表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生  作者: 赤井天狐
第一章【信じるものと裏切られたもの】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/105

第十七話【ちんぷんかんぷん】


「――よく来たであーる。フィリア嬢も、今日はちゃんと服を着ているのであーる」


「そ、そんな、人を露出狂のように言わないでください」


 フィリアの服が乾き次第、洞窟を奥へと進んで、前と同じ場所でカスタードに出迎えられた。

 フィリアはこの変なおっさんの言葉を否定したけど……正直、露出狂のほうがまだマシだと思う。

 そっちはただの変態だけど、前のフィリアは変態なうえに家までびしょびしょにしたからな。家じゃないけど、ここは。


「こほん。少しぶりです、バスカーク伯爵。盗賊団の調査、感謝します」


 でもまあ、今回は遊んでる時間もない……んだろう。たぶん。詳しいことはまだ何も聞かされてないけど。

 フィリアもそういうつもりだったから、まだどこか不服そうな顔をしたまま、カスタードに感謝を述べ、遠回しに急かしていた。


「さて、さっそく本題に入るであーる。我輩は仕事の出来る男なのであーる。結論から言うと、本拠地――首魁の潜む場所まではわからなかったのであーる」


 なんだよ、どこが仕事の出来る男なんだ。と、愚痴をこぼす暇もなく、カスタードはこっちを一瞥し、すぐに話を続けた。

 重要度の高そうな拠点がいくつも存在する、大きな組織だったんだ、と。


 その言葉の意味は俺でもすぐに理解出来たし、フィリアも苦い顔で納得した様子だ。

 それはつまり、本拠地の可能性があるような大きな拠点がいくつもいくつも見つかった……ってことだろう。


「フィリア嬢。そちはランデルの宮仕えだったのであるな。ならば、話は早いのであーる。調査したところ、どうやら国の防衛砦跡地を拠点として使っているらしいのであーる」


「いえ、宮仕えでは…………っ⁉ 伯爵、今なんとおっしゃいましたか……? 防衛砦跡地を……」


 そっくりそのまま、乗っ取られているのであーる。と、カスタードは珍しく険しい顔でそう言った。


 今度は……フィリアはそれを重大なこととして捉えてるっぽいけど、俺はちょっと理解出来なかった。


 国の防衛砦……を、乗っ取られたなら、それは問題だろ。だって、そこにいたハズの兵士もみんなやられたってことだろうし。

 でも、防衛砦……の、跡地を乗っ取られた……ってのは、どうなんだ? 跡地ってことは、もう何もないんだろ?


「……伯爵。その砦跡地というのは、ヨロク以北、あるいはカンビレッジ以東のことでしょうか。でしたら、ならず者のアジトになってもおかしくはありません」


 よろ……かん……な、なんだ? 全然聞いたことない言葉が……地名かな? が、いきなりいくつも出てきた。

 まあ、俺は街の外をほとんど知らないからさ。さっきカスタードが言ってたランデルがこの国の首都で、いつも暮らしてる街で……くらいしかわかってないけど。

 でも、フィリアの反応を見るに、結構重要な街……なのかな?


「フィリア嬢は勘が鋭いであーる。その通り、ヨロク以北、そしてカンビレッジ以東の両方で、砦の使用が見られたであーる」


 砦の……うん? 跡地って言ってなかったか? えっと……ああ、そうか。建物をわざわざ壊したりしないもんな。じゃあ、それを乗っ取られたのか。

 でも……あれ? 乗っ取られて困るものなら、やっぱり誰かが管理してたのか。それを使われてるのは……なるほど。やばいな、この国。


「事情はなんとなく察しているのであーる。フィリア嬢が宮の役人である以上、国政の一環で盗賊団の逮捕に乗り出したのであーる。ならば――」


 そのための策も伝授して欲しい筈であーるっ。と、カスタードがムカつく顔でそう言えば、フィリアは目をキラキラさせて頷いた。

 なんか……このおっさん、フィリアの反応が素直だから楽しんでないか? 子供相手にショーをするみたいな。


「簡単な話であーる。まず第一に……」


 で、そのショー紛いな作戦を説明してくれたんだけど……俺にはちょっとよくわかんなかった。

 まずは魔獣を倒し、街を活性化させ、盗賊をおびき寄せ、証拠を手に入れて……と……


「……証拠? おい、カスタード。そんなことしなくても、盗賊団そのものを捕まえればいいだろ」


 証拠を見つけたからそこが拠点だってわかったんじゃないのかよ。それをどうして、もう一回証拠集めなんてするんだ。

 そう思って突っかかったけど……カスタードは首を横に振って、フィリアまで苦い顔をしてる。なんか違うのか……?


「証拠もなしに逮捕すれば、当然反発が起きます。そのとき、こちらに正当性があると――いえ。不当な点がひとつもないのだと主張出来なければ、国民の不信を買いかねません」


 ん……? えっと……だから、証拠はカスタードが見つけてきた……から。いや、ええっと……


「そち、もう少し学ぶのであーる。ふたりがただの町娘と田舎小僧であったなら、力尽くでの排除で問題ないのであーる。しかし、フィリア嬢は宮に使えるもの」


 つまり、盗賊団の排除は王命なのであーる。王が理不尽に人を捕らえれば、当然民は怯えてしまうのであーる。と、そこまで言われて……ちょっとだけわかった。


 証拠ってのは、盗賊団である証拠……だけど、それを周りがわかるように証明するってことか。

 そもそも、盗賊団を見つけたのはコウモリ……なんて、そんなの誰も信じない。だから、それは証拠とは呼べない……と。


 なんか……なんか、ムカつくな。カスタードは変なおっさんだし、フィリアはアホでまぬけでどんくさくて……デブなのに。

 ふたりがしてる話は難しくて、俺は置いてけぼりで……なんか……ムカつく! 変なおっさんのくせに!


