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追放から始まる逆転劇  作者: 匿名
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始動!ユリウスの計画

月光が「竜宮門」と書かれた看板を照らし出す。


皇帝の寝所を護衛する兵士の目をかいくぐり、こっそりと寝所の中へ入る黒い影があった。


その黒い影は寝所の中に入ると、真っすぐに皇帝の寝ている部屋を目指す。


「ユリウス、入るぞ」


ユリウスとは、皇帝の名前だ。


その名前を呼ぶなど、皇族しかできない。


その黒い影は、足音を立てないように静かに皇帝が寝ている部屋の障子に近づく。


「レオか…?」


部屋の中からはまだ眠そうなあくびまじりの声が返ってきた。


「あぁ、入るぞ」




ユリウスが椅子の上に座ると、俺も向かい側に腰を下ろす。


今はもう十一時を回っている。


まだ幼いユリウスは金細工の龍がつけられた豪奢な椅子の上で眠そうに目をこすった。


「ユリウス、急に呼び出して一体何事だ?」


「余を呼び捨てなど…」


「ユリウス、無理に威厳を保とうとしたなくても大丈夫だ」


「そうか。お前は、アルバドとは違うのだな」


アルバド、思い当たるのは、キッチリしている俺を呼び出した近衛騎士だ。


「それで、一体何事なんだ?」


「それがだな…」


皇帝が椅子から立ち上がり壁につけられた棚から一枚の古びた紙を取り出した。


その紙は十センチほどの正方形で、紫色の幾何学模様が描かれている。


「それは?」


「悪魔を召喚するための魔法陣だ。全部で二千枚はある」


「召喚するのか?」


ユリウスが椅子に座りなおすと、首を横に振る。


「余は聖なる魔法の使い手。このような類のものは扱うことが出来ぬ。そこで、魔物であるそなたに頼みたい」


魔物…。


「…知っていたのか?」


ユリウスがコクっと頷く。


「そなたは帝都の門をくぐるときに将軍と名乗ったそうだが、そのような将軍はいなかったので探ってみたのだ」


まだ年端もない子供だというのに油断ならない。


「そうか。だが、俺は魔物だぞ。それでも頼るのか?」


「一番大事なのは民の平穏が保たれること。余は、魔物であろうとも敵意を向けてこないのなら協力しても良いと思っておる」


ユリウスが童顔に真剣な表情を浮かべ見つめてくる。


「へぇ、面白いな」


それまで、人と魔は争っているのが当然だという常識を打ち破る新概念。


興味をそそられる。


おもしろい。


いや、すごくおもしろい。


俺は本来隠密で侵入しているのでばれないようにしなければいけないが、腹の底から湧き出てくる笑いをこらえきれずに、思わず爆笑してしまった。


ユリウスが真剣な表情から一転して、慌てて「外に聞こえる!」と注意したほどだ。


「いや、すまん。俺は魔物と人間は歪みあっているのが当然と思っていたが…。よし、それは乗った」




「だが、なんで悪魔の軍団なんか作るんだ?」


「そのことか。実は、恥ずかしながら余には信頼して動かせる兵が千人弱の近衛騎士しかおらぬ。今度、戦争が始まるのは知っておるだろう?」


外では、かなりの規模で軍事演習をしていたが、やはり戦争が起こるようだ。


「あぁ、それで?」


「うむ、そこで余はとある帝国の逸話を思い出してな」


「逸話?内容を聞いてもいいか?」


ユリウスがコクっと頷く。


「それは、建国した一代目の皇帝が残した詩なのだが…「皇家存続の危機に立ちし時、一人の魔物とそのもとに集う万の悪魔が戦争を止めるであろう」というもので、実を言うと余はそなたが詩に出てくる魔物ではないかと思って協力を願ったのじゃ」


それで俺を連れてきたのか…。


とはいえそんな詩は所詮は迷信…とは言い切れないか。


俺っていう証明がいるようなもんだからな。


「万の悪魔」というところは多少盛ってあるが、迷信ってのは大体そういうもんだ。


知らず知らずのうちに、それも何代も代を重ねるごとに数が増えて現実味を失っていく。


よくある話だ。


「それで俺を…。なるほどな。合点がいった」


「うむ。そう言うことなのだ。余も、この迷信がどこまで本当なのかはわからぬが、何もせぬよりはマシ。そこで、話を戻すのだが、悪魔の召喚には代償が必要だ。その代償として…」


「いや、抜け道はある」


その抜け道は、単純だが、難しい、それに、俺は好かない。


「どうやるのだ?」


「俺は、あまり好かないやり方なんだが、悪魔は力で従えることもできる」


「何?しかし二千体もの悪魔を力で抑えるなど、英雄級の者でも不可能なのだぞ?」


「大丈夫だ。いや、ただ、流石に…」


「やはり、代償を払った方が…」


不安気にユリウスが顔を覗き込んでくる。


だが、問題なのはそこじゃない。


「ユリウス、ここは目立ちすぎる。帝都の外に転移しよう。それから、信頼できる魔導士はどれだけいる?」


「何!?本当に二千体もの悪魔を力で抑える気か?」


正直、くどい…。


「…大丈夫だ。それで、信頼できる魔導士は何人いるんだ?」


「魔導士?まぁ、三人ならいるが…」


「三人か。少ないな。もう少しいないか?」


「いや、三人とはいえその者たちは父の代から使えている英雄級に匹敵する強さを持つ魔導士たち。一体何をするのかは知らぬが、下手な魔導士を集めるよりはずっと優秀なことは余が保証しよう」


三人となると少ないが確かに国に先代から仕えている魔導士となると、かなり優秀なのだろう。


ここは、ユリウスを信じて任せてみるのも一興か…。


「分かった。じゃぁ、そいつらを集めてくれ」


「うむ。アルバド、三賢者たちを集めるのだ」


そうユリウスが話すと、屋根の上で走る音がする。


どうやら、ずっと上にいてこっそり話を聞いていたらしい。


そして、そいつの正体は多分…。


「アルバドってのは、俺を呼びに来た近衛騎士の事か?」


「うむ」


「そうか、俺たちも出発するとしよう」


杖を取り出して呪文を唱えると足元に幾何学模様の魔法陣が現れる。


足元の魔法陣からは光が放たれ、やがて体を包み込む。

読んでくれてありがとうございます。

そして、なんとここで、重大発表~!

次回、ようやく主人公が無双します。

「面白かった」「続きが気になる」そんな人はぜひ、下にある☆☆☆☆☆を押して応援よろしくお願いします。

右下にあるブックマーク登録も是非押してね。次話が出た時にすぐわかるよ。

それではまた次回。バイバイ~!

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