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第43話 翔ける流星

 

「ほぇぇ? 私が《ジェネレビオ》に乗るの?」

 アルルが思わず声を上げ、格納庫にいるいくつかの視線が集まる。

「だぁちょっ、声がでかい! あ、あぁ、あぁ! 《ジェネレビオ》の整備間に合うかなー!!」

 その視線を散らすべく、ストームは更に大きな声を張り上げる。突然叫び出した彼から急いで目を逸らし、関わりたくないといった素振りで皆は仕事に戻る。

「今はHERIの奴等もいるからコソコソ話そうな?」

「おけおけ。で、なんで私なの? 一応操縦は出来るけど、あの、あれ、大型なんちゃらは使えないよ多分」

「むしろ使えないからこそ適任なんだよ」

 ストームの言葉に、アルルは再び首を傾げる。すると彼は耳打ちする。

「ソーンちゃんからのタレ込みで確信した。彼奴等は脳波を介してネクトの精神を支配してたんだ。大型無線誘導兵器とそれを扱う為のヘルメットとスーツ、あれに付いてた脳波増幅素材って奴がアンテナの役割をしてたんだろうな。まぁそこは俺の考察でしかないんだが」

「はぇー」

「うん微塵も理解してないね」

 この考察はシェイクやペイル、ダイゾウ達へ既に伝えている。彼女の仕事はそれを理解する事ではない。

「だからこっちも小細工しといた。ヘルメットとスーツには電波妨害する塗料引っ付けて、大型無線誘導兵器は出撃と同時にオートモードに切り替える。あとは……」

「なるほど、私がネクトちゃんの影武者になれば完璧! ごほん……任せて、声真似なら自信あるから」

「ま、喋んなきゃ良いだけなんだけど」

 ヘルメットとスーツはHERIの検査を通した後に仕掛けを施し、それらを着た状態でアルルが《ジェネレビオ》に乗り込めば準備は完了。

 不正も甚だしいが、先に無茶な要求を仕掛けてきたHERIに対し、ストーム含めM・Sのメンバーは引け目など感じていない。

「とにかくバレなきゃオッケーってことね。じゃあ早速 ──」

 作戦開始。そう息巻こうとしたアルルの言葉が止まる。


「あ、あれ……ネクトちゃん!?」


 そこにはしばらく姿を見せていなかったネクトの姿があった。

「いつの間に!? ていうか大丈夫なの!? みんな心配して……」

 駆け寄ろうとするアルル。だがそれをストームが制止する。

 黙ったままのネクトへ視線を向け、彼は言葉を紡ぎ始めるまで待つ。

「…………します」

 僅かに震えた唇。その言葉はストームが予想していたものだった。

「お願い、します…………《ジェネレビオ》に、乗せて下さい……」

「……やれるのか?」

 ネクトの様子は誰の目から見ても万全ではない。《ジェネレビオ》の操縦などもっての外だ。薄く開いた瞼に宿る光も弱々しい。

「やります……やらせて下さい」

 ストームの返答は、


「そうか、じゃあ頼んだ」

「えぇ!?」


 声を上げるアルルに構わず、ストームは自らのタブレット端末をネクトへ投げ渡す。

「それに作戦内容全部載ってるから、よろしく頼むわ」

「待ってよストームおじさん! ネクトちゃんは……」

 止めようとするアルルだったが、ネクトは小さく礼をし、去ってしまった。

「ズルが1個減るだけだ。心配すんなよ」

「むぅ……あとでグリム兄さんにしこたま叱られても知らないからね」

「もしかして俺、悪ガキみたいに思われてる?」

 頬を膨らませるアルル。だがストームはネクトの出撃を許した本当の理由は告げなかった。


(すげーなシェイク……預言者か?)




