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異世界転生  作者: 赤井天狐
序章

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第六話【迷惑をかけるやつ】


 フィリアは王様で、王様は忙しい。その忙しいフィリアに連れて行って貰わないと、俺は魔獣と戦えない。

 魔獣を倒すために、国を守るために呼ばれたのに、戦いにやたら多くの制約がかかってる気がする。


 それでも、必要だから呼ばれたんだ。だから、時間がかかっても、暇が続いても、魔獣退治は絶対にやらなくちゃいけない。

 何日か置きに王宮から外に出て、馬車に乗って離れた街へ行く。そして、その周りの魔獣を倒す。そんな生活にもすっかり慣れた。暇はつらいけど。


 そしてある日。フィリアが外に出るって呼びに来て、ようやく戦えるってうきうきして。

 でも……どうせ今回も、さっさと片付いて、すぐにまた部屋に戻るんだろうな……って、そう思って……


「……おい、フィリア。今日はどこ行くんだ。ちゃんと強い敵が出てくるんだろうな」


「はい。きっと強敵が出てきます。これまでにないほどの強敵が」


 期待せずにフィリアに聞いたら、思ってなかった返事がすぐに返ってきた。

 強敵……もっと強い魔獣がいる場所に行くのか。それも、即答するくらいだからもう被害は出てるんだろう。


 よし。と、いつもより気合が入ったのが自分でもわかって、その理由が、面白そうだから……じゃないのに気づいたら、なんか……ちょっとムカついた。

 もう暴れてる強い魔獣を倒せば、大勢を助けられる……って思ったのと、それがわかってたならもっと早くに連れて行けって思ったのとで。


 でも、フィリアだってすぐに行きたかったんだろう。それでも行けない理由があった……ほかに優先しなくちゃならないことがあったんだ。

 じゃあ、それをフィリアに言っても困らせるだけだ。なら、言わない。言わないけど……ムカつくのはどうしようもない。


 どうしようもないから、魔獣に全部ぶつけてやろう。憂さ晴らしもかねて、さっさと敵を倒すんだ。


「ユーゴ。これからは、戦う以外の時間も増えてしまうかもしれません。どうか、ご容赦ください」


 荷物を確認して馬車に乗り込んですぐ、フィリアは頭を下げてそんなことを言った。

 周りの大人がぎょっとするから、外であんまりやらないで欲しい……


「貴方をより強いものと戦わせるには、順序立ててものごとを解決していかなければならないのです」


 それで……ゆっくり顔を上げると、どうかお願いします……みたいな表情でそんな言葉を続けた。

 別に……部屋から出られて、暇じゃなくなるなら、俺はなんでもいいんだけどな。もしかして……どうしても魔獣と戦いたいと思われてるのか……?


