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都市伝説な日々  作者: K
2/2

フッシーを探せ


 月ヶ瀬迷衣とふぁん太がルフの家を訪れたのはとある冬の休日だった。

 

「フッシーを探しに行こうぜ!」


「その通り、見に行くなら今がチャンスだよ!」


 2人の様子にやはり来たかとルフは思った。

 最近S市にある布施川湖で謎の水生未確認生物がいると言う噂が立っているのをルフは知っていた。オカルト好きの2人なら食いつかないはずがない。


 ルフも多少興味はあった。

 そこで3人は布施川湖に車で向かうことにした。



「でも不思議だよね」


 月ヶ瀬が後部座席から呟く。


「確か布施川湖ってダム湖らしいじゃん。なんで人工湖にネッシーなんて現れるんだろう?」


「それは俺も不思議に思った」と、ふぁん太。


「作られたのはいつぐらいだっけ?」と、ルフ。


「調べたところによると、昭和42年に作られたらしいぞ」


「戦後じゃん。かなり新しいね」


「どっかの誰かがネッシー みたいな生き物を放したんじゃねえの? 例えばオオウナギとかさ」


「あの動画見ただろ? あれのどこがウナギだよ」


「カワウソが逆立ちしてたのかも」


 月ヶ瀬がニヤニヤと自論を展開する。

 

「あ、このイオンモールの交差点を北に向かってくれ」


 とりあえず布施川湖にかかるアーチ橋を目指した。

 そこが一番水面を見渡せる場所だからだ。


 車は南北に長い布施川湖のちょうど右側に伸びる道を北上している。

 あいにく、すぐ左の視界が木々に遮られてよく見えない。


 しばらく走らせる。

そして、一気に視界が開けてアーチ橋が現れた。布施川大橋である。



 到着。

 布施川大橋の両側には車がたくさん路駐していて、車を止めるのに難儀する。


「やっと空いてるところが見つかった」


 ルフは他の人に停められる前に急いで車を停めた。


「それにしても人が多いな」


「あれだけテレビで紹介されていたからねえ」


 布施川大橋からの眺めは荒涼とした湖という感じだった。

 空も鉛色、湖も鉛色。冬の冷たい風が吹き渡る。いかにも怪獣が出てきそうだ。


「一応来てみたけどこれからどうするんだ?」


「ここがフッシーの故郷! 雰囲気もバッチリ!」


 月ヶ瀬が猛然とスマホで写真を撮り出した。とても興奮している。


「なあ月ヶ瀬」


 ルフが話しかけるも月ヶ瀬は反対側の欄干に移動してさらに写真を撮っている。

 