 コロニー建設予定地付近に近づくと、《アスカロン》のレーダーは複数の反応を捉える。

「デヴァウルの群体を探知しました!」

「また見た事ないタイプだな……」


 細長い胴体から4対のヒレを生やし、背中から花びらの様に鋭利な棘が咲き乱れている。鏡が並んだ様な複眼は緑色の光を放ち、牙が並んだ鋭い嘴をぽっかりと開けながら《アスカロン》やHERIの艦隊を睨んでいる。


「デカいやつの反応は無いが油断するなよ。後ろでチンタラしてるHERIの皆様の手を煩わせちゃ堪らんからな」

「待っ、ダイゾウさん今は通信が繋が ──」

『こちらは後方支援担当な筈ですが』

「ひぃっ!?」

 わざと聞こえる様な声で悪態を吐いたダイゾウへ、ドリアーズから呆れた声の通信が届く。挟まれたコムニの肩が震え上がる。

「違、これは」

「新型のテストも兼ねてるんだっけなぁ。それらしい機体が見えねえんだが、なるほど後方支援ってんなら納得だ。うちにゃもう優秀な後方支援担当がいるから引っ込んでて構わねぇぞ」

「んひぃ!?」

『新型機は到着が少し遅れています。それほど優秀ならば到着までに終わらせて貰って構いませんよ』

「あわわわわ……!」

 いよいよ震えが止まらなくなるコムニに対し、ダイゾウは笑ったまま通信を《アスカロン》の機体達へ繋ぐ。

「お前達聞いてたな? HERIの奴等はアテにしねぇで作戦通りやれよ」



「了解」

「んぁー、《ソニックスラスト》が直ってないのは予想外だったなー」

 ペイルは変わらず《ブラストハンド》へ搭乗しているが、アルルは《ソニックスラスト》ではなく《ストーク》に搭乗していた。

 前回の作戦で負った損傷は《ジェネレビオ》の整備に人員が割かれた事、そして修理資材の搬入が遅れた事が重なり、今回の作戦までに修理が間に合わなかったのだ。

「いつもの癖で前に出過ぎちゃったらごめんねペイルー」

「……お前、ブリーフィングファイル読んだんだろうな?」

「読みましたー! 冗談ですー!」

『ペイルさん、アルルさん、出撃許可が降りました! コールお願いします!』

 と、コムニからの通信が入る。2人はいつも通りの会話を一度打ち切り、発進準備を整える。


「ペイル・ストラングス、《ブラストハンド》、カタパルトアウト!」

「アルル・ストラングス、《ストーク》、カタパルトアーウト!」


 《ブラストハンド》と《ストーク》が同時に出撃。そのまま《ブラストハンド》は《ストーク》の上部へ接近、両膝から下を上部プラットフォームへ接続。一体となって宇宙を翔ける。

 2機の役目は、《ジェネレビオ》の殿だ。



『ストームさん、出撃許可が降りました!』

「あいよ」

 《ヴァレットボックス》はというと、左肩にレドーム、背部コンテナに誘導ミサイル、左手に誘導弾頭バズーカを携え、右肩にはその予備弾倉を懸架している。メンバーへの指示を円滑に行いつつ、同じく《ジェネレビオ》の援護を務める。


「リーダー代理頑張りますか。じゃ、ストーム、《ヴァレットボックス》、カタパルトアウト」


 出撃した《ヴァレットボックス》は《アスカロン》の側に付き、彼女の出撃を待つ。

(《ジェネレビオ》の出撃はHERIの新型が到着したタイミングだったか。そう何度も思い通りにはさせねぇぞ)



『シェイクさん、ソーンちゃん、出撃許可が降りました!』

「は、はい!」

「了解」


 そして、《オルドレイザー》は新たな装備を身に纏っていた。

 肩から腕の増加装甲へ伸びる動力ケーブル、肩にはビームガン、腕の装甲内には予備のビームブレイドが格納されている。腰部のスカートアーマーにはスラスターが増設され、サイドスカートにはメデオライフルを懸架。バックパックには《ストーク》に積まれている大型ブースターを改造したユニットが接続。

 そして右手にはメデオブレイドを内部に装填し、肉厚な実体刃も備えた大型剣の《メデオバスターブレイド》を握り締めている。


 高速戦闘、及び前線での一撃離脱と白兵戦に特化した兵装、《スターダストラッシュユニット》である。


「ネクト……大丈夫かな」

「大丈夫だ、彼奴なら……きっと」


 迷いを振り払う様に、シェイクは操縦桿を前に倒した。


「《オルドレイザー》、カタパルトアウト!」

「シェイクとソーンで、行きます!!」


 カタパルトから射出された《オルドレイザー》。バックパックのブースターに点火した瞬間、頭部へバイザーが覆い被さる。高速飛行に移る際の処理能力を補助する機構だ。


 瞬間、流れ星の様に飛翔した《オルドレイザー》が、デヴァウルの巣窟へ突貫した。



続く

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