 でも、それが誤解とも言いにくいから、俺は何も言わずに、わかったって頷いた。


「……ありがとうございます。やはり、貴方は優しいですね」


「別に。そうしないと強いやつと戦えないんだろ。じゃあ、ちょっとくらいはいいよ」


 優しい……って言葉は、ちょっとおかしいと思う。だって、俺は戦うために呼ばれてるし、それが嫌なわけでもないから。

 でも、そういうのを面と向かって言われると……なんかムカつくから、フィリアから顔を背けて、窓の外に目を向ける。

 ガラス窓なんてない、ただ四角く切り取られてるだけの窓の外は、自分で走ってるときよりもずっとゆっくり景色が流れてた。



 そうしてゆっくり進んだ馬車は、身体が痛くなったころに目的地に到着した。

 ここはバリスって名前の街らしい。まあ、聞いてもどこかなんてわからないけど。


 そして、馬車から降りるとすぐに大人がやって来て、フィリアを出迎えて、現状を報告し始めた。

 砦は機能してなくて、街の中にまで魔獣が入って来ちゃってて。畑も荒らされて、食べるものにも困ってる。

 それに、街の外……森や山にも魔獣の巣があって、もうどうしようもない状況だ、って。


 勝手に聞いていいかはわからなかったけど、戦うのは俺なんだから、ちゃんと知ってないといけないよな。


「……申し訳ありません。私に力があれば、もっと早くこの国の軍事を立て直せたのに。私の至らなさが、この街を長く苦しめてしまいました」


 そんな話を聞けば、フィリアは苦々しい顔になって、その大人に頭を下げて謝った。

 そういうことを王様がすると、向こうが困っちゃう……って、フィリアはそろそろ自覚したほうがいい。

 その大人は大慌てでもっと低くまで頭を下げて、謝らないでくれって顔をしてた。


「近辺に棲まう魔獣について、何か情報はありますか? 特徴……外見でも、食性でも、棲息域でもなんでも構いません。分かっていることがあれば、なんでも教えてください」


「はっ。まず、街の南東————」


 でも、フィリアはそんなことお構いなしで、まじめな顔で話を続ける。


 なんて言うか……いきなり王様になったって聞いてるけど、だからなのか、フィリアは王様らしい振る舞いを全然しない……出来ないよな。

 こうやって大人と話してるのを見てると、俺に対してだけそうなわけじゃないのがわかる。


 大変だよな。きっと、得意じゃないことを得意じゃないままずっとやらされてるんだ。

 ほかに王様になれる人がいなかったから、苦手でもやるしかなかったんだな。


 じゃあ……もっと苦手な魔獣退治くらいは俺がちゃんと受け持ってやるか。

 そのためにわざわざ別の世界から呼ぶほどだし、俺がやってやらないと、きっとほかの誰も出来ないんだろう。


「――ユーゴ、このまま街の外へ出ます。小さな相手ですが、油断はしないように。囲まれてしまえば、貴方と言えども身体をかじられてしまう恐れがあります」


 っと、話は終わったらしい。

 聞いてた感じ、この街を襲ってる魔獣は三種類。飛ぶやつと、森の奥にいるやつと、ネズミみたいなやつ。

 まずは一番近くにいるネズミ魔獣を倒す……って、そういう話でまとまったのかな、この感じだと。

 しかし……


「……そんなヘマするか。それより、森の奥にいるデカいのは倒さないのか? どうせならそいつと戦いたいんだけど」


 いまさら雑魚になんて苦戦しないって、わかってるハズなのに。見当違いな心配されるとちょっとムカつく。

 それに……せっかく来たなら、ちゃんと強いやつと戦いたい。森の奥のやつはそれなりに大きいらしいし、そっちを先に倒したいんだけど。


「三種の魔獣のそのどれもが、全く同じタイミングで動くとは思えません。であれば、倒しやすい相手から確実に仕留めて被害を減らすのが先決です」


 俺の質問に、フィリアはちゃんと答えてくれた。街の安全を優先して、飛ぶやつがいつ来てもいいように街の近くで戦うべきだって。

 こういうとき、案外しっかり納得させてくれるから……やっぱり王様なんだなって思う。

 でも、じゃあ普段はなんであんなにどんくさいんだとも思うから……ちょっとムカつく。


「では、すぐに準備して出発しましょう。ユーゴ、馬車から荷を降ろす手伝いをしてください」


 ムカつくけど、納得はしたから従う。まあ、変に逆らって、これじゃあ戦わせられない……なんて思われるほうがめんどくさいし。

 それに、戦わないとなったら俺を王宮に住ませる理由もなくなるから。さすがに放り出されるのは困る。お金も仕事もないんだから。


 そういうわけで、言われたとおりに荷物を運び出して、出発の準備を整える。

 でも……こういうとき、王様が率先して荷物運びをするのはやめたほうがいいと思う。みんなびっくりしてたから。


「それでは、行って参ります。皆、引き続き街の警護をお願いします」


 それで、荷物を持って街の外へ出ようとする……けど……


「お、お待ちください陛下! 陛下自ら赴かれるのですか⁉」


 そんなことすれば、それもやっぱり驚かれるし、そもそも止められるに決まってる。

 王宮から外に出るときにも、きっとこうやってみんなから止められてるんだろうな。俺には見えないところで。

 なんて言うか……フィリアって……


「……トラブルメーカーだよな……」


 本人は至ってまじめなんだろうけど……まじめだからこそ、周りを引っかき回してる感じがする。結局、周りの制止も聞かずに無理矢理出発したところまで含めて。

 なんか……めっちゃ迷惑なやつになってないか……?


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