VSロッツェル伯爵&バンウォン宰相
ロッツェル邸を囲う百の近衛騎士とアルバド。
それに対抗するように屋敷の塀の上から弓をかまえた私兵が顔を出す。
「おとなしく出てこい」
アルバドの声に応じるよう、門がキーッと音をたてて開いた。
中からは剣をかまえた中年の男が出てくる。
「ロッツェル伯爵、投獄いたします」
「貴様に何の権限があって…」
アルバドが、後ろの近衛騎士から紙を受け取ってパッと見せる。
「逮捕状だ。捕まえろ」
アルバドの後ろに立っていた近衛騎士が捕獲用の縄を片手にロッツェル伯爵に近づき…。
「えぇい、貴様!」
ロッツェル伯爵が近衛騎士の片腕を切りつける。
「う…」
攻撃を避けることができず、ひるんだ近衛騎士に容赦ない二撃目が心臓に放たれた。
「ガ…」
近衛騎士といえど、心臓を突かれれば死ぬ。
その様子を見て、アルバドが顔をしかめた。
そして、やれやれとばかりにため息をつくと、アルバドは剣を抜いた。
「伯爵、それが答えですね?」
貴族とは、血を毛嫌いするものだが、返り血を浴びて半狂乱になったロッツェル伯爵はニヤリとすると、剣をアルバドに向けた。
「貴様、決闘だ!」
アルバドは無言で剣をかまえて応じる。
「いやぁ!」
ロッツェル伯爵は勢いに任せ、剣を振り上げてアルバドに突進したが、あまりにも隙が多い。
剣の達人であるアルバドがその隙を見逃すはずもなく、一瞬で剣を受け止めて数か所を切りつけた。
ロッツェル伯爵は、目を開けたままバッタリと倒れる。
倒れた途端、ロッツェル伯爵の首元から血が流れ出た。
アルバドはその遺体を低俗なものでも見るかのような目線を送ると、私兵たちに向き直った。
そして、声色を厳しくして私兵たちに怒声を飛ばす。
「お前たち、主は倒れた。おとなしく軍門に下るなら悪くはしない。だが、反抗するというのならう容赦はしない」
私兵たちの間にざわつきが広がる。
お互いに見つめあって頷きあうものや、覚悟を決めたように武器を投げ捨てる者もいる。
「こ、降伏します」
一人の私兵が手を上げて降伏を宣言した。
「お、俺も」
「俺もだ」
それを始めに、私兵たちは次々に降伏していく。
結局、降伏したのは全ての私兵だった。
その様子を見て、近衛騎士たちはアルバドに流石だという目線を送った。
大公家であるバンウォンの屋敷は、他の貴族と比べても倍はあるのではという大きさで、塀の上から顔を出す私兵たちも数が多く、屈強な体格をした私兵が多かった。
「バンウォーン、出てこーい!」
後ろに立つ二十代ほどにみえるのに、どこかおっさんぽい男が口元に手を当てて拡声器のようにして陽気な声を出した。
本人曰く、バンウォンの弟らしく、家から追い出されたのを恨んで屋敷に向かっているときにたまたま出会って一緒についてきたのだ。
酔っているのか、顔を真っ赤にして足取りもおぼつかない。
「ロビンソン!逆賊に加わるぐらいならこちらにつけ。褒美も約束しよう」
門の奥から渋い声が返ってきた。
あれが、宰相のバンウォンのようだ。
「あぁ?今更褒美をやるから戻ってこい?ふざけてんのか~」
そう言ってロビンソンと呼ばれた自称弟は、眠気が限界に来たのかバタッと倒れた。
…何なんだ、こいつは。
調子が崩れる。
「そいつは放っておいて、降参する気のある奴はいるか?」
私兵たちの顔を見回すも、降参を申し出る様子はない。
中には一層武器を強く握りしめている私兵までいる。
「我がバンウォンの私兵に、敵に恐れをなし降伏するものなどおらぬ!」
「なら、死んでも悪く思うなよ」
腰からドラウンの親父に打ってもらった刀を抜く。
握っても、魔力は吸われない。
原因はわからないが、あの時吸われて以来一度も吸われてはいない。
「風神斬り」
三発の斬撃を屋敷の塀へ飛ばす。
だが、結界が反応して衝撃でどれだけか塀がボロボロと崩れたが、あまり効果はない。
「攻撃せよ!」
バンウォンの攻撃命令と共に、一斉に私兵たちが矢やら魔法やらを放ってくる。
だが………
どれも威力が弱すぎる。
少しばかり力を開放しただけでオーラで全てはじくことができる。
「ひぃ、化け物!」
誰が化け物だ!
この程度の結界なら、斬撃ではたいした効果が与えられなくとも直接切れば一瞬だ。
化け物扱いしてきた魔導士の下へジャンプして首を切る。
「火炎…」
化け物扱いしてきた魔導士を切ると、別の魔導士が詠唱し終えるまでなく鳩尾をついて絶命させる。
「く…この俺が相手だ!」
そう言って立ちはだかった身なりのいい騎士を斬撃で黙らせると、高くジャンプする。
眼下には群がる数十の私兵が。
「風神斬り・八連」
放った斬撃は魔導士が張りなおした結界を、紙のごとく破ると私兵たちを切り刻む。
それでもまだ、百名近い私兵の気配を感じる。
スタット地面に着地して杖を取り出す。
「大魔火炎球」
魔法陣から発射された直系三メートルはあろうかという巨大な火炎球は周りの兵士を巻き込み、爆発する。
これで、戦闘終了だ。
爆発の衝撃で待った土埃が晴れると、結界で身を守られているバンウォンの姿が見えた。
その後ろには三賢者の一番下の弟分のアルべトロフがいた。
他にも数名の騎士が剣を抜いている。
たしか、西方教王だか何だか知らないが、一番上の兄が開戦派に移ったのだから弟分がこちら側でも不思議ではないかもしれない。
「なんで、お前がいるんだ?」
「……」
「答える気がないならそれで結構。だが、おとなしくお縄につかまってもらうぞ」
「黒の世界」
周囲を黒いもやもやとしたものが囲う。
その中にいたのは、俺とアルべトロフだけ。
「おとなしく、軍門につくのはそなただ」
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