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6話 ヒロイン登場

「えっ?ジムへの道が現在工事中?」



ある日、讃良の運転する車でジムに移動していると、ジムに続く道が封鎖されているのが見えた。


封鎖された道の向こうからは煩い工事音が忙しなく響いている。


「車ではジムに直接行けませんが、商店街を経由する道なら徒歩で直接ジムへ向かえるようです」


「そのようですわね」


と、言う訳で、私は使用人を連れて徒歩でジムに向かう事になった。



本当は全力疾走してジムに向かいたかったのだが、讃良がいる為仕方なくゆっくり歩く羽目になった。ああ、走りたいなぁ……





「あっ、あれは……」


私が讃良と一緒にジムへの道をゆっくり歩いていると、真里模さんと使用人を連れた西斗さんが歩いている姿が見えた。


「真里模さん、西斗さん、ごきげんよう」


「皆さん、こんにちは」


「あっ、セレスちゃんと讃良さん!こんにちはッス!!」


「奇遇だな。ジムへの道は此処しか無いとはいえ、まさか道中でセレスとも会えるとは思わなかった」


「紫苑様、讃良様、こんにちは」


2人だけでなく、西斗さんの使用人である男性、西園さいおんさんも私に笑顔で挨拶してくれた。



折角皆んなとも会ったので、合流した皆んなと一緒にジムへ向かう事になった。



だが、商店街を歩いていると……



「あっ!駄菓子屋さんッス!ちょっと覗いてきていいスか!?」


「大丈夫ですわ」


「まだ時間もあるから大丈夫だ」



数分後……



「あっ!おもちゃ屋さんッス!ちょっと覗いてきていいスか!?」


「大丈夫ですわ」


「ああ、まだ時間は大丈夫だが……」



更に数分後……



「あっ!最新号の『月刊ボロボロコミック』が出てるッス!これ買って来ていいスか!?」


「大丈夫ですわ」


「真里模、寄り道し過ぎではないか?」


なんやかんやで商店街の誘惑に何度も誘われつつ(主に真里模が)、ようやく商店街を抜けたのだった……



まあ、此処から先はあまり目ぼしい店は無いし、直ぐにジムに到着出来るだろう。




しかし、抜けた先の道に見えたのは……




「や、やめてよぉ……」


「や、やめてよぉ〜だって!あはははは!」


「やめねぇよ!だってお前達が先にぶつかってきたんだろ?」


「此処を通してほしかったら『いりょうひ』と『つうこうりょう』払えよ!!」



上級生と思われる児童3人が、自分よりも小さな少年少女の2人に絡んでいる姿があった。


いじめられている少女は茶髪ロングに茶色の目の可愛らしい子、その隣で少女をかばう少年は赤髪に赤い目をした派手な子だ。


少年の顔をよく見ると、左頬が赤く腫れていた。


「やめろ!これ以上俺達に手を出したら痛い目に遭うぞ!」


「え〜?たった1人で何が出来るんでちゅか〜?」


「からかうな!」


「からかうなだと?お前、年上に対して随分と生意気な態度取りやがるな」



うわぁ……年下相手に大人気ない……




……ん?この光景、あの2人、何だか見覚えが……




(あっ!あの2人はまさか!!)




『桃色スプリング』のヒロイン、早乙女子良さおとめしよとその彼氏候補の1人、炎寺輝えんじあきら!?



しかもこの光景、とある恋愛イベントで流れる回想シーンと全く同じだ!?


(確かこの後、いじめっ子達の蛮行にキレてしまった炎寺輝が超能力でいじめっ子に攻撃してしまうんだ……!)




出来れば私は関わり合いになりたくは無い。だが、このまま放置する訳にもいかない。




「(……こうなったら、やるしか無いか)」




「真里模さん、その雑誌貸してくださる?」


「いいッスよ!はい!」


私の突拍子もない言葉に対し、真里模さんは何も疑う事無くあっさりと少年雑誌を手渡してくれた。


「ありがとうございます。この雑誌は後で弁償いたしますわ」


「分かったッス!」


(真里模さん、素直過ぎる……)


私は少年雑誌から付録を抜き取って真里模さんに渡すと、雑誌を両手に抱えて幼い2人をいじめる少年達に近付いた。




「ん?何だお前」


「もしかしてお前もケンカしてぇの?」


いじめられていた2人と、いじめていた3人が私の方を見る。


「…………」


私は無言のまま少年雑誌をいじめっ子達に差し出した。


「あっ、それってボロボロの今月号じゃん!」


「へぇ〜、それ俺達にくれるんだ。サンキュー」


いじめっ子のリーダーと思しき人物が私の持つ雑誌に手を伸ばしてきた所を見計らい、私は



ポイッ!



