトさんがアタシの指定席の、移動車の助手席にある紙袋を見て言った。





!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!






ダイブラ再び!






今度は大きめの紙袋だった。


「バッグだな」


センちゃんが茶化す。


急激に顔が紅くなる。


だけど、恐らく当たりだろう。






座ってゆっくり慎重に袋を開けた。






やっぱりバッグだった。


しかもリュック!


もしかして龍神サン、アタシがリュック愛用者なコト気付いてた?


リュックそのものは小さいけど大きめのポケットがついていて、ポケット部分にダイブラのロゴがデザインされていて、ロゴのチャームがファスナーのトコロについていて。


色、形、デザインどれを取っても一発で気に入るモノだった。


かなり早い鼓動を抑えきれないままアタシはソッコーで龍神サンに電話した。


出たっ!!


「海崎にアドバイスもらったんだ」


かなり勝ち誇った感の龍神サン。


ちょっとほくそ笑んじゃうよ。。。


“解った”ってそう言う意味だったのね。


『ホントにホントにありがとうございます。アタシ何も出来ないのに』


「いらねぇよ、妹なんだから」


照れる龍神サン。


“「妹なんだから」”


か・・・。


そうだよね。


『海崎サンにもよろしくお伝え下さい』


海崎サンの顔が浮かんだ。


透き通るような白い肌で正真正銘の“クールビューティー”


もちろん申し分ないスタイルで、


イチスタッフなのが勿体無いくらい。


上品な雰囲気で。






アタシは電話を切った後ソッコーでバッグの入れ替えを始めた。


もちろんブログにアップしたよ。


「ひーちゃん、そのうちダイブラからCMのオファーくんじゃねぇの?」


センちゃんの茶化し再び。


「来るワケないじゃん!!」


バカ笑いして否定するのは関。


『そーだよ来るなら龍神サンにだよ』


アタシも加わる。


「海崎さんかもよ?」


モトさん悪のり。


アタシはお構いなしに、


リュックを眺めては、


ニヤニヤしていた。


周りが気味悪がっているのも気にせずに。










その2日後だった-----


天地を揺るがす(?)大事件が起きたのは・・・・・










ここ2日(リュックのコトをブログに載せてから) 、真壁サンからのメールがぱったり無くなった。


アタシのニヤニヤより何よりこっちの方がよっぽど気味が悪い。


気味が悪いと言えば、関も。


“何だコイツ?”ってくらいにある意味気味悪い行動に出られたんだよな。


昨日の帰り道にいきなり。


“「龍神サンのコト好きなのか?」”


って、エラく真面目な顔しちゃって。


だから言ってやったよ、


“『好きは好きだよ!!大好きだよ』”


って。


アイツはただ、


“「そっか」”


ってダケでその話は終わったけど。


まるで真壁サンのコト話した時みたいに。


ちょいちょい気になるな、関の態度。


付き合いが長いから余計気になるよ。


まぁ今回はその後に無言状態が続いてるワケじゃ無いからまだイイけど。


今日は真壁サン達pinky dollがうちらの地元でライヴで、アタシと関は招待されているのだが。


「今日どーすんだ?」


と関。


『この2日、メール来てないんだよね。今日も一切来てない』


スマホを確認しながら。


「えっ!?」


大声で。


「リュックが効いたか?」


真顔の関。


アタシは思わず吹き出しちゃった。


何だかおかしくって。


『かもね』


なんて笑い飛ばしてたその時。


スマホが鳴った。


真壁サンからだ。


ついつい関の顔を見てしまう。


『真壁サンだ』


直接着信ってのが気になるから手が震えてる。


心拍数も上昇。


とりあえず出た。


『もしもし』


ドキドキしてるから声が震え気味。


「おはよっ!!学校終わった?もちろん今日来るよねっ!!」


何ら変わらないいつもの真壁サンのテンションだ。


周りの音がかなり大きい。


リハ中か何かだろう。


来たか催促・・・。


油断してたアタシがバカだった。


関に困った顔をしてみる。


「もし何だったら、開演前だけでもイイよ」


はぁ・・・・・。


真壁サンに聞こえないようにため息。


『解りました』


仕方ない、行くか。


「わざとらしくこのままで行くか。そしたらあまり無駄な抵抗は出来ねぇだろ」


覚悟を決めたかのような表情の関。


何だよ、“無駄な抵抗”って。


また笑っちゃったよ。


「サヨリ、イイのか?」


あ゛っっっっっ!!!!!!!!!!


