宣戦布告ネルシス連邦
帝都の大通りを帝宮へと一直線に早馬が駆ける。
騎士は、城門をくぐると、馬から飛び降りて一直線に皇帝の寝所へと駆けた。
無礼ではあるが、格上の宦官や大臣の横を素通りする。
なにせ、背中に背負った伝令の証である旗は赤色。
緊急事態だからだ。
「皇帝陛下、皇帝陛下!」
「何事だ?」
寝所の中庭から呼びかけると、近衛騎士、アルバドが出てくる。
アルバドの威圧感に気おされる伝令の騎士だったが、恐る恐る口を開いた。
「ネルシス連邦国が宣戦布告してまいりました」
ネルシス連邦国とは、ロギア帝国と隣接する大国。
戦争は激化することが予想された。
「そうか。下がって休め」
アルバドに声をかけられ、伝令の騎士は重苦しい表情をしながら下がる。
寝所の木の椅子の上で表情険しく座るユリウス。
ドアが開いてアルバドが入ってきた。
「アルバド、何事だ?」
「陛下、緊急事態です。戦争がはじまります。ネルシス連邦が宣戦布告してまいりました」
ユリウスは、絶句する。
「西方教王、貴族の皆様方がおいでです」
外で控えているメイドの声にリアムは「入れ」とこたえた。
すると、十人ほどの貴族と三賢者の一番下の弟分、アルべトロフが入ってくる。
アルべトロフは気配を消しているが、まさか三賢者が貴族側だと思っていなかったリアムの目線は国家でも随一の権力者たちではなく、三賢者の弟分に向けられている。
「西方教王、ご機嫌麗しゅう」
貴族たちの先頭に立っていた三十代ほどの若い貴族が頭を下げた。
スラっと細身で、貴族にしては珍しく剣を腰に携えている。
「よく来てくれた。バンウォン殿」
バンウォンは一年ほど前に家督を譲られた大公家であるアレストロ家の長男だ。
その後ろにも公爵家や伯爵家の名門貴族たちが続く。
「西方教王、戦…」
「知っておる。ネルシスが宣戦布告したのであろう」
バンウォンの声を遮るようにリアムが話し出す。
「バンウォン殿、穀物類は買い占めてあるな?」
「抜かりはありません。問題ないかと」
「しかと頼むぞ。ネルシスは我が国ほどではないにしろ、世界に名をはせる大国。愚策を取って万が一にも敗北するなどということはあってはならない」
リアムの真面目な声色を察し貴族たちも覚悟を決めて頷く。
「西方教王、伝令です」
廊下を慌ただしく駆ける音がした。
「入れ」
許可を得ると、兵士はドアを開け、貴族たちの隙間を通るとリアムの前まで来て一礼した。
だが、中々話し出そうとしない。
横にいる貴族たちに情報が行くことを嫌がっているのだろう。
それを察したリアムは「問題ない」と伝える。
「今や貴族方は我らの味方。状況が割った今、隠し立てする必要などない」
「そ、その…皇帝陛下が倒れました」
その一言で貴族たちの間に衝撃が走る。
微動だにしなかったのはバンウォンとリアムだけだ。
「このことは、既に兵の間に広まってしまっているか?」
「私も、たまたま帝宮へ侵入している際に兵士たちの話を聞いただけなので、まず間違いなく広まっているかと」
「チッ、かよわいとは聞いていたが、戦争前に倒れるなど…。軍の士気が…」
イライラしげにバンウォンは拳を握る。
リアムも不機嫌そうに何も悪くない伝令の兵士を睨んだ。
「あの、魔物の仕業だ」
「魔物?」
「単体で二千の悪魔を従えるような準魔王級の魔物だ」
再び、貴族たちの間に衝撃が走る。
これには、バンウォンも絶句した。
「…災禍の芽は早いうちに摘んでおくべきだ」
貴族の一人がボソッとつぶやいた。
アレクサンドロフ家の次男、アレクサンドロフ・ロビンソンだ。
その声にバンウォンが頷く。
「分かった。従妹に頼んで騎士団を動かしてもらうとしよう」
「無駄だ!」
話を聞いていたリアムが机をバンっと叩いて一喝する。
「準魔王級相手に数で対抗しようなど無駄だ。英雄級の者を、最低でも三名は集めるのだ。そして、正面からは戦わず…寝首を搔く」
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