表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生  作者: 赤井天狐
第一章【信じるものと裏切られたもの】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/101

第五十九話【想像外】


「――オラァ! くたばれ!」


「はぁあ――っ!」


 街の北側、魔獣が集まっていた場所。そこに到着した俺は、先に着いてたアイツと一緒に魔獣の群れを蹴散らした。

 蹴散らして……全部、倒した……んだと思って……


「ハ――ッ……ハッ……ァア……? どうなってやがる、コイツら……」


「ふー……ふっ……ふう……全部……倒した……これで全部……本当に……?」


 周りに動く魔獣がいなくなって、そこで……拍子抜け……ってよりも、不安に近い違和感を覚えた。それはたぶん、俺だけじゃないハズだ。


「街も人も無視して集まってた割には何もない……な。もしかして、間に合った……のか? 何かはあったけど、それがどうにかなる前に……」


「全部殺した……ってか。さて、どうだかな。ンな単純な話だとすれば、テメエも腹ン中に違和感は残らねえ筈だ」


 聞いたつもりじゃなかったけど、珍しくちゃんとした返事が返ってきた。やっぱり、アイツもかなり気持ち悪いって感じてるんだろう。

 ここには何かがあった。けど、魔獣を全部倒したからか、単に時間まで耐えたからか、とにかく何ごとも起こらずに済んだ……とは、お互い考えてなさそうだ。


「……おい、お前。ここに何があったのか知らないのか? まさか、何も知らずに戦ってたのか?」


「ァア? そりゃテメエもそうだろうが。国軍のくせに、ンで何も知らねえんだよ」


 異変に気づいて戻ったばっかりなんだから、知ってるわけないだろ。むしろ、お前はなんか訳知り顔だっただろうが。

 最初に街で合流したとき、こんなとこで何やってんだって聞いてきたのはお前だろ。


 って……そうつっこみたかったけど、キレられて絡まれるとめんどくさいんだよな。ムカつく。

 お互い何もわかってないまま戦ってたってことがわかっただけでよしとするか。


「……終わったのか……? あの群れを、たったふたりで倒したって言うのか……っ!」


 じゃあ、ここに何があったのかを調べなくちゃ。早いとこ元凶を突き止めないと、街の外からどんどん魔獣がなだれ込んでくる。

 そう思って、魔獣の死骸を蹴り飛ばしながら地面を調べ始めて間もなく、誰かが変なこと言って盛り上がり始めた。

 見ればそこには、これまでに会ったのと同じように壁を作ってた兵士の一団が、俺とアイツを見ながら……喜んでる姿があった。


「チッ。何をはしゃいでやがる! まだ何も終わってねえぞ!」


「まだ魔獣が集まってた原因がわかってない。変なものがないか調べて欲しい」


 まあ、気持ちはわかるけど。さっきまで本当にどうしようもない数の魔獣が集まってたんだから、それが一掃されたらそりゃほっとするよな。

 でも、まだ何も解決してない。それをちゃんと伝えて、一緒に原因を調べて貰わないと。


 みんな疲れ果てた顔をしてたけど、まだ終わってないと知らされれば嫌でも手を動かさざるを得ない。

 俺のことはもちろん、アイツのことなんて何も知らないだろうに。それでも、指示には従ってくれたし、聞けばいろいろと話してくれた。


 この場所には魔獣が集まるようなものは何もなかった。餌になるような家畜や農作物、それらを保存する場所も、何も。

 それでもここに兵士が集まっていたのは、最初からここにいたから……駐屯所があって、混乱の中で動けずに待機していた兵士が多かったから……らしい。


「……まさか、軍事施設を狙って攻撃してきた……? いや、でも……」


「ンなわけねえ……と、普通なら言いてえとこだがな。ほかに何もねえんじゃ、それを疑うしかねえか」


 としたら……この魔獣は、やっぱりランデルを襲ったのと同じ、意図して差し向けられたもの……ってことか。

 だとしたら、この場所に何かがあったかどうかは関係なくて、狙った場所に魔獣を集められるってことにもなる。

 じゃあもう、何をしても後手で解決するばっかりで、根本的な対策にはならない……か。


「……もし、意図して攻撃してるんだとしたら……っ! やばい――」


 ランデルを攻撃したやつは、俺のことを知ってた。そして、俺がフィリアと一緒にいることも知ってた。

