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棄民の園  作者: 霧継はいいろ
闘争都市編
42/44

第三十七話 学術機関:ノーヴ・ディミリ

登場人物概要

アーデン・クロイツ :主人公。黒髪と赤毛の大剣使い。エルンに危害が加わるとガチギレするシスコン

エルン・ラフレシア :ヒロイン(仮)。銀髪のフィジカル最つよ少女

ソーン・マンジュ:動物と会話できる不思議眼鏡お兄さん。割と不憫

ヘウルア・アンネローズ:聖女。加護おばけ

アラン・ロータス:テロリスト集団に属しているショタ。闇使い。割とサイコパス

ピスチルの繁華街では多くの人達でにぎわっている。あるものは人ごみの中を縫うように足早に抜けていき、あるものは知人と談笑し、そしてあるものは店員との値引き交渉に燃えている。


人口密集地である四大都市にあってはごく当たり前な風景だが、このごく当たり前に映される日常風景に、ソーンは疑問と幾らかの不満をくすぶらせていた。




「あんまり目立たない方がいいよお兄さん」




ソーンの前を歩くアランは何かに気づいたように振り返ると、フードのつばを抑えて後ろ向きで歩きながらソーンを見る。




「目立つようなことはしていませんが」




アランの忠告に不本意とばかりにソーンが返すと、アランは苦笑いを浮かべる。




「そんな風に怖い顔で歩いてたらイヤでも目立つよ。言っておくけど、ピスチルの人は結構短気が多いからね?」




そういわれたところでソーンの眉間に寄ったしわが取れるわけではない。


「イコン」という組織がこのピスチルの中枢とつながっているというのは、アランが彼の家でソーンに話した。


つまりピスチルは南部の都市群にテロ活動を仕掛けている。だというのに、当の市民たちが平穏な日常を送っているのでは、つり合いが取れていないというものだ。




「情報封鎖は上役の常套手段ですが、無知であるということは免罪符にはなりません」


「では魔物で町があふれれば、それで均衡が取れますね」




物騒な物言いにソーンが後ろを振り向くと白いコートでフードを深くかぶったエクスが顔の色一つ変えずに振り向いたソーンを見返す。見れば見るほどにエルンにそっくりなエクスだが、心の芯まで氷漬けで相手をしているソーンはコートを羽織っているにも関わらず次第に鳥肌がたっていく。




「新型のチェックは確かにまだだけど、それは流石に領主様に怒られちゃうな~」




昇り調子の繁華街でソーンは一人、段々と下へ下へと下っていっている気分だった。





***





繁華街を抜けると丈のある建物が建ち並ぶ区画に出る。


中央に聳そびえ立つ最も高い建物はピスチルの象徴である学術機関ノーヴ・ディミリ、そしてそれを囲むように多くの教育機関、研究機関が併設され、行き交う人々にも白衣や正装に身を包んでいる。




三人がノーヴ・ディミリの入り口を通ろうとした際、警備らしき人物が三人を静止する。




「ロータス。許可のないやつを入れるときは事前に通達しろと、前にも言っただろう」


「えへっ! でもおじさん、前にもなんだかんだ言って通してくれたじゃん?今回もどうにかなんない?」




アランは腕組をしながら彼を見下ろす警備の男に、頭を掻きながら笑顔で答える。


警備は大きく溜息をつく。




「で。前と同じのか?」


「いや?普通だけど、見せたいものがあるから連れてきた」




アランの返答に、警備はまた一段と大きく溜息をついた。




「お前なあ~!ここがアテナ一の最重要機密のオンパレードだって理解してるか?わけわからん理由でよそ者をほいほい入れるわけないだろ!」




「いや~。流石に一番はここじゃなくてアノーズ・アニュエルでしょ。ここのは玉石混合だし。


じゃあ、スカウトしたい優秀な研究員が見つかったからにしといて」




それだけ言うと、アランはソーンを引っ張って中へと入っていく。


後ろから「面倒事起こすんじゃないぞー」という声が聞こえてくるが、黙々と進むアランには当然のように聞こえていなかった。





***


三人はノーヴ・ディミリの内部を進んでいく。時折職員がすれ違いざまにアランに挨拶を送り、それにアランは笑顔で応対する。そしてその誰もが、彼をロータスさんと敬称で呼ぶのだ。




