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聖女フランキッシュとバルマンテ公の協力③

(何度か会ったことあるのに、外出用の装いだったりすぐ気がつかなかったってのは言い訳になるよな……なんて不敬を)



 俺はすぐさまかしづき頭を垂れる。


 そんな俺をバルマンテ公は寛大なお言葉を俺に与えてくれた。



「そう畏まらなくてもよい、ウィルよ。お主はワシの良き友人で感謝してもしたりないのはこちらの方だ」


「もったいないお言葉を……」


「何、またいろいろ相談に乗ってくれればよい」



 ほんと、もったいないお言葉すぎて涙がでそうだ。


 感謝の気持ちでいっぱいの俺の背中をグレンはバンバン叩く。



「おっちゃんがそう言っているんだ! 気にしなくていいんじゃねーかウィル!」



 方や礼儀もへったくれもないグレン、ヒドすぎて涙が出そうだ。



「グレン……バルマンテ公はお前の上司で身元引受人でもあるんだぞ。くだけて接しすぎだ」


「お? そうか?」


 太い指で頭をコリコリ掻くグレン。こいつはどれだけ恵まれているか自覚した方が良い。


 コイツはあまり覚えていないそうだが、幼少期にグレンは山に捨てられたそうだ。


 そして息も絶え絶えのところバルマンテ公に拾われ九死に一生を得た……という感動エピソードでは残念ながらない。


 持ち前の生命力で野生児として動物やモンスターを従え山の王に君臨。密猟者や勝手に土地を開拓しようとした悪徳商人を返り討ちにしている内にモンスター扱いされ懸賞金をかけられるまでになったそうだ。


 そのことを耳にしたバルマンテ公は親衛隊を従え鎮圧に出陣……グレンが人間であることを知ると山の平和を守ることを約束し、さらに身元引受人にまでなったそうだ。


 バルマンテ公親衛隊に所属させ自らの監視下に置き、公私ともにグレンの父親のような存在である。


 常識知らずの野生児だけど根は善良なグレンは親衛隊として職務を一生懸命こなすようになる。


 しかし痛い目を見た悪徳商人の策略で懲役がついてしまったグレン、その刑期を減らすべく恩赦のため、そしてちょっとでも常識を覚えてもらうため「大地の災い」を鎮める旅に出させられたという。


 バルマンテ公は父親のような眼差しをグレンに向けると「気にしないでくれ」と俺に手を挙げる。



「うるさい連中がいない時くらいかまわないさ。それよりウィルよ、グレンの奴が度々そちらに出向いて迷惑をかけているようだが?」


「あ、いえ……特には……」



 まぁ迷惑っちゃ迷惑だけど……基本行動理念が善意だからな、無碍に出来ないんですよ。


 バルマンテ公はその件について軽く謝罪してくれた。



「その節は申し訳ない……コイツも悪気はないんだ、許してやってくれ」


「おう! 悪気はないぜ!」



 リグリーが呆れてグレンを見やる。



「元気いっぱいに返事して……子供?」

 


バルマンテ公は俺に気を使って何度も使者を送って迷惑かけていないか気にかける気遣いの人だ。こんなこと考えちゃいけないけど従業員として雇うならこんな気遣いが出来る人が良いな。



(逆に使者を送るからウチの宿屋が変に勘違いされているなんて言えないよ)



