ロギア帝国へ到着
アダバルト商団と出会った俺は、順調に人間の国を目指している。
なんでも、今向かっている国は「ロギア帝国」というらしい。
アダバルトから軽く説明を聞いたが、帝国だというのに貴族の力が強くて、機械科学と魔法を融合させたことで完成した「トレイン」という物が有名らしい。
「アダバルト、あとどれぐらいだ?」
「まぁ、そう慌てるな。まだ一か月はかかるぞ」
一か月、そんなにかかるのか?
到底待っていられないな。
歩いていくのもありかと思ったが、そんなペースならとてもじゃないがごめんだな。
「なぁ、早く着くぶんには問題ないか?」
「問題などないが…一体?」
困惑気味なアダバルトにいちいち構っていては、魔法を使うたび説明する必要がありそうだ。
いや、そんなの構っていられないな。
困惑するアダバルトを横に地面に淡く光る紫色の魔法陣を発動する。
「ここからロギア帝国に転移する。衝撃でポーション瓶の二個か三個は割れるかもしれないがいいか?」
アダバルトがぎょっとした目をしているがまぁ、頷いてくれた気がしたので良いんだろう。
「んじゃ、発動するぞ」
軽く呪文を唱えると、足元にあった魔法陣へ吸い込まれていく。
ドン!
いってぇ…。
魔王城にいる間は魔力を一けたに抑えていたからか、久しぶりに魔法を使うと、相当な衝撃が来た。
ポーション瓶もかなり悲惨なことになっているだろう。
ただ、目の前には城壁があってその奥には町も見える。
場所はあっているだろう。
「まさか、転移魔法も使えたのか?」
あやうく馬の下敷きになりかけているアダバルトが立ち上がって砂を払う。
「いや、すまん。使うのが久しぶりでかなり失敗した」
申し訳ないが一台の荷車からは、ポーションの入った木箱が落ちまくっているうえ、横向きに倒れてしまったものもある。
「失敗?とんでもない。転移魔法など、召喚系と大差ない難易度。それも、自分自身を転移させるだけでだ。それを数十人と、更には荷物まで転移させるなど…」
「お、お前たち、これは一体どういうことだ?」
城門で警備をしていた兵士が慌ててかけてきて、俺たちに槍を突きつける。
ハァ。やれやれだ。多少魔法に失敗したからって…。
やたら焦っている兵士たちに冷めた目線を送る。
「気にするな。転移魔法で少しばかり失敗しただけだ」
「見え透いた嘘をつくな!数人なら納得できるとして、数十人を転移させるなど、聖騎士級でさえも失敗するか成功するか五分五分なのだぞ。それを、どこの馬の骨ともわからない、お前ができるわけないだろう!」
「いや…」
「この方は、他国で将軍を務めているのだ」
俺が元魔王軍であることをバラそうとすると、アダバルトが遮るように口を開いた。
それにしても、将軍なんて、一体どういうつもりだ?
「なるほど、将軍か…。では、なぜ将軍ともあろう方が商団にいるのですかな?」
「それは…。そうです、この方は私の古くよりの知人でして、今回は旅に出ているのです」
古くからの知人?
人間は短命でどれだけ生きても百年が限界だと聞いたことがあるが、そんな時間の感覚だと、会って一日でも古くからに入るのか?
それは完全に間違った認識で、単にうそをついているだけだが、長い間魔王城の中で過ごしていたレオはそれに気づかない。
「そうか…。なら、さっさとこの荷車をどうにかして行け」
そう言って兵士は槍を下ろして定位置に戻った。
明らかに変なものでも見るような目線を送ってくるが、どうにか、多分、いやおそらく問題ないようだな…。
そうして、レオとアダバルト商団は城門をくぐっていく。
その後姿を、この国で最も高貴な存在が見つめていることにも気付かずに。
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それでは、また次回。バイバイ~!