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超能力者たちの事件簿  作者: 白雪
鹿と少女の戯れ
5/8

05

時は少しだけ遡る。

美桜たちが談笑? をしていた頃、ミステリーサークルの部室はまるでお葬式のような空気が漂っていた。

 一台のパソコンの前に、ミステリーサークルの残りのメンバーの紫苑、美沙希、大希、忙しい中無理を言ってきてもらった元部長の凛、最後に研究所に所属している能力者であり現役の警察官でもある水神雪斗(みずかみゆきと)が集まっている。

 その中心にいる凛が、深いため息をついた。

「……最悪」

 それは、ここに集まる全員、同じ心情だった。

 電脳空間の能力を持つ凛はほんの少しでもネットワークとの繋がりがあればどんな情報にもアクセスできる。もちろん、下手にハッカーのようなことをすれば他の人がかされるよりも重い罰が科されることのなる。そのため、能力をそういう情報収集系統で使用するときには国が認めた見張りが必要だし、後日レポートの提出が必須だった。

 見張り役は国が認めた能力者であり、互いに見張り合うシステムになっている。今は子どもであるが故に免除されているミステリーサークルのメンバーもいずれはその役割が課されることとなる。榊原もそうだし、今ここにいる水神もそうだ。榊原がいないため代わりに水神がきてくれたのだ。それが警察官の水神だったのは偶然だが、この結果を見るとそれで良かった気がする。

「私が聞いた声って……」

 美沙希がその場に倒れ込みそうになったのを水神が慌てて支えて椅子に座らせる。

 凛が見つけたのは、五条俊子が書いた『写真付きの能力研究日記(裏)』だった。

 初めのうちは、なぜ生き物が動かないのか、どうすれば彼らにも命を吹き込めるのか……そんな願望だった。でも、ある日偶然猫の刺繍を見ているときに目の前を猫が通った。その猫が刺繍に魂を吹き込んでくれたらいいのに、と願った俊子。パッと刺繍が光り、気がついたら目の前の猫が消えていた。そして……猫の刺繍が生き生きと動き回るようになった。その動きは、今までの自然風景の刺繍の動きとは違う、命を感じるものだった。それがきっかけで、色々と試した。初めは動物だけで。でも、次第に人を取り込んでみたくなって、でも、流石にまずいと思っていた。だから、家族がいない、孤独な人間を選んだ。行方不明になってもさほど問題にならなさそうな大人。人を取り込んだのは片手で数えるほど。その最後の一人が、半年前、ネグレクトされていたであろう幼子。賭けだったらしいが、それは正しかった。幼い子供がいなくなったのに、ニュースにすらならなかった。それにはホッとしたが、その刺繍は失敗だったと書いてあった。他の刺繍に比べて動きが少ない。やはり元気な子がいいが、そういう子は親に愛されているからきっと騒ぎになる。

 狂気に満ちた、その日記に凛は吐き気を感じた。ガリガリで、虚な目をしていた、五歳くらいの女の子の写真が頭から離れない。


「残念だが、こういう人間は多い」

 冷え冷えとした水神の声に反応することができない。わかっている。こういう人だから能力に目覚めてしまったのだろう。それでも、受け止めるにはあまり重い内容だった。

「……半年前、それにこの写真……」

 厳しい口調で水神がタブレットをいじって何かを見ていたが、すぐに再び深いため息をついた。

「水神さん?」

「……この子、新海亜美(しんかいあみ)ちゃんか……」

 水神に見せられた写真。数人の子供達。笑顔で楽しそうな、それでいた健康的な子供たちの中で、ガリガリに痩せたその女の子はひどく異質だった。笑顔も少ない。でも、少なくとも日記に添付されていた写真ような虚な目はしていない。

「この子は?」

「半年前にニュースになった、ネグレクトされて、行方不明になった子供だ……目撃証言から激流の川に流されたと思われて、母親が逮捕されている」

「え!? でも……大きなニュースにも騒ぎにもならなかったって……」

「親は騒がなかった。調査依頼も学校や友人の親からだ。それに調査の結果、激流に流されたと判断されて親は逮捕されたが、子供の写真は出なかった。五条俊子は写真は持っていても名前は知らなかったのだろう」

「……虫唾が走る」

「ああ……調査の時に過去視の能力者もいたし、川に落ちるのを視ているんだが……からくりがあるか。まあ能力は登録、試験が義務付けられているが、全てを告げることを完全に管理はできないからな。それにこのことは誰も知らなかった。……ろくでもない」

 立ち上がった水神に全員従った。何かあった時、水神の指示に従うこと。それを守れば、彼に同行することを許可されているのだ。

 この時はまさかあんな一瞬で捕物劇が終わるとは思っていなかったが。


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