私が天使と悪魔の子だった話
ピピピピ、ピピピピ、ピピ……ガッシャン
いつものように目覚まし時計を殴り目を覚ます。
毎朝起こしてくれてるのに殴られる。
目覚まし時計からしたらいい迷惑だ。
あー……学校行く準備しなきゃ……
しばらくボーッとしていたが徐々に覚醒していく。
そうだ、今日は私の誕生日だ!
いつもよりワクワクした気分で自分の部屋から出る。
洗面所で顔を洗った時、私は今日初めて目の前の鏡を見る。
顔はいつもと変わらない。
1つ歳をとったからといっても昨日今日で変わったら普通に怖い。
ただいつもと違うのが1つ。
「な、なにこれ?」
思わず口に出してしまう。
当たり前だ。こんなこと普通ありえない。
それこそファンタジーの話の中でしか……
鏡に映る私。
その背中には白い翼と蝙蝠のような黒い翼が一対ずつ、計4枚の翼が生えていた。
なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
叫びたい気持ちを頭の中で堪え、目を擦ってもう一度鏡を見る。
……しっかり見える。
振り向いて触ってみる。
……いい手触りです。とくにこの蝙蝠の翼、なんか触り心地癖になる。あとちゃんと触られてる感覚もあるし動かせる。
そこでさらに2つ、違うことに気づく。
1つは翼が生えている背中の下の方、お尻のちょっと上の方、そこから伸びる細長く黒い尻尾。先っぽの方はとんがっている。
私これ知ってる。
歯医者のポスターでよく見る虫歯菌に生えてるやつだ。
うわっ、なんかすごいやだ……
ちなみに尻尾も動かせる。
2つ目は頭から数センチ上、光る輪っかがある。
物体というよりも、光の輪って感じ。
これは動かせないし、触れなかった。
光る輪と白い翼、蝙蝠の翼に黒い尻尾。
……天使と悪魔かな?
厨二病の好きな設定を詰め込んだ見た目。
ううっ……これじゃあ学校に行けない。
ちょっと涙出てきたし……
鏡を背にしてうずくまる。
「瑠璃、母さんが準備まだかーって。早くしないと置いてくぞ……ってなにしてんの?」
「海……」
双子の弟の海が私の泣き顔を見てギョッとする。
「海、どうしよう……朝起きたらなんか変なの生えてるの……」
「変なの?……あー瑠璃もやっと生えたのか!いいなー羽根2種類じゃん。」
「……え?」
思いもしなかった海の言葉に困惑する。
「ほら、父さんと母さんのとこ行くぞ。あ、誕生日おめでとう。」
「あ、ありがとう。海も……おめでとう。」
海に手を引かれながらリビングに行く。
「父さん、母さん、瑠璃が羽根出した。」
「ちょっ、海!そんな急に言ったらお父さんとお母さんがびっくりするでしょ!」
もし私が親で自分の子供が急に変なもの生やしたと聞いたら絶対気絶する。
そんな私の考えとは逆に、
「おぉ、ついに生えたか!母さん、今日は赤飯だな!」
「あらー誕生日に生えるなんてめでたいわねー。そうね、今日はお赤飯にしましょう。」
「……どうゆうこと?」
私の疑問に海が答える。
「あれ、お前知らないのか?……まあ、父さんと母さんも俺も、ほとんどこの姿だし仕方ないか。父さんと母さんは人間じゃないんだよ。父さんが天使で母さんが悪魔なんだ。んで、俺とお前は天使と悪魔のハーフってことだ。」
「そうよーちょっと待ってね、見せてあげるから。」
そう言うとお母さんとお父さんは何かを呟く。
するとお母さんの背中から蝙蝠のような翼2対と尻尾、頭からは2本の羊のようなクルクルした角が生え、お父さんの背中からは天使の翼2対と輪っかが現れた。
ちらりと海を見る。
海の背中からもお母さんと同じ蝙蝠のような翼2対と尻尾と角が生えていた。
角はお母さんのとは違い、うねった感じの角が上に向かって生えてる。
「うそぉぉ……もしかして、夢?」
「諦めろ、現実だ。」
海の言葉にガックリと項垂れる。
「ちなみに海が羽根を生やしたのは小学生六年の時だ。」
お父さんが何故か誇らしげに言う。
「いやー、あの時はマジでびびったわ。帰り道にいきなり生えて、慌てて家に帰ったんだよ。」
「あの時は面白かったわねー、海ったらすごい笑顔で帰って来たのよ。これで僕も空を飛べるんだーってね。」
「そうそう。実際、俺が飛べるようになるまで1年くらいかかったけどな。」
そう言って海が翼を動かす。
おぉ……浮いてる
私も練習したら飛べるかな?
