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超能力者たちの事件簿  作者: 白雪
第3章 絵本の中の家と家族の思い出 ~見鍋景都の場合~

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04

「松嶺さん」


 ふわり、と目の前に見覚えのある少女が現れた。その突然の登場に彼女を呼んだ張本人である加寿子でさえポカン、と目を見張ってその場に静止した。


「は……え……な……木更津、さん?」


「えっと……呼ばれてきた、はずなんですけど……」


 間違いだっただろうか、と目を見張っている木更津に慌てて首を振る。


「ち、違うの。あまりに早かったから、びっくりして……」


 東京の超能力研究所に突撃しようとした加寿子を止めたのは騒ぎを聞きつけて出てきた母だった。加寿子の思いつき、あの時の少女、伊織を呼ぶことに反対はされなかったが、往復四時間かけるつもりか、と呆れられ、母が研究所に連絡してくれたのだ。そして、事件性がない上に成人女性が数日家に帰らないだけで公的組織は動かせないが、能力の練習を兼ねて伊織を派遣してくれることになった。


 その交渉から三十分も立たずに目の前に現れたのでびっくりしたのだ。


「テレポートの能力を持った先生が送ってくれたんです。……あの、幼馴染の方が行方不明、と聞いたのですが……」


「え、ええ……。数日帰らないことが全くないわけじゃないの。夢中になって探索してついうっかりとかあるから。でも、ここまで連絡がつかないのは初めてで……うっかりしててもどこかで気づいて電話くれるし……家に帰らなくても仕事には行くので」


 話してると本当に仕事人間みたいだが、仕事人間ではなく趣味=仕事という幸福な人間というだけなのだが。


 加寿子はLINEで送られてきた写真の場所へ移動しながらざっと最近の出来事と、今朝の話、そしてあの写真を見せた。


「ここ、ですか?」


 伊織が小さな手鏡に道や周辺を映した。その鏡に映っている光景は見慣れた景色で、加寿子の目には変なものは見えない。だが、伊織はこういう鏡面に映ったものを鑑定できる、と聞いている。


 しばらく鏡を見つめていた伊織は困った表情を浮かべている。


「ここには別に何もないけど……あと……見鍋景都さん、だっけ……」


 伊織がキュッと手鏡を握る。伊織は見知っているものの様子を鏡に映せる、とも聞いたことがある。彼女は一度だけ景都と会っているし、記憶が曖昧でもさっき見せた写真があれば見れるかも、との話だった。その伊織の表情が曇る。


「なに……これ……?」


 加寿子の目には伊織の顔が映っているようにしか見えない鏡。でも、伊織は真剣な表情、なんなら眉間に皺を寄せたどこか厳しい表情を浮かべている。


「なに……!?」


 不意に視線を感じて振り向いた加寿子は目の前の光景にギョッと目を見開いた。


 見晴らしがよく、何もない草原が広がっていたはずの場所に小さな森が見えた。その森の中を歩いたら気持ちよさそうな小道……そしてそこに立って木々を見上げている見覚えのある人影。


「景都……」


 呆然と呟いた瞬間その光景は消えた。ほんの一瞬だけ見えた幻。でも、なぜかそれがただの幻ではないような気がした。


「松嶺さん? 何かありました?」


「今、一瞬だけ森が見えて……そこに景都も……幻?」


 その言葉の再び伊織が眉間に皺を寄せた。


「……分かりません。少し調べてみます。少しだけ、時間をください」


 すぐに眉間の皺を消した伊織。詳細は教えてくれなかったが、ものすごく嫌な予感がする。でも、加寿子にできることはもうない。能力者が調べると言ってくれるならそこに頼るべきだ。


「よろしく、お願いします」


 できることはなくともこの場所がなんらかの鍵であることは確かで、その日から加寿子の日課にこの場所への散歩が加わった。


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