「あなた。本当にここの職員だったんですね」


「あれ?信じてなかった?これでも僕、エリート中のエリートなんだよ?」




「だったらなぜあんなことを…」





ソーンがそれを聞くと、アランはソーンを引っ張るをやめて立ち止まる。




「お兄さん、繁華街にいた連中にキレてただろ?自分たちの都市がテロ活動してるのにって…」




ソーンは戸惑うように、しかし続く言葉をなんとなく察して冷や汗を流す。




「僕も同じだよ。他人の幸せを踏み任じる連中が幸せに暮らしてるなんて、心底反吐が出る」




少年が放っていい殺気ではない。彼が何か大きなひずみを抱えている。その何かが彼を普通の少年をこの狂気に落としてしまったのだ。






「着いたよ」




下を向いて歩いていたソーンは、視界にアランの踵が映ると驚いて立ち止まる。


アランは自分の研究室の扉を開けると、そこには試験管に小分けにされた黒い液体が机にずらりとならんでいた。


ソーンはそれらに顔を近づけるとそれはただの液体ではなく、流動し、脈を打っているように見える。


どう見てもただの液体ではないそれから顔を話すとソーンはアランに目を向ける。




「あのアラン…これは。魔物…?ですか?」


「いや、悪魔」


「はあ???!」




ソーンはガラでもなく大声を上げる。悪魔とは人間と同等の知性を有する魔物だ。負の感情によって生成され、多くは元となった人間の形をとっている。





「まあ、正確には悪魔の一部だけどね。じゃあここで問題。じゃじゃん!


 悪魔は人間の感情がベースになってできます。悪魔が魔物を統率できるのは、人間の高度な知能を引き継いでいるから。それでは、神の因子を持った英雄や異端がベースになった場合、どうなるでしょー--か!」





アランは道化師のようにノリノリで問題をソーンにぶつける。




「…少し信じ硬いですが。因子の特性を引き継ぐということでしょうか?」


「うー----ん!正解!」




ソーンの解答に、アランはVサインを返した。




「でもって、異端の臓器を凡人に移植したら、凡人が能力を発現したって話はしたろ?じゃあ、これは何のために使われてると思う?」


「…人間に悪魔の臓器を移植して、能力の発現のために使うため?」


「ピンポンピンポンピンポン!!!」




アランは細かい拍手を繰り返してソーンの解答をたたえる。




「まあ、そんなにうまいことはいかなかったんだけどね?人間に悪魔の臓器ってそもそも親和性が悪くて、同じように臓器を丸々移植した実験体は、炭みたいに黒くなって死んじゃったんだよね~。だから人間でも摂取しやすいように薄めて、一時的に能力が使える程度の代物にしかならなかったんだけど、それでもほしい人は欲しがる技術だよね。本物を使うより安上がりで量産もできるわけだし?」




アランは試験管を軽く振りながら中の様子を見る。中には血管のようなものが揺らめいている。


それをソーンは気味悪がって眺めるがアランの言葉が引っ掛かかり、そのことをアランに告げる。




「量産ができると言いましたが、まさか異端の方を監禁して、ストレス状態のまま放置しているとかですか?先ほど言っていた異端の救済理念と真っ向から反する行いですが…」




アランはソーンの問いに聞くと、首を横に振ってソーンの後ろを指さす。




「そんなことはしてないよ。移植の時だって、ドナーはちゃんと死んだ人を選んでるし、正義を語る以上はそこはしっかりしなきゃ。


この試験管の中身を作ってるのは、君の後ろにあるそれだよ」




ソーンは用心深く後ろを振り返る。しかし、目の前の光景を目にした途端、不意にソーンの両瞼から涙があふれだした。




ソーンはそのままひきつけられるようにそのおおきな水槽に近寄りガラスに手を添える。中の黒い靄は答えるように、ガラスの反対側からソーンと手の平を合わせる。




「…連れてきてよかった。やっぱり君には、彼女の声が聞こえるんだね」




それを満足気に眺めていたアランはポケットから耳飾りを取り出す。


アランはそれを右耳につけると、軽くたたいてそれを起動させた。




「あ、もしもし。お久しぶりです。ええ。例のキメラについてなんですが…ええ。予想よりも早くできそうです。…そうですね。ではまた」





アランが通話を切ると同時に、水槽のガラスに亀裂が入る。


亀裂はミシミシと音をたてて広がり、破裂音とともに、水しぶきと何かが、研究室を覆いつくした。




面白かったらまた見てください!


コメントをもらえると泣いて喜びます。

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