アダバルト商団との出会い
魔王城から追放された俺は、人の国へ向かっている。
本で見ただけなので、よくは覚えていないが、この方角にあるのは確か「ケル王国」とかいう名前だった気がする。
本気を出せば、魔法陣で転移することもできなくはないが、二十五年越しの自由に心が躍っていたのもあって、俺は景色を楽しみながら歩いていた。
道も、山道にしてはかなり整備されているし、鬱蒼とした木々も多少は手入れがされているのか、道にまでは伸びてきていない。
「ひぃっ、た、助けてくれ!」
声の方を向くと、三十人ほどの人間たちが魔物に襲われていた。
三十人の後ろには大量の回復薬やら穀物やらが荷車に積まれている。
あれが商団というものか…。
ま、俺には関係ないことだ。
ほっとく…いや、助けるか。
もしかしたら、ケル王国がどの方向かも教えてもらえるかもしれないしな。
胸元から愛用している杖「ケルプ」を取り出す。
愛用、と言っても魔力を一けたに抑えていた時は使っていなかったので杖を使うのは実質二十年ぶりぐらいだ。
「火炎球」
杖の先端から火炎球が飛ばされる。
杖から飛ばされた炎は魔物に命中した。
その魔物は、確かAランクオーバーのゴールドボコブリンとかいうも者だが、正直言って敵ではない。
それより、魔法の腕がたいして落ちていなくてよかった。
ゴールドゴブリンに、続けて二発目、三発目とあてていくと、徐々に傷口が大きくなり、やがて、道の橋の鬱蒼とした雑木林に飛び込み、森の中へと逃げていった。
たしたことないな。
こんなレベルの低い魔法で安心していいかはわからないが、とりあえず魔法は感覚さえ取り戻せば昔と同じように使えそうだ。
「か、感謝する」
金色の生地にピンクの花柄の法被を羽織った小太りの男が近づいてきた。
商団のトップなのか、見るからに豪華な服だが今のパニックで泥だらけになっている。
そうだ、ケル王国についてだ。
「おい、ケル王国はどこにある?」
「ケ、ケル王国?命の恩人にこんなことを言うのはあれだが、頭は大丈夫か?あんなものは伝説上の国だぞ」
そう言って小太りの男は困惑気味な顔をする。
伝説上…。どうやらあの本は実話ではなかったらしい。
変なことを聞いてしまったな…。
咳払いをして気まずさを拭うと、名前を聞いてみる。
「それで、お前の名前は?」
「わしの名前はアダバルト。アダバルト商団で頭を務めている」
「アダバルト…。おかしな名前だな」
「失礼な…。いや、おあいこか。それで、貴殿の名は?」
「俺か?俺はレオ。元々、魔王軍で…。いや、何でもない」
魔王はかなり人間から恐れられているというのは風のうわさに聞いたことがある。
そりゃあ、部下を力で縛るような奴だから当然。
言わない方がいいだろう。
「まお?何と言った?」
「いや、気にするな。それじゃぁ、俺は…」
そう言って去ろうとすると、肩にアダバルトが手を置いた。
何だ?
「待て、どうだ?わしの商団で衛兵をしないか?お前ほどの腕前なら年に金貨百枚だって夢じゃないぞ」
「いや、結構。久しぶりの自由なんだ。何かに縛られるのはごめんだな。だが、まぁ、俺は行く当てもないからな。次に、どこかの国につくまでぐらいはやってやる」
「感謝するぞ。今回のルートは危険な魔物も多いからな。貴殿が付いてきてくれるなら安心というものよ。そうだ、馬が一頭余っている。歩き旅も大変だろうに乗っていくといい」
よっぽど気がまわるのか、アダバルトの発言を聞いていた衛兵の一人がなにやら動物を連れてきた。
魔国での移動手段といえば転移魔法か雷虎だったので馬などなじみがない。
「こいつに乗るのか?」
アダバルトが頷く。
馬など乗ったことがないが…。
いや、確か弟が話してくれた騎士の話では確か背中のあたりに置かれた鞍という物の上に座っていた気がする。
なら、鞍の上に…。
乗ってもアダバルト達はにこにこしている。
多分、間違っていないのだろう。
俺が乗ったのを見届けると、アダバルトも列を乱した小姓っぽい旅姿の男たちに声をかけて、馬に座った。
そして、アダバルトは「どぉ!」と言って馬に鞭打って進ませる。
それを見ていた商人たちも順次歩き出した。
俺もアダバルトと同じように馬に鞭を打つと同じように進んでいく。
こうして、アダバルト商団との旅が始まった。
読んでくれてありがとうございます。
無双する…はずなんですが、あと五話ぐらいは今回みたいなよっぽど強い魔物をワンパンとかいうだけで、軍相手に単独で勝利。とかはなさそうです。
それはともかく下の☆☆☆☆☆を押して、ポイントで作者を応援しよう!(←自分で言う?)
右下のブックマーク登録も是非押してね。新作が出た時にすぐわかるよ。
それでは、また次回。バイバイ~!




