スキャンダル女!?
コレは夢?
アタシ、悪い夢でも見てんの??
疲れてんだ、きっと。
そうに違いない!!!
だってあの真壁静哉がアタシに“付き合って”なんてさぁ、
そんなワケないじゃない!!
月と太陽がこの宇宙から無くなったってそんなコトあるワケないよ。
バカバカし過ぎる。
そもそも何処に?って話よね。
買い物?
ライヴ???
あり得ないっての!!!!!
でもメールには確かにそう書いてある。
しかも相手はどう見てもどう読んでも“真壁サン”で。
アタシは龍神サンとの騒動の時のコトが過ってしまった。
「ひー?」
スマホを持って画面を見たままフリーズしていたアタシの顔を関が覗き込んできた。
アタシはたまらず声を上げた。
『う゛あ゛ぁぁぁっっっ』
表現し難いアタシの声は周り全員にアタシの動揺を露呈させてしまった。
良かったぁ、画面戻しといて。
スマホを見られかねないからね。
「すげぇ顔。見ちゃいけないモノ見たみたいな顔してんぞ?」
ドン引きの関。
みんなの視線も怖い。
アタシの心臓は最高潮に速く動いている。
『ごめん』
胸が苦しい。
スマホを持つ手が尋常じゃない程の汗ばみよう。
動揺してんのモロバレだよ、これじゃあ。
ウソ発見器とか掛けられたらイッパツだぞ、きっと。
「どうかした?」
いつも以上に優しく響くテッちゃんの声。
アタシはただ首を振るしか出来なかった。
歩き方まで動揺が出て。
心臓がばっくばくなモンだからロボット歩きみたいにぎこちなくなっちゃって。
アタシのアタマの中のスポーツ新聞は例のごとく勝手に一面記事が出来上がっていた。
“大物好きの新人、今度のお相手は真壁静哉”
“デビューと同時に恋多き女っぷりもデビューか?”
うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!
ココロの中でアタマを振り乱す。
ダメだっっっ!!!!!
Pinky dollファンに殺される・・・・・。
龍神サンファンにはかなり護られるかも知れないけど。
ダメだっっっ!!!!!
ダメダメダメぇぇぇぇぇ。
ビク→→→→→ン↑↑↑
再び真壁サンからメールが。
“今ドコ?迎えに行ってもイイ?”
嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ↑↑↑↑↑
アタシは余りの動揺に全身が震えていた。
「ヒヨ?」
隣の関がうろたえている。
どどどどどどどどどど
どうしよう!!!!!
どうしたらイイの?
テッちゃんに相談??
それともモトさん?
「大丈夫か?顔色悪いぞ?」
車を路肩に停めてくれた。
『大丈夫。大丈夫』
多分コレは自分に言い聞かせてるんだと思う。
泣きそうな声で精一杯答えた。。。
万が一のコトを考えてモトさんには言った方がイイのかなぁ。
スキャンダル女になりたくないもん。
「そんなに1位が嬉しいのか?そりゃそうだよな。あんなに苦労したもんな」
勝手に納得してる関。
構っていられない。
ほっとこう。
とりあえず返信して様子を見よう。
何かの間違いだろうから。
“何でアタシなんですか?”
ボタンを押す手が震える。
返信はすぐに帰ってきた。
“グレイトロックの番組見ててずっと気になってたんだ。言ったでしょ、ファンだって”
・・・・・・・・・・、
そうだった.....
確かに挨拶の時、そう言ってくれてたよね。
何だかクラクラしてきた。
“とにかく話がしたい。逢ってくれないかな”
どうしようぅぅぅ。
『モトさん、ちょっとイイ?』
アタシは意を決して切り出した。
そう言って車を降りた。
モトさんも車を降りてくれた。
「時間も時間だからホテルに来てもらうとイイよ。何かあってもすぐメンバーが出ていけるし」
今までにないほどの温かさを感じた。
アタシが弱ってるからなダケなんだろうけど。
たまらず泣いちゃったよ。
「とりあえずは誰にも言わないでおくからもし何かあったらまずオレに言って」
頷くしか出来なかった。
“もうすぐホテルに着くんでホテルのロビーでイイですか?未成年なんで”
そう送信して車に戻った。
泣きながら戻ったアタシに、心なしかみんな温かかった。
“大丈夫か?”
とか、
“どうした?”
