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棄民の園  作者: 霧継はいいろ
闘争都市編
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第二十五話 望まぬ再会



教会の自室でセプトラはジオラマ越しに戦況を見守る。各場所に出現したヤウスを数人の騎士達が取り囲む。しかし、魔物としても特異な硬度を持つヤウスにダメージを与えられずにどんどんと影の侵食範囲を広げられてしまっている。




「この様子じゃ平隊員じゃ頭数に入らないわね。ユーリサス隊長。貴方から見てあの魔物を倒せる隊員はうちの騎士隊には何人いるのかしら?」


「単独では1人、分隊レベルで考えれば4隊は可能ではないかと」


「9つ分隊に160人も隊員がいるのに単独撃破は1人だけなのね。今みたいな事態が頻発するなら不安になる戦力だわ。そのひとりを北西に送って頂戴。南2つはクロエがなんとかするらしいから。ってこれは…。」




ジオラマ上で南西方向に向かって進む大型の鳥が一羽。ピーターの写身はその体躯で堂々と空を駆ける。背中にはエルンとリリア、足にはアーデンが掴まっている。ヤウスを相手にしていた騎士達は飛来した写身に警戒を強める。




「みんな、空から新手が来るぞ!」


「クソッ!こいつだけでも厄介だっていうのに」


「このままだと挟み撃ちにあうぞ、魔物から距離を取って戦うんだ!」




ヤウスを取り囲んでいた騎士達は写身を警戒してヤウスや写身から距離を取る。




「…凄く警戒されてますね。私達」




写身に剣を向ける騎士達をエルンは残念そうに見つめる。




「それはそうでしょう。魔物のことを仲間だと認識している騎士なんていないわよ」


「まあ、魔物と騎士達がはなれてるのはこっちにとっては好都合だろ。混戦だと俺とコイツはやりづらい。おいピーター初撃、頼むぞ」




写身は鳴き声を上げると、ヤウスの周りが歪なほどにに歪む。しかし、衝撃波は硬い表皮に阻まれ、攻撃を受けたヤウスは写身に向かってツルを伸ばす。すると写身は鳴き声を替え、伸ばされたツルと脚に向かって音波を放つ。音波が硬い表皮に伝わると、内側で乱反射と増幅を繰り返しヤウスの表皮の至るところに亀裂が入っていく。アーデンが全身の亀裂に向って火球を放つと炎は亀裂を通って内部に浸透し、内側からヤウスの体を焼いていった。




「そーれ!」




体の支えを失ったヤウスにエルンは器に向ってハンマーを振り下ろす、内部構造を破壊されたヤウスが衝撃に耐えられるはずもなくそのまま横に倒れると器に満ちていた闇が、まるでバケツをひっくり返したように地面に溢れ出す。その様子にエルンは「あっ…」とだけ言葉を漏らし顔を蒼くする。


アーデンはヤウスの器の口に飛び降りると、炎の刃で溢れ出た闇と器の内側を薙ぎ払う。


倒れ込んだヤウスをリリアが鎖で縛り上げる。鎖の接した部分からヤウスの体が焦げ付いていき、始めはのたうち回って抵抗していたヤウスは次第に静かになっていった。




「お前達は一体…」




魔物とそれに乗ってきた人間達が魔物を攻撃するという事態に騎士達はただ呆然と立ち尽くす。




「カミリア様の指令で加勢に来たわ。南西部に出現した魔物っていうのはこれ一体でいいのかしら」


「…上にいるあれを除けばこいつだけだ」


「上にいるのは気にしなくていいわ。あれは…」




言いながらリリアは写身の方へ振り返ると、空中で制御を失い地面へと墜落する写身が目に映る。苦しそうに地面でもがく写身は次第に体が縮んでいく。それと同時に写身に隠れて見えていなかった人影が写身の背後に現れた。アランは写身を手のひらサイズの球体にまとめると動かなくなったヤウスに目を向ける。ピーターの写身だった物から棒状に闇を伸ばすが、ヤウスと接触するまえに、アーデンが炎を纏った斬撃でそれを両断する。




「これじゃあ、回収は無理そうかな」


「お前、レーシンで会った…」


「おっ!お兄さん僕のこと覚えてたんだね。久しぶり!」


「お前、イコンのメンバーだったのか」


「うん。でも勘違いしないでね?僕は南北の街道を封鎖しただけで壁内には関わってないから」




アランは刺すような殺意を感じると闇で自身の側面に壁を生成する。直後壁からドスッっという音が連鎖的に響いた。アランが音の方を向くと、鋭い目つきでアランを睨むリリアの姿が目に入る。




「そんなに怒らないでよお姉さん。さっきも言ったけど、レーシンの崩壊と僕は直接的には関係ないって」




殺意を向けられているにも関わらず、アランはへらへらとリリアに笑みを返す。




「レーシンにも騎士や衛士は当然いたわ。でも連日町の内外で湧く魔物達の処理に追われていた。あの時は境界面に闇が張り付いていたから、魔物が生成されやすいポイントが内部にもできているんだと思っていたけど、あなたみたいに加護の領域内に魔物を運べる存在がいるなら話はもっと単純なのよ」


「魔物を町の内部に持ってきたのが仮に僕だったとしても、町を覆っていた闇も町を襲った魔物達も最終的には住民たちの負の感情が原因でしょ。不幸な未来を想像してしまったみんなの責任だよね」


「戯言を!」




壁にめり込んだ鎖は光を放ちながら闇の壁を貫通しアランを囲むように伸びる。




「おっと」




アランは自身のまわりを闇で囲い込む。アーデンが闇を切り裂こうとアランに近づくと、聞き覚えのある鳥の鳴き声が響き、アーデンの眼前とリリアのいる空間が球状に歪む。




「リリア!」




エルンはリリアに飛びこむと彼女を衝撃波の外まで押し倒す。三人がアランの位置に目をやると、そこには目的を失って落下する鎖と掠れた闇の残滓がただただ景色の中に溶けていった。



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