「海が俺の翼を受け継がなかったのはちょっと悲しかったが瑠璃が受け継いでくれて、父さん嬉しいぞー」
「そうねー。しかも私と同じ羽根まで生やしてくれて母さんも嬉しいわー。」
「いいよなー。俺も瑠璃みたいに両方の羽根が良かったなー。」
のほほんとする両親と少し文句を言う弟。
傍から見れば普通の家族団欒の風景。
頭や背中から角や翼、尻尾を生やしてなければ……
「ちょっと待って……もしかしなくても知らなかったの私だけ?」
「「「うん」」」
3人の言葉がハモる。
夢なら覚めて欲しい……でもこれは残念なことに現実だ。
そういえばお父さんとお母さん、本当なら2人とも50歳くらいなのに未だに20代に見える。
もしかして歳取らないのかな?
気になるなー。聞いたら教えてくれるかな?
「……それは置いといて、」
お母さん、それ置いといちゃダメなやつ……
「2人とも時間大丈夫?」
「「あ……」」
忘れてた、時計を見ると7時50分。
遅くても8時までにはでないと。
「お、お母さん、これどうしよう……」
「大丈夫よー、瑠璃が自分でしまえるようになるまで私の術で見えなくしとくから。はいっ」
翼と尻尾と輪っかを見えなくしてもらい慌てて部屋に行き制服に着替える。
不思議なことにこの翼は服をすり抜けるみたいだ。
おかげで制服に穴を開けずにすむ。
荷物を持って玄関に行く。
「おまたせ、海」
「おう。」
「「行ってきます!」」
そう言って外に出る。
走らなくても何とか学校には間に合いそうだ。
***
2人が家を出たあと、
「なあ、母さん」
「何かしら、あなた?」
「お前が瑠璃にかけた術って瑠璃と両思いのやつにだけ見えるやつだよな?」
「うふふ、バレちゃった?あの子もそろそろ恋してもいい年頃でしょう?だから気になっちゃって。」
「全く、もし瑠璃と両思いのやつがいたらどうするんだ。」
「それはそれで面白いじゃない。」
「……まあな。でも瑠璃はまだ嫁にはやらん。」
「うふふ、いつまでたっても親バカねー」
***
「ねえ海、」
「なんだ?」
「もしかしてお父さんとお母さんって歳とらないの?あと私達も。」
「あの2人の話からして既に数百年は生きてるんじゃないかな。見た目に関しては幻術で気にならないようにしてるみたいだけど、俺らには効かないし、人間じゃないから寿命もないと思う。」
「へ、へぇ〜……。あとさ、私も練習したら海みたいに飛べるかな?」
「時間はかかるけど飛べるんじゃないかな。今度教えてやるよ。」
「いいの!?ありがとう、海!」
初めは訳の分からないことばかりで驚いたりして泣いたけど、気づいたら飛べることにワクワクしてる自分がいる。
私って結構図太いのかなー。
「そうだ、瑠璃。お前、今好きなやついるか?もちろん恋愛的な意味で。」
「ふぇっ……な、なんでそんな事聞くの!?」
「いや、なんとなく姉の恋愛事情が気になってさ。」
「ま、まあ、気になってる人はいるけど……ってそんな事より海はどうなの?私に聞いてきたんだから教えてよ!海の噂、私のクラスまで届いてるんだから。」
「それを言うなら瑠璃だって……いや、まあ俺はいないかな。それより一応その気になってるやつに気をつけとけよ。多分母さんがお前にかけた術……」
「るーちゃん、かっちゃん、おっはよー!ついでに誕生日おめでとー!」
「うわっびっくりしたー。ありがとう朱里。」
「朝から元気だなー朱里は。お祝いありがとな。」
海の言葉が突然の乱入者によって遮られた。
乱入者の正体は幼なじみの沢田朱里だ。
「どーいたしまして。おぉ…今日もるーちゃんはいい匂いですねー。くんかくんか……」
「ちょっ朱里!毎朝私の匂いを嗅がないで!」
私の匂いを嗅ごうとする朱里を離して海の方と向き合う。
「それで何言いかけてたの?」
「いや、やっぱいいや。あ、俺あっち行くから。じゃーまた放課後な。」
そう言い残し海は友達の方に駆けて行く。
「行っちゃった……なんだったんだろう?」
「相変わらず仲良いねー。仲良すぎて朱里ちゃん妬けちゃうぞー!」
「そうかな?」
「うん、だって登下校一緒に帰る兄弟なんてそんないないじゃん。私がるーちゃんと遊ぶ約束した時、かなりの確率でかっちゃんもついてくるし。楽しいからいいんだけどねー。」
「んー、やっぱずっと一緒だし弟として心配なんじゃない?」
「かっちゃん、るーちゃんのことに関しては過保護だもんねー。全く、2人に挟まれる私の気持ちも考えて欲しいよ。」
「なんで?」
「……まあこの鈍感なとこがまた可愛いんだけどね!」
親指を立ててグッドマークを向ける朱里。
よく分からないけど、褒めてないよね。それ。
***
突然だがこの高校の1年には、絶世のイケメンと美女がいる。
イケメンの名前は、美濃 海、美女の方が美濃 瑠璃。
お察しの通り2人は双子だ。