関のコトバにサヨリのコトバを思い出した。


“「ひーちゃん真壁静哉の楽屋に行くんでしょ!?アタシも行きたいぃぃぃぃぃ!!」”


って大暴れしてるサヨリの姿と共に。


今朝も催促されたっけ。


“『行くかわかんないよ?』”


ってバックテンション気味に言ったらメチャクチャ残念がってたケド。


“「え゛ぇぇぇぇぇ!?!?!?!?!?行こうよぉぉぉ!!」”


って懇願されてたっけ。


しょうがない、連絡するか。










途中で手土産を買い超ハイテンションなサヨリと合流し、アタシ1人ダケ重い足取りで向かった。


pinky dollのライヴって、実は初めてなんだよね。


ファンのコ達の反応が怖いよ。


なるべく裏に裏に向かって行く。


時間的に裏口にファンのコがいてもおかしくはない。


良かったぁぁぁ、いない。


時間的に一旦退いたかな。


放課後の時間だから音漏れを聴くファンがいてもおかしくないかなとは思ったけど。


最初の関門クリア。


大きなため息。


「おはようございます」

『おはようございます』


関が最初に入ってくれた。


何も持ってないサヨリはアタシにピッタリくっついて。


pinky dollのスタッフさんはマネージャーさんしか知らないけど、他のスタッフさん達もウチらのコトを知ってくれてるのか笑顔で通してくれた。


ハタから見たら制服の3人組なんて、いくらpass見せたってフツーは通してもらえないよね。


中に入るとすぐマネージャーサンがウチらに気付いて駆け寄ってきてくれた。


『おはようございます!!』


「おはようヒヨリちゃん。ごめんね、忙しいだろうに静哉のワガママで」


困り顔のマネージャーさんに“ハイ”なんてとても言えなかった。


「ご招待頂きありがとうございます」


反応に困っているとすかさず関が挨拶してくれた。


アタシもすかさず乗っかって手土産を渡す。


『コレ、みなさんでどうぞ』


駅前のケーキ屋サンのミニシュークリーム。


地元ではかなり有名。


「ありがとう。申し訳無いね。御花まで頂いちゃって」


あっ、そう言えばモトサンに確認されたっけ。


“「真壁サンに花贈っとくぞ?」”


って。


何の気なしに返事しちゃってたけど地方にまで贈ってたんだね。


まだメンバーはリハ中のようで、ウチらは周辺にいるスタッフさん達や関係者の方々に挨拶して回った。


地方公演だからとりわけ仲のイイ芸能界の方達はいなかったけど、事務所関係とか地元のメディアの方々に。


別に年少組2人で営業気取りじゃないよ。


何と無く自然に。


当然サヨリは挙動不審気味でずっとアタシの背後に張り付くしか出来ずにいた。


合間合間に“まだ?”ってしつこくて。


挨拶を一通り終わらした後一気にテンションが戻った状態でフロアに行った。


関がドアを開けた瞬間見えた制服で解ったのか、真壁サンのマイク越しに叫ぶ声が聞こえた。


「ひーちゃぁぁぁん!!!!!!関クンも待ってたよ」


いつものハイテンションな真壁サンがソコにはいた。


背後のサヨリのアタシをつかむ力が急激に強くなったのが判った。


痛いくらいだ。


さぞかしコーフンしまくりだろう。


チラッと後ろを見る。


ひきつってるのか強張ってるのか、はたまた実は一応笑顔なのか、全く理解不能な顔になってるよ。


まぁ当然だよね。


アタシだって初めはココロの中ではこんな状態だったもん。




リハが終わりみんなで楽屋に行った。


サヨリはいつの間にか関にピッタリくっついて部屋の隅にいた。


この2日間は何だったのかって程にそれまでの真壁さんと何ら変わらないテンションで色々話し掛けてきた。


この2日音信不通だったコトは一切触れず。


「ハイ、ひーちゃん。来てくれたお礼」


準備の途中、突然自分のバッグを開けたと思ったら真壁サンはアタシに紙袋を差し出した。


「新人賞のお祝い」


えっっっっっ!?


思わず固まってしまった。


龍神サンにもらった3日後に“新人賞祝い”???


しかもこの2日全く音信不通だったのに??


アタシの妄想暴走モードに火が着いた。


同時に関のコトバを思い出した。


“「リュックが効いたか?」”


まさかリュック効果はこっちに流れた?