「あの分じゃあしばらくは彼女に話しかけても無駄だろうよ」と、ふぁん太。


「これからどうすんの?」


「実はいいものを持ってきてるんだよな。でも、まずはフッシーの目撃された場所を見て回ろうぜ。これまでの目撃事例を検証したいからな」


 それから30分。やっと月ヶ瀬の興奮も治まったところで3人はこれまでの目撃地点を徒歩で移動することにした。


 まず、第一の目撃地点。

 湖は南北に細長く、南の方では二股に分かれていた。そのちょうど起点の部分には遊歩道がある。布施川大橋からは徒歩で20分と言ったところだ。


「ここでは早朝、散歩をしていた3人がフッシーを目撃している。そのうちの一人が写真を残した。よし、ここだ」


 ふぁん太が手で枠を作りながら撮影地点を特定した。

 スマホで目撃写真と比べてみる。目撃写真には湖の中程に首をもたげた小さな何かが映り込んでいた。


「ネス湖のネッシーの写真に似たのがなかったか?」と、ルフ。


「確かあれはカワウソの尻尾だって考察されてたね」と、月ヶ瀬。


「あれは捏造だ。撮った本人が自白している」


 ふぁん太は写真と景色を見比べながら、


「どうもこの写真は作り物というわけではなさそうだ。水面のさざなみ と比較しても体長は2mはありそうだぞ」



 次に向かったのは釣り人がフッシーを目撃した場所だ。

 布施川湖の東側には小さな山があり、林が湖に突き出している。ちょっと灌木の間を抜けるとおそらくフッシーが目撃された場所に出た。


「誰かいるよ」


 月ヶ瀬が指差すところには3人の人物がいた。

 1人は湖に背を向け、タバコを吸っている。もう2人は座り込んで何やらパソコンのようなものを覗き込んでいる。


「やあ君たちもフッシーを探しにきたの?」


 タバコを吸っている男が3人を見つけ気さくに声をかけてきた。


「はい、そうです。ここでフッシーが目撃された場所らしいので見ておこうかなって」


 月ヶ瀬が礼儀正しく答えた。


「釣りをしていた人が目撃したって聞いて」


「え? ここが?」


 モニターを見ていたメガネの男が振り返って、


「いや違うよ。それは多分ここじゃない別の場所だよ」


「そうなんですか?」


「まああっちはテレビ局の人たちが陣取ってるから今から見にいってもダメだろうけどね」


 ふぁん太はこの3人の男たちの様子を見て尋ねた。


「皆さんは何をされてるんですか?」


 モニターを見ていた男のうちのもう1人が答える。


「水中ドローンを使ってフッシーを探しているんだよ」


 その手にはコントローラーのようなものが握られていた。


「なるほど」月ヶ瀬は興味深げにモニターを覗き込んだ。ルフとふぁん太も揃って覗き込む。昼ではあるが水中の様子は薄暗く、濁っていてよく見えない。


 ふぁん太はおもむろに持っていたバッグを置き、中からあるものを取り出した。それは、下にカメラが取り付けられたモーターボートのラジコンだった。


「実は自分も同じようなもの持ってきてるんですよね。一通り布施川湖を見終えたらあなた方みたいに水中からフッシーを探そうと思って」


 3人の男は互いに顔を見合わし、愉快そうに笑みを浮かべた。


「残念だけど、僕たちは自治体の許可をもらって探索をしているんだ。だから、君たちは許可もらってないならやめといたほうがいいよ」



 3人は布施川大橋に停めた車に戻ってきた。

 夕方になり、さらに人の数は多くなっているように思えた。


「ちぇっ。せっかく魔改造したのに使えないなんて悲しいなあ」


 ふぁん太はさも面白くなさげに仏頂面をしている。

 一方の月ヶ瀬は何か考え込んでいる様子だ。そういえばさっきの3人組と会ってからちょっと様子が変だ。


 ルフは尋ねた。


「月ヶ瀬さ、来た時の元気はどこいったんだ? 静かになっちゃってさ」


「ちょっとね」


「よし、ルフ。俺は他の人たちと同じように橋の上からフッシーを探すぜ! とりあえず7時までは粘るからな。ルフは車の中で待っててくれていいぜ」


 そう言ってふぁん太は飛び出して行った。



 もう冬だから5時にもなればすでに辺りは闇に包まれる。

 橋の上の街灯が灯り始めて、もうすぐ2時間だ。月ヶ瀬も外にフッシーを見にいき、橋の上にはいまだに多くの人がいた。それぞれの懐中電灯やライトが湖を照らし、湖の水面は深淵のように暗く淀んでいた。


 ルフはもう帰ろうと2人を呼びに暖かい車の中から出てきた。

 2人の姿は車のすぐ横にあった。


「もう帰ろうぜ。7時だ」


 声をかけたその時、橋の向こうのほうから、


「フッシーだ!」


 と、誰ともなしに声がした。

 

「おうルフ。俺たちも行ってみようぜ!」


「ああ」


 3人は急いで声のした場所に駆けつけた。他の人たちも欄干に押し合いへし合い、無数の光が水面に投げかけられている。月ヶ瀬とルフも欄干にたどり着くことができ、湖を覗き込むことができた。


「おお!」


 そこには光に照らされた水面に3mほどの黒い影が滑るように泳いでいる姿があった。


「フッシーだ!」


「写真を撮れ!」


「おい、押すなよ!」


 橋の上は大騒ぎだ。

 その時、ルフは信じられないものを目撃した。無言のままの月ヶ瀬が欄干にスマホを置くと、素早く欄干を乗り越え・・湖にダイブした!


