08(完)
刺繍展はなんの問題もなく続けられていた。多少、掲載内容に変更はあったけれど、五条俊子の件はニュースになることなくひっそりと闇に葬られた。と言っても事件が表沙汰にならなかっただけで、五条俊子になんの罰も与えられなかったわけではもちろんない。もう二度と外に出ることも、能力を使うこともできない。それどころか刺繍や絵を描くことも許されない永遠の幽閉生活となる。そんな生活は物作り系の能力を得た人にとってはきっと死よりも辛いことだろうが、自業自得だし同情する気も起きない。
五条俊子の刺繍展は『作者の都合』により展示内容を『能力者展』に変更となった。借金があったせいで維持できなかったとの噂が有力だが、真実を知るものは少ない。
絵や置物を中心に様々な作品が展示されている能力者展の最終日、美桜は一人で展示を見にきていた。そして声をかけられて奥の関係者部屋に通され、そこで遊んでいる子どもの姿に目を瞬いた。
「……」
それは被害者の中で唯一の子供、あの日記に出てきた女の子だった。写真に写っていた虚な目の女の子が満面の笑みで遊んでいる。
絵本を見てニコニコと笑っている。その絵本は、美桜が話を書いて由衣夏が絵を描いた世界に一つだけの絵本。刺繍に取り込まれた人はそれぞれ行方不明になった時と変わらない姿で救出されたと聞いた。その中の唯一の子供、新海亜美はネグレクトしていた親から引き離して養護施設に引き取られたとも聞いている。そんな亜美の慰めになればいい、と由衣夏と共に共同作成したのだ。それを嬉しそうに見ている亜美の姿は純粋に嬉しかった。
「おねーちゃんが、描いたの?」
ニコニコ笑顔の亜美のにこりと笑みを浮かべた。
「そう、お友達と二人で作ったの」
「これ、すっごく好き!! ありがとう!」
ああ、こういう笑顔が見たかったのだ。あの時、欲望に負けないで本当に良かった、と切実に思った。




