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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界の山の村の出来事

作者: まい

 地球ではない、どこかの世界。


 そこで起きた俗称、共倒れ戦争。


 その戦争が起きた原因ははっきりしておらず、いくつもの説がある。


 説の中でも、(とな)えるだけで学者から笑われるものを紹介しようと思う。

 国境を挟んで向かい合っていた2国。


 両国とも既に滅び、その国名はどんな意図か沢山の数が(のこ)されていて収集がつかず正確な名前が分からないので、ここでは便宜的にA国・B国としよう。


 この2国はどちらも存在していた大陸を統一し()る国力を持っていた。


 なのでお互いがお互いを警戒し合い、(にら)み合っていた。


 どちらかがもう片方を征服できれば大陸制覇できるので、どうやって相手を侵略するかと、常に小競合いをしていたのだ。


 その双方が滅びるに至った両国間で行われた8年戦争はこの大陸で有名だが、そのきっかけが何だったのかが130年()っても解明されていない。


 解明されていないのだが、偶然発見された当時資料の中に、あまりにもトンチキで奇想天外(きそうてんがい)荒唐無稽(こうとうむけい)奇説(きせつ)のメモが遺された手帳がある。


 その内容を意訳したものを、今回は話のネタとして記事にしようと思う。




〜〜〜〜〜〜




 強大な2国は、大きく長い川を国境としていた。


 その川は綺麗(きれい)で、お互いの国の動向を監視し合うようにお互いの国で造られた要塞を中心としたそれぞれの国境の街でも、その川から川魚を()っていた位らしい。



 が、ある日その川の水を生活用水にしていたスラムから、伝染病が突如(ひろ)がりはじめた。


 その川が原因らしい伝染病は双方の国境の街でほぼ同時期に確認された。


 その症状は食中毒をひどくしたようなもので、特に下痢と嘔吐(おうと)が激しいとメモにあった。


 この伝染病に対処してから、お互いを責めて攻める口実にしようと画策した両国。


 対処のために発生源を特定するべく調査を始めたのだが、その調査は難航したらしい。


 その川はいくつもの山から流れている、いくつもの細い川が集まったものである。


 調査隊がひとまず川を(さかのぼ)ってみると、川の水を飲み水とする動物達も街の民と同様の有り様(ありさま)で、鳥のフンによっても伝染病が拡散していたそうだ。


 国境の街以外にも川の恵みを利用して出来た町があり、そこの住人達も同様の被害を受けたと聞き出すが、やはり原因は分からなかった。


 その町では主に川周辺の森へ分け入る仕事をする者達が感染源となったらしいのは判明したが、分かったのはそれまでで、発生源そのものでは無いと判断。


 なので上流の細い川全ての動物を調査せねばならなくなり、それだけで長い時間が費やされるも、これと言った原因が特定できず。


 努力など関係なしに伝染病がおさまる気配なぞ見せぬまま、時が過ぎる。


 この頃には原因なぞ放っておかれ、両国間の会議の場でA国が悪い、いやB国がやったと水掛け論で責任を押し付け合う子供の喧嘩(けんか)状態が普通になっていた。


 しかも伝染病だけでなく、伝染病に見せかけた毒をまいた等という話まで持ち上がる始末。


 それでも調査隊達はめげずに調査を続けると、あるモノを発見した。


 その細い川の上流、山の川にほど近い所に村があったらしい。


 山の中に村が有るのは当たり前だが、調査隊はその村での以前の出来事として語られた事に驚いたのだ。



 山の村で村祭(むらまつり)が行なわれ、そこで振る舞われた食事で食中毒を起こしたのだと言う。


 恐らく村の一部食料の保存に失敗して腐らせたのに気付かなかったのだろう、とのこと。


 村人が例外無く食中毒にかかり、トイレなぞ使ったら大混雑で大混乱が簡単に予想され、さらにそのトイレに溜まった汚物を始末できる余裕のある村人も居ないと言うので、緊急措置として皆で川の()(そば)に簡易テントを張りそこで食中毒が治るまで生活していたそうだ。


 つまり川に汚物を垂れ流していたと。



 その証言に重きを置き、村人の食中毒が川へ流れ出し動物や人が感染し、食中毒が何かに変異しそのまま川で下り、国境の街まで届いてしまった。




〜〜〜〜〜〜




 それが原因だとする奇説だ。


 奇説ではあるのだが、両国が戦争を始める引き金になったのは間違いないらしい。


 なぜそう言えるのかと言うと、両国間での責任の押し付け合い(かいぎ)の記録に遺っているのだ。


 詳しくは書かないが、国境が曖昧(あいまい)な山の国境となる川の近くに住む村がどちらに所属しているのかで揉めたらしい。


 調査隊からこれ以上原因を遡れない(むね)の報告がされ、大騒動の原因かも知れないと言う事にされた村の責任。


 人が原因の災害とすることで、今までより重い責任を押し付けられる口実にされ、押し付けられたらたまらないとヒートアップして戦争に突入した。



 そんな経緯があるのだ。


 もちろん上流でそんな事が起きても川には浄化作用があり、この長く大きな川で下流へ行く頃にはキレイな水に戻っている事もあって、あり得ない説だとされている。


 それだけでなく、普通なら川の水は煮沸(しゃふつ)消毒して飲むのが普通であり、感染することなど滅多に無い。


 そこも、この山の食中毒村原因説が奇説だとされる理由である。


 だが、現実は小説より奇なり。


 実はこんな奇説こそが真実であったと、(のち)の世で判明する事も(まれ)にだが、起きる。


 それを考えると、この奇説も有り得ると言ってみるのも面白いかも知れない。

 この共倒れ戦争は両国のみで戦争を行い、国力を消耗(しょうもう)した所で同盟を組んだ近隣国から侵略を受け、同盟国へ対抗する為にプライドや遺恨からか協調できず、なすがままにされて大陸の歴史から消えた。


 そしてその時の同盟国による会議で、大陸の動向が決まるようになった。



 もしあの伝染病が起きなかったら、今も大陸の覇権を狙い両国が睨み合っていたか、どちらかが大陸制覇していたかも知れない。


 そう考えると、あの伝染病が大陸の歴史の【分水嶺(ぶんすいれい)】だったのかもしれない。




〜〜〜〜〜〜



 …………と言うフィクションなネタでした。

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