「誰か落ちたぞ!」


「月ヶ瀬! 大丈夫か!?」


 ふぁん太が後ろから人垣をかき分けルフの隣に現れた。


「落ちたのか? 月ヶ瀬が・・?」


「落ちたというより飛び降りたほうが近いが・・、一体あのやろう何を考えてやがる」


 ルフは急いで消防に電話しようとしたが、水面を見て月ヶ瀬が黒い影に掴まりこちらに手を振っているのが見えて、どうも様子がおかしいことに気づいた。


 黒い影はゆっくりと月ヶ瀬を乗せて、橋の横にあるカヌーができる施設まで泳いでいくように思えた。


 ルフとふぁん太はそれを追って、カヌーの施設の船着場に来た。他の人たちもぞろぞろと後をついてきて、カヌー乗り場はすずなりの人だかりとなった。


 月ヶ瀬はびしょ濡れの姿で湖のほとりに立っていた。

 そして、その横には小さな頭に長い首を持ったフッシーの姿があった。


「月ヶ瀬大丈夫か?」


「これは一体・・?」


 月ヶ瀬はフッシーを見て言った。


「多分これロボットだよ」


「ロボット!?」


 と、後ろから人垣をかき分け、1人の人物が現れた。その人物には見覚えがあった。水中ドローンを操作していた3人のうちのタバコを吸っていた人だ。


「そうだ。これは我が社が開発した首長竜型のロボットだよ」


 その人の話は驚くべきものだった。


「私のいる会社では業績が低迷していてね。何か売り上げを伸ばすうまい方法はないのかと社内で話し合った結果、この布施川湖で開発した首長竜ロボットを目撃させてあわよくばネス湖のネッシーのように評判にならないかと思ったんだ。そうすれば我が社のいい宣伝になると思ったのさ」


 

 3人は布施川大橋の上に停めてある車まで戻ってきた。


「まさかロボットだったなんて」


 ふぁん太は意気消沈といった面持ちで呟く。


「まんまと踊らされちまったよ」


「月ヶ瀬はいつこの騒ぎの正体がロボットだって気づいたんだ?」


 ルフは尋ねた。


「あの人たちのモニターを覗いた時に見えたんだよね。メモ帳。多分取り扱いのためのものだったんだろうけど、そこにロボットの操縦方法が書かれてあったんだ」


「なんだ、そう言うことか」


「で、もし飛び降りたりしたらどこかで見ている3人のうちの誰かが私のことを助けるためにフッシーを操作して岸まで運んでくるじゃないかって思ったわけ」


 実に得意げに語る月ヶ瀬。


「無茶をしやがる」と、ふぁん太。


「フッシーの正体が分かってがっかりしただろ? 所詮未確認生物なんてそう言うものだよな、うんうん」


「分からないよ。今回はロボットだったけど、もしかしたらそのうち本物が出てくるかもしれないからね!」


 ルフは車に乗り込もうとした。そこであることに気づく。同じように車に乗り込もうとした月ヶ瀬に言った。


「今、服びしょ濡れだよな」


「うんそうだね。スマホは置いたから水没はしてないけど」


「悪いけど服が乾いてから乗ってくれないか? 座席が濡れるから」


「ちょっ! こんな寒いところで乾くまで待てなんて凍えちゃうよ!」


 そんな様子を見て助手席にいち早く乗り込んだふぁん太は苦笑いをした。


「やれやれ」



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