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自警団の元気印リネットと区長のトドロキ③


「お疲れさまですトドロキ区長」


「おうお疲れ……ふむ」



 トドロキ区長はこの場にいるメンツをパッと見て状況を把握してくれたのか、まずリネットに話しかけた。



「おう、リネットちゃん。今日もせいがでるじゃねぇか」


「あ、ハイ! 見習いの腕章をいち早くとってお父さ……隊長を安心させるため粉骨砕身の覚悟で頑張るッス!」



 トドロキ区長は子供を見やるような温かい目でリネットを見やる。



「元気でいいねぇ。で、その隊長がさっきお前さんを捜している感じだったが……心当たりはあるかい?」


「あ、ヤベッス! もしかして詰め所の取っ手を壊したのがバレたかも!」



(壊したんだ)



 おそらく区長はでまかせを言っただけなのに心当たりがあったようで……彼の顔を見ると何とも言えない表情で苦笑しているのだった。


 リネットは急に青ざめた顔をすると律儀にレモンティーの代金を置いて大急ぎで宿屋を出て行こうとするのだった。



「レモンティー美味しかったッス! そして次こそは! 諦めないッスよ店長! そしてパウムさん! ……あぁそうだトドロキ区長!」


「ん? どした?」


「ナイ胸も頑張れば揺れるッスよ! じゃあお疲れさまです!」



 それだけ言い残し去って行くリネット。


 しばし間が空いた後トドロキ区長はジト目で俺を睨んでくる。



「ウィル、あの子に何吹き込んだ」


「ちょっとした格言をですね……イタタ!」



 トドロキ区長はすぐさまヘッドロックをかましてきた事務方とは思えない腕力だ。



「ばっきゃろい! 酒の席での発言は格言にはなんねぇんだよ! TPOをわきまえないとどんだけ良い言葉でも失言と紙一重なんだ!」



 さんざん人の頭を締めつけたあと、トドロキ区長は去っていったリネットの方を向いて笑う。



「ま、とりあえず当分見習いの腕章は外れねぇだろうな」



 同情の声を漏らしながらトドロキ区長はイスに腰掛け俺の方に向き直った。


 トドロキ区長――ナーガ区を取り仕切る恰幅の良い中年親父だ。だらしない腹とは裏腹にかなりお金にはシビアな考えの持ち主でもある。


 まぁ単に守銭奴というわけじゃなくて、本人曰く「金を払うと責任が生じる」を信条に生きているそうだ。


 現にここナーガ区は他の区では生活できない人間や故郷を追い出された人間が少なくない。「金さえ払えば文句はない」と全てを受け入れているからだ。もちろん度が過ぎるヤツは追い払うけど。


 そんな荒くれ者やこだわりの強い職人が多数住んでいるが「治安がちょっと悪い」程度で済んでいるのは彼の信条は強ち間違ってはいないだろう。


 力量も懐もでかい、口は悪いが人情味あふれるタヌキ親父といった所だ。


 かく言う俺もその懐のデカさに惚れたクチでナーガ区で宿屋を経営しようと思った理由の一つでもある、もう一つは土地代が割安だったからだけどね。


 俺の素性も四英雄との関係も知っている数少ない人物の一人というわけだ。


「いよっ、パウムちゃん」


 トドロキ区長はパウムに軽く挨拶する。パウムも区長には少し気を許しているのかほんのり微笑んでみせた。



「やっと慣れて来てくれて嬉しいぜ」


「慣れすぎると手の掛かる子供になりますよ、アレ」



 区長は笑うと同情のまなざしを向けた。



「色々難儀だねお前さんは。ちなみにリネットちゃんの訪問は今月入って何回目だ?」


「四回目ですよ、ステーキの件で三回と今日で四回」



 豪快に笑う区長。そのことを聴きに来たわけでもないだろうと俺は用件を尋ねる。



「で、何しにきたんですか」



 トドロキ区長はすぐさま用件は切り出さずのらりくらりと雑談から話し出す、面倒事を頼むときのこの人の手法だ。タヌキ親父め。



「ちまたじゃ宿屋は世を忍ぶ仮の姿、普通じゃ受けてくれない仕事を受け負う貿易都市の裏ギルドなんて噂だってな」


「まったくいい迷惑です、誰のせいだか」



 チラリとパウムの方を見やる俺。


 彼女は素知らぬ顔で口笛を吹く素振りを見せる。スースー空気だけ漏れて吹けていないじゃねーか。


 トドロキ区長は笑いながらしれっととんでもないことを言い始める。



「どうだい、いっそのことやってみないか? 貿易都市の裏ギルド! いや、いっそコソコソしねーで「四英雄の所属する冒険者ギルド」って銘打って大々的に旗揚げしねーか?」


