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深夜の山賊偵察(デート)②


 パウムは気配を察したらしく俺に注意を促した。


 が、思案するまもなく丘の下から後ろの茂みからゾロゾロと山賊連中が現れた。その数五……いや、十人か? 


 周到に囲まれたことにも、想像以上の予想を上回る大所帯に俺は舌打ちした。



「チィ、どういうことだ?」



 いぶかしがる俺に一人の山賊が前に出る、他の連中より装備品が良いことから察するにコイツが山賊の頭なのだろう……もちろん装備品の上下は揃っておらず山賊コーデの範疇から出ていない。ただただ高い物を身につけている下品な装備のそろえ方だ。


 困惑している俺たちに山賊の頭が下品な笑いをしながら話し出す。



「どんなヤツがいたかと思ったらカップルかよ、当てが外れたな」


「もう一回言って」



 パウムは例のコミュ症を発動させながらも謎の言葉を要求し始める、この発言に山賊の頭も手下も驚いている。もちろん俺も驚く、緊張感無いなこいつは。



「まぁいいや、最近キャラバンだの減ってきて暇だったんだよ」


「暇だから?」



 暇つぶしで商人でも何でもないカップルを襲うのかコイツらは? さらに奇妙な感覚が拭えない。


 そんな事を考えている俺に山賊は自慢したい子供のようにベラベラとひけらかす。



「いやいや、最近山賊にもスポンサーがついてな」


「スポンサーだって?」


「そうさ、何がしたいのか知らねぇけど俺らに悪さをしてくれって頼まれててよ。これみろ、こんなマジックアイテムまでくれるんだぜ」



 山賊の手には小降りの手鏡が握られていた。俺の記憶だとアレは――



「生命探知のアイテムだ」



 小声で俺に耳打ちするパウム。



「リグリーが高級品だって言っていたな」



 もちろんその言葉の後に「もちろんウチの家からしたら端金同然だし、私には魔法が使えるからただの見にくい手鏡よ」なんてご自慢付きだったが。


 そして、改めて周りを見回してみると山賊風情が手にするべきじゃない魔法系の高級武器が握りしめられている。


 普通の山賊だったら売り払えば即日足を洗えるほどの値打ち物だ……たぶん知らずに振るっているんだろうな、値段知ったら腰抜かすぞ。



「まったく色々と合点がいったよ」



 苦笑しながら、思わず俺はそう言葉を漏らしていた。


 大した物を持っていない旅の二人を襲うことも、こんな大所帯の山賊を維持できること、そして生命探知といった代物を持っていることをだ。


 しかし、新たな問題が浮かび上がった。



(そのスポンサーに何の利益が?)



 スポンサーという存在がいたとして山賊にこんな高級品を使わせる意図が見えない。


 そんな逡巡している俺に山賊たちは手にした武器を突きつけだした。



「なんでベラベラ喋ったかって? ここでお前らを殺すからだよ」


「もらった武器で試し斬りをさせてもらうぜ」


「へへへ、恨むんだったら世の中を平和にして俺たちを山賊に身を落とさせた四英雄でも恨むんだな」



 勝ち誇った下品な笑みが俺の周囲に響く……しかし俺の耳にはもう届いていなかった。



「俺の嫌いなものを知ってるか?」


「は? 急になんだよ?」


「テメエの境遇を他人のせいにして悪事を働く人間だよ。特に四英雄のせいにして文句を言う連中がな」



 俺の言葉にパウムが微笑んだ。



「偵察予定だったけど、やっちゃっていい?」


「やるしかないだろ……話が変わったからな」



 おびえるどころか談笑すら始めた俺たちに腹が立ったのか山賊の一人が切りかかる……が。



 ――チン



 剣が鞘に収まる音。


 そして切りかかった山賊の一人がそのまま地面に突っ伏し悶絶していた。


 山賊たちに動揺が走る。



「意識絶てなかった……フード邪魔……」



 そういいながら彼女が素顔を露わにすると山賊たちはさらに動揺した。



「ぱ、パウム!? 四英雄のパウムがなんでこんな所に!?」


「物まねしていたらご本人登場って感じ?」


「むしろ上司の陰口叩いてたらご本人が隣にいたって感じだろ」



 予期せぬ四英雄の登場に計画が狂ったのか一気に統率の崩れる山賊たち。まぁそうだろうな、ぶっちゃけこっちも予定が狂った。



「偵察だけだったけど……戦う羽目になりパウムも見られちゃうなんてな」



 そんな嘆息混じりで愚痴を言う俺に山賊の頭はねらいを絞ったようだ。



「こ、この御者を人質にするぞ!」


「パウムを運んできた御者扱いか……まぁ当たらずとも遠からずだよ」



 ナイフを手にする俺にパウムが驚く。



「いいの?」


「いいも何も、もうお前の顔見られた以上リグリーに頼んで記憶を改竄してもらうしかないだろ。出し惜しみはしていられない」


「何が出し惜しみだ! 御者の分際で!」



 ――チン



 先ほどのような小さな音色が辺りに響いた。


 次の瞬間武器を構えていた山賊は手を押さえうずくまる。



「い、イテテ! お、お前も……同じ居合いを!?」


「ぬかった! 同門の剣士か!?」



 ――チリッ



 驚愕しながら背後から切りかかる山賊、俺はその太刀筋を見ることなくよけてみせた。



「こ、こいつ見もしないで避けやがった……グフ!」



 隙を見せた瞬間パウムの胴払いが山賊の腹に吸い込まれる……鞘に収めたままで良かったな、抜き身だったら上半身と下半身がサヨナラしていたぞ。



「腕は鈍っていないようだね、私が直々に教えた居合い。ついでにフランキッシュから習った天啓も」


「ほとんど小振りの刃物でしかできないからほとんどダメージ与えられないんだよ、無駄口叩いていないでお前が頑張れ……ッ!?」



 倒された山賊の奥の方で俺を弓で狙っている奴がいた。

※次回は3/2の17時頃投稿します




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