スポーツ万能、成績優秀、おまけに性格も良い。
非の打ち所がない双子コンビだ。
2人ともめちゃくちゃモテる。
この学校の学生の半分以上ががどちらかのファンクラブに入ってると言っても過言じゃない。
まあ、僕は入ってないし入るつもりはないんだけど。
でも正直、美濃さんのことはかなり好きだ。
この学校を受験した時、筆箱を忘れてあたふたしてたら、隣りの席にいた美濃さんが僕にシャーペンを貸してくれた。
その時は、すごい美人だなー位にしか思ってなかった。
「あ、ありがとうございます。」
「うん、困った時はお互い様。一緒に合格しようね!」
そう言ってニコッと笑った美濃さんの顔。
周りから見れば、えっ?それだけ?レベルの会話。
でも僕はそれがきっかけで美濃さんのことが好きになってしまった。
無事合格し入学した時、まさかの同じクラスで気分は最高だった。
でも美人な美濃さんはすぐに人気者になり、簡単に話しかけれなくなってしまった。
既に何人も美濃さんに告白して振られている。
だから美濃さんにはもう心に決めた人がいるっていう噂だ。
こんな特に秀でた部分がない僕が、美濃さんに告白したってかないっこない……
はあ……
思わずため息が出る。
やだなー美濃さんが誰かと付き合ったら……
朝からネガティブ思考になりながら廊下を歩く。
ドンッ
突然誰かが僕にぶつかり、その衝撃で転ぶ。
「いってぇ……」
「おっと、ごめんな。周りちゃんと見てなかった。怪我とかしてないか?」
そう言ってきたのは、美濃海だった。
「大丈夫。僕もよく見てなかったし。」
差し出された手を握り立ち上がる。
「そうか、それなら良かった。じゃーな」
そう言って美濃海は一緒に歩いてた人達と歩いて行く。
「かいくーん!おはよぉー」
「おー、おはよ」
「「「キャー!!」」」
遠くで女子の歓声が聞こえる。
人気だなーあいつ。
羨ましい……
そのまま教室に入り、自分の机に行く。
「おはよー、陽太」
「おはよー」
俺が席に座るとすぐに友達の天海 空が話しかけてくる。
「なあなあ、聞いたか?今日美濃兄弟の誕生日だって。俺瑠璃ちゃんにおめでとうとか言っちゃおうかなー、ついでにチューとかしちゃったりして。」
「……お前のそういうとこ、ほんと尊敬するわ。あと突然のキスはやめとけ。普通に怖い。」
「なんだよ、つれないなー。そういうお前はしたくないのかよ。チュー。」
「そりゃあ……したいよ」
「「ムッツリ」」
うん。今のはちょっとイラッときた。
あとなんか増えてるし。
増えたのは、飯島 拓真で僕の数少ない友達の内の1人だ。
「なんだよ拓真ーお前いつからいたの?」
空に聞かれて拓真が考え込む。
「…………お前が美濃さんにチューしたいとか言ってる時。あれは正直俺も引く……」
ほぼ始めの方じゃねぇかよ。
「でもさー、そりゃあしたいでしょ。だって学校一の美人だし!お、噂をすれば」
空の目線の方に目を向けると、沢田さんと美濃さんが教室に入ってきた。
今日も相変わらず美人だ。
でもなんだろうあれ。
美濃さんの背中から白い翼と蝙蝠みたいな翼が生えてる……それに尻尾と頭の上に輪っかが見える。
天使と悪魔?
目を擦ってもう一度見る。
やっぱり見える。
あの厨二病の夢を詰め込んだような姿は一体……
呆然とする僕に気づかずに空が美濃さんに話しかける。
「瑠璃ちゃんおはよー!誕生日おめでとう。プレゼントに俺のチューはいかが?」
あいつすげぇ……
「天海くん、お祝いありがとう。プレゼントは遠慮しとこうかなー。それにチューは誰にでもしない方がいいよ。」
「ちぇー、振られちゃったー」
空のタチの悪い冗談を笑顔で受け流す美濃さん。
みんなの反応からして見えてるのは僕だけなのか?
幻覚なのか……?
でもあの羽根、動く度に風がくるんだよな……
その時、パチッと美濃さんと目が合った。
試しに周りに気づかれないように後ろの羽根や輪っか、尻尾のジェスチャーをしてみる。
すると美濃さんの顔が明らかに慌てた顔になった。
やっぱりあれ実在してるよな。
しかも美濃さんは見えてるっぽいし。
美濃さんは、僕に近づき、
「ねえ、もしかして……」
「おい、朝礼始まるからお前ら席に座れー」
教室に担任が入ってきて美濃さんの言葉が止まる。
「……後で話したいことあるから昼休みに屋上に来てくれる?」
「わ、わかった」
僕がそう言うと、美濃さんは自分の席に戻って行った。
心なしかいつもより浅く座っている気がする。
羽根が当たるのかな?
突然のことに驚くが、同時に好きな子との会話のきっかけができたことを嬉しく思う。
美濃さんには悪いけど、昼休みが楽しみだ。
最後までお読みいただき、ありがとうございます(* . .)))ペコッ
評価や感想を書いてくれると嬉しいです!
気が向いたら長編にしたい……