 それだけ情報が揃ってて、フィリアが王様だってことを知らないわけがない。だとしたら、フィリアが危ない。


 大急ぎで役場へ戻らなくちゃ。でも、それをアイツに悟られるわけにはいかない。

 アイツはまだフィリアが王様だってことは知らない……ハズ。出来ればそれは隠し通したい。


「……俺は一回みんなと合流してくる。報告とかしなくちゃいけないし。ここにまだ魔獣が集まるようならすぐ戻るから、そのあいだに調べておいて欲しい」


 ここは最悪アイツがいれば耐えられる。耐えられないくらい魔獣が出たら俺が感知出来るし、それがわかってからでも間に合わせられるハズ。

 そうと決まったら、兵士にだけちょっと説明して、急いでフィリアのところへ……


「……ん……? なんだ、あれ。まだ小さいのが残ってたのか」


「小さいの……? 魔獣は全部倒したぞ。気配もないし……」


 行かなくちゃ。って、走ろうとしたそのときに、兵士の誰かが何かを見つけたらしい。

 声を聞いてから急いで振り返って、魔獣の生き残りならさっさと倒すかアイツに任せて、俺はフィリアのところへ……って、思ったのに。


 嫌な予感が……嫌な経験がフラッシュバックした。それは、林よりデカい魔獣と戦ったとき……いや。あの魔獣を、見つけられなかったときのことだ。


「――まさか――」


 兵士が指差すほうには、たしかに動くものがあった。それは……小さい、タヌキかアライグマみたいな……魔獣だった。

 けど、魔獣の気配はなかった。さっきまであんなに強く感じてた嫌な感じは、そいつからも、どこからも、感じ取れなくて。

 それはつまり――俺はまだ、こいつがなんなのかを理解出来てない状態ってことで――


「――ッ! クソガキ――ッ!」


「――っ⁉ うわ――っ!」


 音がした。何かが破裂する音。かなり大きな、まるで爆発みたいな音。

 それの正体がなんなのかは、目で見るよりも、頭で考えるよりも、身体で感じた重さでいきなり理解させられる。


 現れたタヌキ魔獣は、身体を丸くして……あろうことか、まるで大砲で発射されたみたいに勢いよく飛んで来た。

 けど、肝心の大砲も、それに近い勢いで物を投げる何かも存在しない。そんなことが出来るほど脚力が強いとは思えない見た目で、こいつが自分で飛びかかってきたんだ。


「ぐぅ――くそ――っ!」


 ぎりぎり剣の鞘で受け止められたからよかったけど、直撃してたら……もしかすると、それでもう戦闘不能になってたかもしれない。

 防御に使った鞘が大きくへこんでて、剣が入ってないままならへし折られてたかもしれないと思ってしまうほどの威力だった。


 けど、受け止めた。受け止められた。防御が間に合った。なら、大丈夫だ。

 いきなり速く動いたからびっくりしたけど、所詮しょせんは小型の魔獣。さっさと倒して、早くフィリアのところへ……


「な――っ! ぐっ……みんな逃げろ!」


 たいしたことない小型の魔獣……のくせに。そいつは俺の足元からいきなり跳び上がって、そのまま無差別に突撃し始めた。

 ものにぶつかるまでまっすぐ飛んで、ぶつかったところであり得ない方向に跳ね返ってまた飛び続ける。

 こいつ、この速さで動きを制御してるのか……っ? ちゃんと足から着地して、狙った方向に蹴り出してるのかよ。


「っ! うぉおおっ! くらえぇ!」


 やばい。こいつ、こんな小さいくせに、さっきまでのどの魔獣よりも強い。

 アイツも無警戒だったわけじゃない。小さいからって油断したとしても、一回目の攻撃の時点でこの魔獣がヤバいことには気づいたハズ。

 気づいたら、さっさと対処しようとしたに決まってる。なのに、好き勝手に暴れさせてる。

 じゃあ、アイツもまだ追いつけてないんだ。理解も、目も、身体も。まだ、この小さい魔獣一頭を――


「――ッ⁉ 嘘……だろ……」


 いきなり魔獣のニオイが……気配が強くなった。それは、目の前のこいつを厄介な敵だとハッキリ認識出来たから……じゃなかった。

 南のほうだ。ここからずっと南……街の真ん中のあたり。重要な建物が……役場が、フィリアがいるあたりに、とんでもない魔獣の気配がいきなり現れたんだ。


 目の前には対処が間に合わないやっかいな魔獣がいる。なのに、フィリアのところにまた別の強い魔獣が現れた。

 どうする。どうすればいい。どうすれば――どんな強さを手に入れれば、この状況を――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