 笑って誤魔化すしかない俺。


 会話が一区切りついたところでフランキッシュが尋ねる。



「バルマンテ公、お久しぶりです」


「聖女様、お元気そうでなによりです」


「お止め下さい聖女だなんて……ウィル様がいないと何もできないひよっこですし」



 そうかな、他のメンツと比べたら俺離れできそうなものだけど。


 謙遜するフランキッシュは空いているイスに座ったバルマンテ公に用向きを尋ねた。



「ところでご用件はなんでしょう?」



 バルマンテ公に代わってパウムが答えた。



「……怪盗ロブスに心当たりがあるんだって……ですよね、バルマンテ公」



 パウムが人見知りであると知っているバルマンテ公は優しく頷いた。父性本能溢れていますなぁ。



「そうなんだ。この前リグリー君と話している時、その話題になってね……思い当たる節があったのでお邪魔させてもらったんだよ」


「思い当たる節……ですか?」



 怪盗ロブスに関する心当たり……実に興味深い話に俺は思わずテーブルに身を乗り出した。



「オウ! どうやら俺らと同じらしいぜ!」


「同じ?」



 要領を得ないグレンの言葉をパウムが補足してくれた。



「つまり、私たちと同じ「大地の災い」を鎮めるべく旅に出ていた人間かもって」


「何人か知っているけど……その中の誰かか?」



 バルマンテ公は「そこまではわからない」と言葉を続ける。



「いや、その中の人間とも限らない。なんせ「英雄候補」は公式、非公式、大小様々……合わせて二十組はいたからな」



 思った以上の大人数に俺は驚きを隠せなかった。



「二十組!? こんなのが二十組もいたんですか!?」


「誰がこんなのよ」



 誠に心外であるとリグリーはご立腹だった。俺はとっさにフォローする。



「良くも悪くも規格外って事だよ」


「ふん、まぁそういうことにしてあげる」



 リグリーは扇子を振りながらバルマンテ公に代わって「大地の災い」に挑んだ人間について語り出す。



「例の「大地の災い」が問題視されてから「世界の終わり」だの終末論者が好き放題暴れて各国は荒れ始めたわ」



 確かにあの時期はウチの田舎ですら物騒になったからな。大きな町に出かけるだけでも物々しい装備に身を包まなきゃならなかったもんな。



「そして段々と世の中が荒れ始めた頃、こんな事が囁かれるようになったわ。

「災いを防いだ国こそが世界の理事国にふさわしい」と」



 バルマンテ公は大きく頷く。



「度々議論されていたが中々実現できなかった「世界を束ねるリーダー」の確立……「大地の災い」はそのゴールに定められたのだ」


「えぇ、知っています」



 俺は過去の冒険を思い返す。モンスターやら人類未到の地……それらも確かに危険だったが一番キツかったのが「人間」だ。「大地の災い」のせいで余裕のなくなった人間や終末論者の集団が度々俺たちの邪魔をはじめたり、争い事で金をもうけている悪徳商人の連中から煙たがられ嫌がらせを受けたり……



「俺たちが災いを鎮めたら都合の悪い連中から何度も命を狙われたりして……正直なにが敵でなにが味方なのかわからなくなった記憶があります」



 俺がスローライフに傾倒したりコイツら四英雄を利用されたくないと願うようになったのもこの体験が大きい、ちょっとした人間不信だからな。



「その件について本当に申し訳なく思う。世のために尽くした英雄や君みたいな人間を政治に巻き込んでしまったからな……」



 頭を下げるバルマンテ公、は言葉を続ける。



「もちろん、純粋に憂いて英雄候補の兵を挙げた国が大半だ。あくまで一部の悪辣な連中……今後そういうことの無いよう理事国の人間として精一杯努める」


「お、俺に頭を下げないでくださいバルマンテ公、公爵の思いは伝わっていますから」



 ホント、デキたお方だよバルマンテ公。



「世界平和より世界を牛耳ることを第一に考えてたなら、こんな常識知らずな連中を派遣しませんよ……俺だったらもうちょっと常識を教えたり手綱を握れるようにします」



 俺の正直な意見にリグリーらはむくれ、バルマンテ公は朗らかに笑ってくれた。



「はっはっは。常識はともかく実力は折り紙付きの人選だからな。お互いがお互いをフォローしてくれたらと期待を込めて送り出したメンバーだ」


「結局機能せずウィル頼みになっちゃったけどね」



 パウムの一言にバルマンテ公もフランキッシュも同意する。



「そうだな、ウィル君のおかげといっても過言ではない」


「ウィル様のおかげで我が国は理事国に、もうウィル様が理事長でいいんじゃないでしょうか」



 いや待ってくれ、フランキッシュのは過言だ。


 そんな俺にツッコミを入れる間も与えずグレンが背中を叩いてきた。



「むよくの勝利って奴だなウィル! ところで「むよく」って何だ? 日光浴みたいなものか?」


「そうそう」



 適当に相づちを打つなパウム、グレンがまた変なことを覚えるでしょうが。



「ま、バチバチに理事国の座を争っていた連中からしたら腹立たしいでしょうけど、ウチみたいな中立国が収まって安堵しているトコも少なくないし結果オーライだと思うわ。バルマンテ公、そろそろ本題に」



 上手く情勢話をまとめたリグリーは本筋に話を戻すよう公爵に進言した。



「あぁ、すまない。そんなわけでだ、世界各国から純粋な善意や発言力を高めるためなど様々な思惑で君たちのような「英雄候補」が「大地の災い」を鎮めるために挑んでいったのだ」


「怪盗ロブスはその中の一人……と。その可能性に至った経緯を教えていただけますか?」

すいません、バタバタしておりまして次回未定です

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