とかは敢えて聞かないでくれて。
ただ、
“おかえり”
って、笑顔で言ってくれるだけだった。
それがたまらなく嬉しかった。
そして、辛かった。
もしかしたらまた迷惑掛けちゃうかも知れないから。
そう思ったらまたどうしようもなく泣けてきちゃってアタシは1人うずくまって泣いた。
助手席だったのが幸いで。
みんなに迷惑を掛けるくらいなら今みんなに言ってしまった方がイイんじゃないか。
そんなコトも考えたけど、
まだ付き合うコトになったワケじゃないから今はとりあえず言わないでおこう。
ただ、見つかる可能性もあるから、
『今から真壁サンとロビーで逢うね』
ってダケ、精一杯の笑顔で言おうとして振り向いた瞬間、
関が一言
「デイリーで1位だったくらいでビビってんじゃねぇよ!せめて月間で1位になってからにしろ!!」
って、照れ臭そうにスマホをいじりながら言った。
センちゃんやナオくんは驚いた顔をしてたけど。
きっといつもならキレてただろうけど、今回は何だかそれが逆に嬉しかった。
きっと関はそんなつもりでは言ってないだろうけど。(間違いなく)
隣のモトさんは失笑していた。
ホテルに着いてロビーでみんなと別れ、アタシは1人ロビーで待っていた。
途方もない緊張の中で。
“あれ?ひー、どした?”
センちゃんに声を掛けられちゃったから思わず言い掛けたけど、またしても関が遮った。
「ほっときましょ」
そう言ってセンちゃんを促した。
関、気付いてんのかなぁ・・・・・。
、、、んなワケないよねぇ。
でも、ありがとう!
気持ちを落ち着かせるために待ってる間、スマホの待受画面をずっと見つめていた。
龍神サンとの2ショット。
アタシの精神安定剤。
ヘッドフォンから流れるのはvivienサン。
龍神サン。
龍神サンに相談したら何て答えてくれるかなぁ。
アタシの中で龍神サンの存在はかなり大きい。
今も、今から逢う真壁サンじゃなくて龍神サンのコトがアタマを埋め尽くしている。
アタシにとって龍神サンは、ココロのカレシでありお兄ちゃんであり先輩であり尊敬する偉大な人。
“好き”ってコトバだけでは済まない程。
“好き”・・・・・
ワンワーに夢中になり過ぎて、異性に対する“好き”がかなりご無沙汰してたからな。
だから真壁サンにあんなコト言われても何にも反応出来ないんだと思う。
待受の龍神サンを見つめながらふけっていた。
「お待たせ!」
ドキ→→→→→→→→→→ン↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
来たよ来ちゃったよぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!
“あの”まかべせいやがぁぁぁぁぁ
さっきのままの、まかべせいやだよ。
ぴんきーどーるのまかべせいやだよぉぉぉぉぉ↑↑↑↑↑
って、今さら何言ってんだ?アタシ。
「ゴメンね、無理言って。待たせちゃったし」
ま、まぶし・いぃぃぃ。
何だろこのオーラ。
コレが“スターのオーラ”なんだね、きっと。
ダメだ、とてもじゃないけどアタシには勿体無さ過ぎるよ。。。
眩しすぎて直視出来ない。
心臓だって今にも破裂しそうだし。
息苦しさすら感じる。
なぜだろう。。。
さっき初めて御対面した時は何とも無かったのに。
カラダがガクガク震えてる・・・。
顔だってきっとひきつってるに違いない。
やっぱりあんなコト言われちゃぁねぇ・・・。
話してる真壁サンの声が何だか遠くに聴こえる。
こんなに目の前にいるのに。
あわててスマホをカバンにしまった。
「突然あんなメールしちゃってゴメンね。ビックリしたよね」
当たり前だよ!!
天下の真壁静哉に“付き合おう”なんて言われてビックリしないヤツなんかいないよ!!!
心の中で即突っ込む。
だけど口では
『はいぃ』
超か細い声で。
またしても“妄想見出し”が頭を駆け巡る。
“深夜の密会”
“共演直後の真夜中のデート”
どうしてこんな時に想像力が豊かになれんだろ、アタシ。
何だかイマイチ良く憶えてないけど、
毎日静哉サンからメールが来る。
1日に何回も。
“おはよう”
とか
“今からドラマの収録”
なんて。
で、どうなったんだっけ?
