紙切れ
処分を決めた古机の引き出しから皺だらけの紙が出てきた。一度は丸めたものを広げ、畳み直してあったらしい。いちいち見てるから片付かないと言われるのを承知で広げてみた。
正体は両親の名前が書かれた離婚届。びっくりして大声を上げたら、母と姉がすっ飛んできた。
「えぇー、いやだあ、お父さんたら。昔、冗談で書いたのよぉ、これ」
とぼける母に、笑い出す姉。
「もぉ、笑わないでよぉ。こんなの、もう捨てちゃうんだから」
母はわたしから紙を奪ってくしゃくしゃに丸めた。いつか誰かがそうしたように、年齢を刻んだその手で。
いわゆる、たかが紙切れ一枚の縁。切れなくてよかったのかもねと、姉が小声でつぶやいた。