VSメギキュラ
周りを見渡すが、黒いもやもやとした空間で上も下も、右も左もわからないような空間だ。
その虚空、ともいえる空間の中、アルべトロフと向かい合う。
「貴様はここで死なねばならぬ」
そう言ったかと思うとアルべトロフは後ろに回っていた。
あまりにも早く、後ろに気配が現れてから先ほどまでいた場所にいないことに気付いたほどだ。
だが、だからといって問題はない。
随分と気配を察知する能力が落ちているので鍛えなおした方がよさそうだが…。
「土魔球」
後ろに回ったアルべトロフは土魔球を放つが、強い部類ではあるかもしれないが、俺からすればあまりにも貧弱だ。
体にまとったオーラだけで土魔球ははじかれ、周囲の黒いもやの中へ飛ばされていったのをふと、目で追う。
それを見たアルバトロフは忌々し気に舌打ちをして土魔球を連発するが、どれもはじかれて黒いもやの中へとはじかれていく。
「なぁ、まだやるか?」
アルべトロフへと目線を戻すと、既に呼吸が荒くなっていた。
「そろそろ降参…」
「降参したらどうだ」と言いかけたところで、首元を入れ墨の目立つ白い手に貫かれた。
こんな傷を負うなんて十数年ぶり。
だが、人間ならともかく魔物、それも俺のように治癒速度が速いとたいしたダメージにならない。
姿はわからないが、気配は悪魔、突き刺さった手の服装から察するにメイド姿だろうか。
「お前は?」
問いかけても何も答える様子はない。
「回答はなしか…」
そう呟いたとたん、首元にヒヤリとした感覚、ナイフが突きつけられていた。
魔力を奪う魔法が付与されてるな。
何度も食らうと、流石に危なそうだな。
「あなたが例の魔物?」
「さぁ、どうだろうな?」
どっちつかずな返事をすると、剣を抜いて悪魔の短剣をはじく。
悪魔は短剣を放さなかったがそれが仇となって勢い余り、首に刺さったままの腕まで抜けて後ろへと吹っ飛んでいく。
首にはポッカリと傷跡が、だが、それぐらい物の数秒で回復する。
「そう、答える気がないのならいいわ」
俺が数秒で回復するのと同じように悪魔もはじいた時につけた腕の傷は既に完治していた。
魔力は少なそうだ。
だがこの再生速度、そして奇妙な魔力の増減。
「…最上位の悪魔」
俺のぼやきが聞こえたのか悪魔は意外そうな表情をする。
「そう、見破るのね。魔力を押さえていたんだけど」
そう呟いたとたん、隠すことをやめたのか魔力が駄々洩れになる。
量で行けば俺と五分と言ったところだ。
「ま、俺も魔力を押さえていた身だからな。そういう小さな魔力の増減は隠している証拠だってのは俺の中の常識だな」
そう話すと悪魔はますます意外そうな顔をした。
「そう、面白いわね。こやってやるのかしら」
そう、悪魔がつびゃいたとたん、魔力量が先ほどと同じぐらいに減り、増減がピタリとおさまった。
「流石だな」
褒めるが…。
やっぱ悪魔ってのは面倒だな。
この前の二千体は悪魔の中で下位、強かった奴でも中位だったからよかったようなものを…。
「名前は?」
ただ、なんとなく聞いてみただけだ」
無視されればそれで構わない。
だが、悪魔は答えてくれた。
「メギキュラ」
メギキュラ!?
「お前まさか…?」
驚きで言葉が出てこない。
メギキュラってのは確か数千年前に国家を滅ぼした伝説上の悪魔だ。
同名という可能性もなくはないが、上下関係を重視する悪魔が伝説にもなる悪魔の名を受ける事は無礼に当たると考えられていて、なによりもあの魔力操作の上手さが本物であることを物語っている。
なんで、こんな奴の相手をすることに…。
「まだかしら」
周りに十数個の黒い魔力弾を浮かべたメギキュラは退屈そうにつぶやいた。
「あぁ、かかってこい。できれば相手にしたくないがそういう訳にもいかないだろう」
俺の答えに満足したのかメギキュラは笑みを深める。
「その回答、待っていたわ!」
いくつもの魔力弾が俺を襲う。
魔力弾の軌道は複雑ではないし、体力を消耗するものの剣でさばくこと自体はさほど難しくはない。
だが、数が多すぎたら話は別、さばききれなかった魔力弾を避けると、その魔力弾が後ろの黒いもやにぶつかると一瞬でこの空間を爆破した。
威力、やべぇな。
顎をつたう汗を拭って剣を再び構える。
下!
本能の警告に従って下を見るが、その時すでにメギキュラは俺の懐に入っていた。
月光を反射する短刀は俺の首に迫っていた。
「固定」
メギキュラの動きが止まる。
間一髪だったがどうやら助かったようだ。
「これは!?」
メギキュラの口調が焦ったものに変わる。
大悪魔といえど、いや大悪魔であったからこそ劣勢に立ったことなどめったにないであろうメギキュラの慌てぶりはすごかった。
魔力弾を出そうとしても俺の魔法の効果で出せない。
どうやら、完全にメギキュラの無効化に成功したようだ。
「…疲れた」
休みたいが、そんな場合では、いやバンウォンにもアレクサンドロフにも逃げられたのだから少し休むか。
そう思いなおすと、戦いの影響で崩れたがれきの上に腰を下ろす。
そして、近くに倒れていた木を焚火の薪代わりにして魔法で炎をつける。
「さぁ、なんで俺を襲ったのか洗いざらい話してもらおうか」
読んでくれてありがとうございます。
良かったら下にある☆☆☆☆☆を押して応援よろしくお願いします。
ブックマーク登録も是非押してね。次話が出た時にすぐわかるよ。
それではまた次回。バイバイ~!