付き合うの?
いゃ、違うよねぇ?
“「まだデビューしたばかりだし、この前龍神サンとのコトがあったばっかりなんで今はまだ」”
って言ったよね?
そしたら思いっきり笑顔で
“「そっか。そうだよね。ごめん。勝手なコト言って」”
って言ってくれたんだよね!?
ホテルのフロントの人に写メ撮ってもらって、
その場でブログを更新して帰ってったよね?
ブログには
“オレの大好きなワンワーのひーちゃんと♪”
って、フロントの人に撮ってもらった画像があって。
“大好きなひーちゃんとたくさんいろんな話がしたくってひーちゃんのホテルに押し掛けちゃいました!!遅い時間にも関わらず快く待っててくれてありがとう!!!”
って堂々と。
これもまた龍神サン作戦と同じか??
“先手必勝”ってヤツ?
数日後、見事にメンバーや龍神サン達にも知られるトコロとなるのだが、
1日に何回もメールが来てるコトは言ってない。
言えない・・・。
あんなに堂々と公言してくれてるんだから、言っても大丈夫そうなモンなんだけどさ。
言えない・・・。
何でだろう。
特に龍神サンには死んでも言えない。
一番頼れる存在のハズなのに。
龍神サンから真壁サンネタをフラれるとモーレツに胸が痛む。。。
アタシにとって龍神サンは、
“お兄ちゃん”なんじゃないの???
“尊敬する先輩”なんじゃないの?????
じゃぁどうして胸が苦しいの!?
誰か教えてぇぇぇぇぇ。
年末の賞レース、
いくつか最優秀新人賞を戴いて、
完全観客で行ったハズの大晦日のvivienのカウントダウンライヴにまんまと飛び入り参加させられ、
嵐のような1年は幕を閉じた。
正月を実家で過ごし、いよいよ引越。
アタシと関はちょっとの間だけ週末に行ったり来たりを繰り返すけど、
いよいよ上京。
久し振りに帰ってきた地元は、
何だか物凄く懐かしく感じた。
この見慣れた景色はちっとも変わらないのに、
アタシ自身の身辺が激しく変わった。
今まで何事もなく歩けた通学路が、
今では誰かしらに声を掛けられる。
関と2人で歩いてようが1人で歩いてようがだ。
今までみたいに関とゆっくり話せなくなった。
教室でも興味津々なみんなが次々話し掛けてきて。
景色は全く変わってないのに・・・。
まるで別世界にいるみたいだよ。。。
アタシも関も違和感炸裂。
お陰で最近屋上にいるコトが多くなってきた気がする。
『学祭の時を思い出すね』
あの時みたいに仰向けになって、空を見上げながら。
無言の関。
真っ青な空の下、穏やかな空気が流れる。
「オマエさぁ、真壁静哉と何かあった?ホントにただロビーで話したダケか?」
突然口を開いたかと思ったら関はとんでもないコトを言い出した。
驚きの余り咳き込むアタシ。
またしても沈黙が流れる。
アタシが何も答えられないまま始業前の音楽が流れた。
お互い無言のまま教室に戻る。
アタシはずっと関のコトバに動揺しまくっていた。
そりゃ予感はしてたよ?関は気づいてるかも知れないって。
そんな気はしてたけど。
今までアタシが勇気を絞り出して言おうとしてたのを遮ってたのはアンタでしょうが!!
アタシの本音。
声を大にして言いたいけど・・・、
言わない。
帰りに話そう。
もう限界だ。
アタマの中ぐちゃぐちゃで何が何だか解んなくなってるから。
『あのさぁ』
心臓爆発寸前。
迂闊に歩きながら言えないから超小声。
しかもうつ向いてるから関には聞こえてないっぽい。
関の手を引っ張って呼び止める。
俯いたまま。
「ぁん?」
いつも通りの、かったるそうな関の返事。
いつもならイラッとするのに今だけなぜだか癒される。
関の顔を見れないまま黙ってスマホを渡した。
受信メールの画面にして。
画面に表示されてる名前は見ても見てもほとんどが“真壁サン”。
上目で関を見る。
何も言わないままスマホを見続けてる。
沈黙が続く。
信号待ちで立ち止まった。
無言でこっちを見ずにスマホを返してきた。
その後、アタシと関の間に会話は無かった。