雑誌を真上に思い切り放り投げた。



「えっ!?」


突然空中に投げ出された雑誌を驚愕の表情で見つめるいじめっ子達、そんな中私は宙に舞う雑誌に向けてそっと脚を構えた。



(ごめんね、少年雑誌……!)




ズ ド ン ! !




「ひっ!?」



トゥーキックが分厚い少年雑誌のど真ん中に見事命中した。少年雑誌の残骸は私の足にぶら下がったまま力無く揺れている。



「今しがた、喧嘩をするのかと伺いました?」



ビクッ!!



「私と全力で相手をして下さるのであれば、私も喜んで喧嘩に参加致しますわ」



「「「う……うゎああああああああ!!!!」」」



「逃げろ!!化け物に殺されるぞ!!」


「死にたくなーーい!!!」


「ママーーーー!!!」


私のキックを目の当たりにした悪ガキ3人組はいじめていた2人には目もくれず、あっという間にこの場から走り去った。


「これでもう大丈夫ですわ。貴方達、怪我は無くて?」


「凄いキック……!あっ、はい!私は大丈夫です!」


「俺も大丈夫だよ。あの……助けてくれてありがとう!」



いじめっ子達が去った後、いじめられていた2人は穴が空いた雑誌を見て目を丸くしながら私に近付いて来た。



「どういたしまして、無事でなによりですわ」



(とりあえずここからはなるべく関わり過ぎないよう無難に対応しよう……)



「あの、俺達親とはぐれちゃったんだけど……交番が何処にあるのか分からなくて……」


「そうか。よし、それでは僕が道案内をしよう。皆は先にジムに向かってくれ。人数連れて交番に向かっても迷惑になりそうだからな」


「分かりました」


「了解ッス!!」


あんな風に言われたら私達は大人しくジムに向かうしかないじゃない……!と言うか案内を1人で引き受けてくれてありがとう……!素敵……!


「では行こうか」


「はい!」


「宜しくお願いします!」


西斗さんは迷子の2人を連れて、交番がある商店街へと歩き去った。




(よし、これでヒロインと彼氏候補にはもう会わない筈。良かった……!)






「セレス様。こちらは大人が2人も居るのですから、全員で仲裁しに行った方が無難に済んだのでは……?」


「あっ……」





数日後……





「あっ!あの時の凄いキックの方!!」


「なっ!?何で貴方達が此処に……!?」


何と、早乙女子良と炎寺輝がスーパーウルトラジムにやって来た……えっ!?何で!?



「私、あの時見た『凄いキック』ができるようになりたかったから、お父さんとお母さんに頼んでジムに通う事にしたんです!だけど、まさか本人に会えるなんて思わなかったです!」


嘘でしょ……!


「いつかあなたみたいにすごいキックが出来るようになりたいんです!頑張ります!!」


「そ、そう……それは光栄ですわ……」


そんな……まさか私のキックが原因でヒロインに急接近してしまうとは……!

死亡フラグさえ無ければ喜ばしい事なんだけどなぁ……


「で、隣の貴方は何故このジムに?」


「実は、聖零さんが『超能力を鍛えられるジムがある』って教えてくれたんだ!」



聖零西斗さーーーーん!?!?



「ああ、彼……炎寺輝は自身の超能力に悩まされていたようだからな。道案内が終わった後に俺が誘ったんだ」


そう言えば炎寺輝にはそんな設定があったね……西斗さん、相変わらず優しい方……


だけど、どうしよう……よりにもよって死亡フラグである2人が寄って来てしまった……!




……いや、確か炎寺輝から来るセレスのバッドエンドは『炎寺輝が仕留め損ねた魔物『ワイバーン』に殺される』やつだった筈!




つまり……今以上に鍛えて『ワイバーン』よりも強くなれば死なない!よし!大丈夫!何の問題も無い!




「(今日も頑張りますわーー!)」



私は心の中で改めて気合いを入れ直し、今日も全力でトレーニングに励んだのだった。

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