幸せを、聞かなくても
「守りたいものはありますか」で始まり、「私も同じ気持ちだった」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば10ツイート(1400字)以内でお願いします。というお題で書きました!
守りたいものはありますか?
あれば、今手放してしまったほうがいい。
王と王妃になる約束を交わした日に、揺らがない厳しい目で、あなたは言った。王族として生きるのは過酷な道。守りたいものは狙われて、壊される。だから全てを諦めて嫁いできなさいと。
それは予言だったかのように、祖母の形見のジュエリーも、幼い頃から見守ってくれた乳母も、お気に入りのペンも、あらゆるものを失った。新しいものはすぐに得ることができたけれど、それはただの代用品。大切なものは二度と返らない。
それでも、泣いてしまうわたしを叱るでもなく、気休めに慰めることもなく、わたしの見えないところでわたしより辛そうに俯くあなただったから。
王と王妃として懸命に国のために働いて。ふたり働いて。
——はたしてお互いに、人としての幸せなど、あっただろうか。
朦朧とするあなたの痩せた手を握ってそう問いかけたのは、答えを聞こうと思ったわけではなかったけれど。
……眩しかった白銀の花嫁のベール、共に眺めた緑なす国土を覆う朝霧にさした朝日、貴女のうなじの甘い香り、初めて抱いた我が子の指を握る力、暖炉の光を浴びてただ隣り合う温もり、私の名を呼ぶ声の響き。全ての一瞬が、宝だった、と。
あなたは、私には守りたいものを手放せと、みだりに傷つくことがないようにと、いつも言っていたのに。
守りたいものは形のない日々だったと、微笑んでそういうのだ。
あなた、幸せだったかなんて聞かなくてもよかったのね。
私も同じ気持ちでした。