にしてもなんだろう。


って・・・・・


パルミナじゃん↑↑↑↑↑


良く見ると確かに紙袋(ショップバッグ)からして高級感爆裂だワ。


パルミナは世界的に超有名な超超超一流ブランドで、超超超超超セレブなジュエリーブランド。


良く世界的に有名な人やセレブな人が持ってたりイメージキャラクターをしたり、ブライダルジュエリーにしたりするようなブランドなんだよ!?!?!?


おそらく世界一なハイブランドなんじゃないだろうか。


何にしても10代で持つなんて恐れ多すぎてアタシからしたら神をも超越した、まさに天上がかった存在だよ。


アタシ、また妄想暴走モード突入!


ダイブラよりも高級ブランドだよ?


まさか狙った?


手が震えて中を開けれない。


「気にしないでっ!んなイイもんじゃないから」


屈託のない笑顔で真壁サンは言うけど、、、


パルミナのどこが“イイもんじゃない”ってのよ!!!!!!!!!!


袋を持ったまま固まる。


「気に入ってくれると嬉しいな」


アタシが固まっている間に真壁サンは準備を終えていた。


「じゃ、そろそろ」


関が呼びに来てくれた。


「来てくれてありがとねっ。時間あるなら少し見てってねっ」


眩しいばかりの笑顔でステージの歓声の渦の中に消えていった。


“どうしよう”


アタシは完全に混乱しきっていた。






帰り道もずっと頭の中をぐるぐるいろんなコトがうごめいていて。


泣きたいのを我慢してそのせいで吐きそうになってそれすらも我慢して。


今、最高潮にグッダグダ。


「ひーちゃん?」


さっきからしきりにサヨリがアタシを呼んでいるのは解ってるんだけど、


“「ふぅえ?」”


って、力ない返事が精一杯で。


吐き気を我慢してるから。


「ほっとけ」


一生懸命関がそらしてくれてるのも解った。


「何かあったの??」


関に何度も問い詰めるサヨリ。


「さぁ」


軽く交わす関。


そんな関の友情に余計泣きたくなる。


いつもいつもアタシの気持ちが解ってるかのような絶妙のフォローを入れてくれる。


ホントにかけがえのないヤツだよ。


コイツ、好きなコいないのかなぁ。


2年の時にちょっとだけ付き合ってたコはいたけど。


それ以来見たコトも聞いたコトもないな。


絶対彼女のコト幸せにしてあげれそうだけどな。


実際今だってメチャクチャモテてて、女の子には困らなそう。


関の背中を見つめながらふと考える。


こんな時なのに。










家に着き、サヨリがお風呂の間にアタシは誰にも見られないように自分の部屋に鍵を掛けて、


今まさに突き抜けそうな心臓で真壁サンからもらった袋を開けられないまま凝視状態が続いていた。


どうしよう・・・。


考えたダケで泣きそうだ。


と同時に吐きそうだ、考えすぎて・・・。


懲りずにまたしてもいろんなコトがアタマを過る。


関に言っちゃおうかな。


こんなコトなら関に開けてもらえば良かった。


ってかアイツはきっと気付いてる。


だからこその、あのタイミングだったと思う。






アタシは関を呼び出した。


関は至ってフツーだった。


“「あぁ分かった、今行くワ。待ってろ」”


っていとも簡単に。


まるで、アタシが呼び出すのが想定内だったかのように。


あっ!龍神サンからの着信だっっっっっ。


何で?????


ドラマみたいなタイミングだよ。


『もしもし』


声が震える。


スマホを持ってる手も震えてる。


こんなんじゃ龍神サンに何て言ってるか聞き取ってもらえないよねぇ。


「テツヤからメールもらったんだけど、大丈夫?」


テッちゃん!?!?!?!?!?


『エッ?』


か細い声のアタシ。


「関がオレに連絡してくれって言ってきたって」


え゛っっっっっ!!!!!!!!!!


関が?????


アタシは全身に電気が走ったような衝撃にかられた。


何で?????


しばらくコトバが出なかった。


と同時に涙が止まらなかった。


「ヒヨ!?」


電話の向こうの龍神サンが驚いているのがわかる。


ありがとう、関。


『ずびばぜん』


アタシ、グッタグタな涙声だよ。


ってか、爆裂鼻声。


電話の間に現れていたすぐ隣にいるハズの関の顔が見れない。


だけど、


アタシは思わず自分でも不思議な程に無意識に、


関の手を握り関の肩に寄り掛かっていた。


グレイトロックの決勝大会の時みたいに。




関は何も言わずずっと黙って隣でアタシの話を聞いてくれていた。





























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