「何言ってるの!?」


「ハハハ! 冗談だ冗談! 半分くらいは、な」



 稚気あふれる笑みで口元をつり上げるトドロキ区長。冗談と言いながらも色よい返事が望めそうなら見逃さないのがこの人の恐ろしいところだ。



「実際有りだと思うんだけどな、四英雄を抱える新進気鋭の冒険者ギルド。依頼も人手もがっぽり集まるだろ」


「そんなことしてると、またアレス区からスタンドプレーだって文句言われますよ」


「あいつらは口を開けば文句ばかりだ、気にしちゃ身がもたねえよ」



 よっぽどなのだろう、苦い顔をする区長だったが今度はパウムに向き直る。



「パウムちゃんもここがギルドになりゃずーっとウィルと一緒に仕事が出来るぜ」


「おぉ……ずーっと……」



 パウムは目を輝かせ始める。このタヌキ親父の口車に乗せられちゃダメだっての。


 悪い大人に騙されないようパウムを引き離す、完全に親の心境だ。



「アレス区に苦労しているのは心中お察ししますけどね」



 そう前置きしてから、俺は毅然とした態度で断る。



「申し訳ありませんがお断りします」


「良い提案だと思うけどなぁ、冒険者ギルド兼宿屋なんてのも「おつ」なもんだぜ」


「何が「おつ」だよ……俺はスローライフを楽しみたいって言ってんじゃないですか」


「別にお前が戦場に出張るわけじゃないだろ」



 その言い分に俺はカウンターに身を乗り出し、嘆息混じりで答える。



「奥手だったり態度が悪かったり理解力に乏しい……交渉事なんてできないアイツらの代わりに依頼をまとめるのは誰ですか?」


「まぁ、そこはお前だわな」


「そして地図も読めない、初めての場所だとちょくちょく迷うくせに人に道も聞けない、仕事を忘れて困っている人を助けたり山で木の実を採り始める……こんな連中を現場に連れていくのは誰ですか?」


「まぁ、お前だわな」


「依頼をこなす際に壊した家屋や物品の損害額の算出、高圧的な態度で気分を害した方のクレーム処理など現場に赴いて確認したり頭を下げたりするのは誰ですか? 代わりに区長がやってくれます?」


「あーなんかスマン」



 やっと折れたトドロキ区長は小さく頭を下げた。



「結局現場に駆り出されるのは俺なんですよ「大地の災い」を鎮める冒険の時と大して変わらない……むしろギルドとして責任がつきまとってさらに大変じゃないですか」


「まぁなぁ」


「ハンコ持って駆け回っているトドロキ区長を見ているから、なおさらお断りですよ」



 俺の言い分が図星すぎて区長は笑うしかないようだ。



「ハハハ、それを言われちゃ何も言い返せねえ。この話はパウムちゃんや他の英雄たちが「ウィル離れ」してからだな」



 俺はパウムの方を見る、彼女は苦笑いとも愛想笑いともつかない笑顔で誤魔化そうとしていた。当分独り立ちする気はないなこいつ。



「で、冒険者ギルドの話をしにきたわけじゃないでしょ」


「実はよ、そう無関係な話じゃねーんだコレが」



 ここからが本題とばかりに身を乗り出す区長。パウムにも聞こえるような声で用件を切り出した。







※コピペミスで内容が重複しておりました

 4/17に修正しました申し訳ございません


 ※次回も明日17時頃投稿します


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 皆様に少しでも楽しんでいただけるよう頑張りますのでよろしくお願いいたします。 

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