祝!自由獲得
「お前を追放する!」
魔王の直属の竜人騎士が、俺の首元を掴んで外に来ると、俺のことをバタリと倒れさせた。
尻もちをついた俺はふと、周りを見渡す。
ここは、寂れた場所だ。
魔王城は石レンガの豪華な造りだが、辺境の城の、それも裏門となると、掘り出したままの石と適当な丸太を紐で結んだだけだ。
「貴様ほど無能な魔族は初めて見た。二度と戻ってくるな」
黄金の鎧に身を包んだその竜人騎士は見下したような目で俺のことを見つめると目の前に唾を吐いて城の中へと戻って行った。
あぁ、言われなくとも戻る気はねぇよ。
竜人騎士が入って行って開いたドアは、勢いよく閉めた反動で、何度もキーキーと音をたてて開いたりしまったりする。
魔王の直属の配下になって二十五年。
なにか、考え深いものもあるが、腰の砂を払って立ち上がる。
闇の多い過去をいつまでも振り返っていても、仕方ない。
幸せになる未来なんて想像できないが、少なくとも今よりは…。
さぁ、自由になったことだ、人間の国にでも行ってみるか。
そう考え、彼は魔王城の外へと旅立つ。長い間魔王城に束縛されていた彼は、遂に自由をつかみ取った。
俺がこの魔王城の中へ行くことになったのは二十五年前。
あの頃はまだ十幾つだったが、それでも魔力量が準魔王級と、自分で言うのもあれだが、天性の才能があったのか、ありえないほどほど高く、俺は魔王に呼び出された。
ガキだったころの俺は魔王城へ始めて来たのがうれしかったのか、たいして話を聞いていなかったのに…。
魔王の提案を二つ返事で受けて…。
それが悲劇の始まりだった。
俺は、それから魔王との契約にサインをしたことで、強力なスキルと入れ替えに自由を失った。
魔王なんて、味方になったところで信じれるものじゃない。
魔王に契約で支配されてしまった俺は、最強の戦士として育てられ、一日のほとんどを、戦闘訓練に費やし、魔道の書物を延々と読まささせれることも珍しくなかった。
俺は、それが嫌で仕方なかった。
自分の魔力の多さを恨んだ。
親友と野原を駆け回った日々が懐かしかった。
もしかしたら俺なら、魔力量も多く、スキルまで手に入れた俺なら、魔王の契約を解除できるかもしれない。
そう思ったこともあったが、一度結んでしまった契約を無に戻すなど、神であってもできないような御業。
それは、失敗に終わった。
何度も解除しようとすれば、流石に魔王にも気づかれる。
俺は諦め、数年がたった。
そんな俺に、チャンスが訪れたのは今から二十年前。
領内で魔力が急激に減少する病がはびこったのだ。
俺は、その日から魔力が減少しているように演技をつづけた。
もしかしたら、魔力が減れば俺のことを手放すかもしれないと思ったからだ。
魔力を監査する機会もあったが、俺にとっては魔力をごまかすなど、皮肉ではあるが魔王軍の重臣たちに魔力の使い方を叩き込まれていたので、いとも簡単にできた。
当初、二十万近くあると思われていた魔力を数百に抑えて過ごしていた。
それでも、魔王は中々俺を手放そうとはしなかった。
年端もないころに教えられて身についている魔道の知識と武芸の実力のせいだ。
そこで俺は、更に病が進行して魔力が減少しているように見せかけた。
数百で押さえていた魔力をさらに抑えて一けたにするときもあった。
これは、今から十五年ほど前だろう。
ここまでくると記憶が残っていて、徐々に魔王が俺に冷たくなってきていたのも覚えている。
そして、そこから更に十年。
魔王城へ束縛されてから二十五年。
俺は、二十五年越しの作戦が成功して、遂に自由の身になった。
父と母は寿命で死んで、弟は年端もないころに例の魔力が減少する病にかかって命を失った。
その古傷は、もう癒えた…と思う。
この魔国に、未練はない。
冒険でもしてみようか?
東の国に行って景色を楽しむもいい。
西の国に行って食べ物を楽しむのもいい。
さぁ、どうしようか?
真っすぐと伸びる茶髪混じりの赤髪。
魔族であるのに人間のような褐色色の肌。
俺の名前はレオ。
彼は、冒険の出発点に立った。
まだ、年端もない幼少期にプレゼントされた両親のかすかなぬくもりの残る魔法の杖を片手に第二の人生をはじめる。
読んでくれてありがとうございます。
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それでは、また次回。バイバイ~!