カナとの出会い
人と人の間を抜ける。
そして、見上げると目の前に「ポーチ屋幸福堂」と書かれた木製の看板が現れる。
店内に入ろうとして…。
グチャ。
しまった…。
じかに持っていたドラゴンの尻尾に付着していた血が衛兵風の男の肩を汚す。
「どう償ってくれる?」
やたら怒っているものの赤い服に赤い血が付いたところでたいして変わらないと思うが…。
「おい、どう償ってくれるって聞いてるんだよ?」
うるさいな…。
だが、ここで目立って騒ぎを起こせばユリウスとの隠密行動はしにくくなる…。
「…すまなかった」
「あぁ?なら、出すもの出すのが礼儀ってもんだろ?」
出すもの…金の事か。
人間は、単純というかなんというか…金にとらわれすぎているな。
だが、争うのも面倒だ。
「ほら、銀貨だ」
「銀貨?見たところその肉はドラゴンの尻尾だろ。そんなものを手に入れるほどの金があるなら、金貨の十枚や二十枚持ち合わせているだろ?」
「あいにく、そんな持ち合わせはない」
「ほぉ?出す気はないと」
「だからなぁ、持ち合わせは…」
喧嘩の声を聞きつけたのか、店のドアを開けて紙をストレートに伸ばした清楚系の女性がドアを開けて出てくる。
「何事ですか?」
問いかけられた衛兵の方を向くと、どこか挙動不審に陥っている。
「どうしたのですか?」
語尾になるにつれ強くなっていく口調に衛兵は腰を抜かしかけながら慌てて立ち去って行った。
「あの…もしかしてお客さんですか?」
なぜか、顔を赤らめて問いかけてくる。
「あぁ」
ぎこちなく返すと、どこかぎこちない動きで店内にに案内された。
店の中に入ると、温石でも使っているのか、外とは違いほのかに暖かかった。
「ど、どんなポーチが好みですか?」
「どんな…そうだな、動きやすくてある程度入れれるものがいいな」
要望を伝えると、その女性はカウンターの中へ入って行ってしばらくゴソゴソしてから出てきた。
「巨大熊の毛皮で作ったポーチです。これなら頑丈ですし、どうですか?」
そう言ってその女性が手に持っているのは正真正銘、巨大熊の毛皮で作られたポーチ。
頑丈さもなそんじょそこらのなまくらな剣では切れないほどの頑丈さを備えている。
だが…。
「いや、普通のポーチじゃなくて魔法製のポーチで頼む」
魔法製のポーチとは、空間の詰め込まれた宝玉の中へ物をしまうようになっていて、数センチしかない宝玉のわりに大きなものでは人一人ぐらいは入るという便利なアイテムだ。
「魔法製のポーチですか…。あいにく先ほど売り切れたばかりでして…」
売り切れか…。
タイミングは悪いが仕方ない。
「じゃぁ、入荷したらまた頼む」
俺が頼むとほのかに頬を赤らめて元気よく返してくれる。
「えぇ、はい!」
「ところで、さっきの衛兵との関係は?」
「あぁ、さっきはお見苦しいところを見せましたね…。あれは、実は私の従妹なんですけど、どうにも昔から暴力的で…。父がお金を貸しているので私には従順なんですが…」
「へぇ、ところで名前は?」
とっさに口から出たが、こんなことを聞くのは変かもしれないな…。
俺はなんで、仲がいいわけでもないのに名前を…。
「え、な、名前ですか?カナです」
「カナか…」
カナという名前には聞き覚えがある。
魔王城にいた頃俺の従妹で…。
「大丈夫ですか?」
気付いたら目頭が熱くなっていた。
「いや…その名前に心当たりがあって…。じゃ、また来る」
気まずくて我慢できなかった俺は早足にドアを開けて外へ出てしまった。
外に出て外を見上げると、何気ない青空が。
そういや、カナはどうしてるんだろうな…。
魔王城へ、一人置いてきてしまった年端もない従妹のことがふと、頭をよぎった。
読んでくれてありがとうございます。
遂にヒロイン登場!
カナとの出会い。そして従妹のかなとは一体どんな関係が!?
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それではまた次回。バイバイ~!