「こら、ユーゴ。駄目ですよ、そんな目を向けては。伯爵は私達のために調べてくださって、そして策まで練ってくださったのです。十分信頼出来るかたでしょう」


「……別に、そんなとこはどうでもいいんだけどさ……」


 どう見てもアホなふたりがちゃんと難しい話をしてて、俺がわかんないままなの、すごくムカつく。

 でも……一応は王様だし、おっさんも百年以上生きてるらしいから……それでもムカつく。全然大人っぽくないくせに。


「――まだ国力が十分でないなら……取り戻した砦を十全に機能させる余裕がないのなら、北はしばらく放置するべきかもしれないのであーる」


「……北を……ヨロクを放置すべき……ですか? それはどうして……」


 そのあとに続いたふたりの話も、前提がイマイチわかってないこともあって、俺は全然理解出来なかった。

 でも……説明が難しいのであーる。とかなんとか言ったカスタードが頭を抱えたから、それだけは……なんか、すっきりした。

 ほら、やっぱりただの変なおっさんだ。難しい話なんて出来っこない。って、そう思って……でも、結局また難しい話を再開したから……ムカつく。


「カンビレッジ以東の砦では、盗賊団と思しき連中も、魔獣との戦いを強いられていたのであーる。しかし、北の砦ではそれがあまり見られなかったであーる。しかし……しかししかしであーる」


 ムカつく。ムカつく。ムカついても話がわかんないのがもっとムカつく。

 でも……カスタードがわざとらしく強調したから、その部分だけはなんとなく……そうなんだなって、とりあえず理解出来た。


 魔獣と戦ってる南の砦よりも、北の砦のほうが大変そうなことになってた。って、たぶん、そういうことをカスタードは言った。

 それで……それを聞いたら、流石にフィリアも俺と同じ反応になった。魔獣と戦うよりも大変な問題ってなんだろう? って。


 でも、どうやらカスタードもそこまではわからなかったらしい。ただ、北の砦のほうが急がされてる様子だった……とだけ。

 なんだよ、役立たず……とは思えない。少なくとも、俺が理解出来た範囲だけでも、それだけの新しい情報が手に入ったんだから。ムカつく。


「なんにせよ、北の砦を取り戻すのは後回しにすべきであーる。砦よりも更に北に、もっと大きな問題が潜んでいると考えるべきであーる」


「北を先に解放すれば、盗賊団とその謎の問題とで板挟みになってしまう……というわけですね。なるほど、道理です」


 魔獣よりもっと大きな問題……か。それを聞いたら……ちょっとだけわくわくした。

 でも、わくわくしたことにムカついた。だって……その問題は、俺じゃ解決出来ないところで、大勢の人を苦しめてるんだから。

 フィリアがくれた力で戦うのは楽しい。でも、その裏で誰かがつらい思いをしてるなら……それは違う。


「ありがとうございます、伯爵。貴方のおかげで状況に希望が見えてきました。心よりお礼を」


「構わないのであーる。フィリア嬢の力になれたのであれば、我輩も本望であーる。それに、報酬の話はすでについているのであーる」


 何を倒すかはフィリアが決めることだ。でも、倒すべきものが誰かを傷つけてるなら、俺はそいつをさっさとぶっ飛ばす。

 そんな覚悟を決めて、ちょっとやる気を出してたんだけど……おっさん、対価のこと忘れてなかったのか。うざ……

 そもそも、洞窟の掃除って何だよ。ここ、外だぞ。何をどこへ掃き出すんだ。


「それでは、早速きびきび働くのであーる。フィリア嬢は玄関、そちは台所の掃除から始めるのであーる」


「はい、かしこまりました…………玄関、ですか。その……不躾なのですが……」


 玄関ってどこだよ。台所ってなんだよ。そんな疑問が俺にもフィリアにも当然のように浮かんでるから、ふたりで顔を見合わせてしまった。

 で、カスタードはそんな俺達を不思議そうに見てて……なんでお前がそんな反応するんだ。変なのはお前だぞ。


「玄関は玄関であーる。フィリア嬢も通ってきた筈であーる。おや……? そういえば、どうしてフィリア嬢はあんなにもずぶ濡れで現れたのであーる?」


「……? ええと……その、この洞窟の深部には、地底湖を渡らなければ辿り着けなかった筈ですが……」


 うん? あれ? おや? と、三人で揃って首をかしげて、どうにもこっちと向こうとで認識が食い違ってることだけはわかった。

 わかったけど……それってつまり、なんにもわかんないって意味でしかなくて……


「……フィリア嬢。もしや、そちらは裏庭から入って来ていたのであーる? それはまた……危ないことをするであーる。あまり褒められたやりかたではないのであーる」


 まるで盗人のようであーる。とまで言われたら、流石に一発殴りたくなった。でも、我慢した。子供じゃないからな。

 それで、またフィリアと顔を見合わせていると、ちゃんと玄関から入ってくるのであーる。と、カスタードは俺達を連れて洞窟を案内してくれた。

 来るときに使った水浸しの道じゃない、また別の通路を。


 案内されて辿り着いたのは、入ったのとはまた別の横穴だった。どうやらここは、縦穴で繋がったふたつの洞窟だったらしい。

 俺達はそのうちのはずれのほうを進んで、わざわざ狭い縦穴を使って当たりの洞窟に合流してたみたいだ。


 もっと早くに……って言うか、案内看板くらい出しとけ。そもそも、こんなとこに住むな。ムカつく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