皇帝からのお呼び出し
北国の風は冷たい。
秋も終わりに近づく十月の頃、勇者の一行はひと気のない道を歩いていた。
回復薬も底をつきかけていて、腰に携えた剣は伝説級ではあるが、既にひびが入っている。
「いったん休憩しよう」
勇者は、身に着けていた武器や、回復薬、地図を下ろして木にもたれかかると、ため息を吐いた。
その様子は勇者らしくない。
「これじゃぁ、魔王領へ着く前に死んじまうぞ」
斧を片手に持った大男のバルスがボソッと言った一言がパーティー全体の士気はさらに低下させる。
「バルス、プラスに考えよう。僕たちは魔王領につく前に幾度となく強力な魔物を打ち破ってきた。確かに、魔王と戦う前に疲労は溜まっているけれど、それだけ多くの人を救ったということじゃないか」
「お前は、とんでもないお人好し、いやここまでくるとバカだな」
「フッ…そうかも、しれないな」
バルスの冗談に少しだけパーティーの空気が明るくなったが、それでも、絶望でパーティーのヒーラー役のメアリーは顔を膝にうずめている。
それを見たバルスは、再び表情を曇らせる。
「メアリー…」
「バルス、そっとしておいてやれ」
勇者にはもう出発したころの覇気は残っていない。
一人の、少しばかり強い騎士でしかない。
「強力な個体でさえあの実力。四天王、それに魔王か…」
そう言って勇者はパーティーのだれにも悟られないよう、ひそかにため息をつく。
ロギア帝国の帝都は、冬であっても賑わいを見せる。
国としては大国の部類で、新たな産業で他の大国との差もつけ始めている。
そんな王都のとある宿の前ではアダバルト商団の衛兵立ち上が慌ただしく動く。
「急げ!穀物の価格は冬にこそ高騰する。競合相手ができる前に豪商に売りつけろ」
アダバルト声に衛兵たちは一斉にハイッと答える。
陣頭指揮を終えたアダバルトは、腰をさすりながら宿の部屋のドアを開けた。
「アダバルト、終わったか?」
ドアが開いたかと思うと、アダバルトが姿を現す。
「あぁ。それにしても、五十にこの仕事はきついな…」
魔王はいつも玉座に鎮座しているだけで、実際に税を集めたり辺境で戦ったりというのは聞いたことがなかった。
それに比べるとこの商団には上下関係がなさすぎる気がする。
「商団では、トップも現地で働くのか?」
「金のやりくりも厳しい、小さな商団ではな」
小さな…。
悪いことを聞いたな…。
そして、改めてポーションのことを思い出してしまった。
「そうか…。ポーションは大丈夫だったか?」
「なに、たいしたことはない。今回は穀物がメインだったから大した問題はない」
そんな嘘は、つかなくていい。
一見、笑顔だし、嘘はついていないように見える。
だが、俺の第六感は取り繕っているのと言っている。
「「…」」
間に気まずい沈黙が流れる。
階段からドタドタと音がしたかと思うと、部屋のドアが慌ただしく開けられた。
「旦那、旦那、陛下がお呼びです」
「へ、ヘイカ?」
「皇帝陛下ですよ。近衛の方がお待ちです。さぁ、早く」
読んでくれてありがとうございます。
良かったら下にある☆☆☆☆☆を押して、応援よろしくお願いします。
ブックマーク登録も是非押してね。次回が出た時にすぐわかるよ。
それでは、また次回。バイバイ~!




