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第29話 オペレーション・サテライトブレイク

 

「前方に目標の廃棄コロニー、及びデヴァウルを捕捉しました! 間も無く本艦は戦闘態勢へ移行します!」

 コムニがアナウンスすると同時に、艦体のシャッターが閉じ、モニターが通常時から戦闘時の仕様へと切り替わる。

「戦闘システム起動、各砲門展開! カタパルトの充電は!?」

『一応全部終わってる! 作戦通り4機を先に射出、後は甲板から出撃でいいな!?』

「あぁ! んで、なんだったか、サテライトなんたらの調整は!?」

『あと少し! すぐに終わらせて出すから先にやっとけ!』

「あー、まぁ、仕方ねえか……聞いたな、シェイク、ソーン?」

『了解』

『りょ、了解、です!』



 今回の作戦の概要。


 まずは遠距離から砲撃を重ね、デヴァウルの注意を惹きつける。その隙に機動力に長けたDCDが廃棄コロニーの接続機部へ爆弾を設置。完了と同時に起爆することでコロニーごと爆破、内部のデヴァウル本体が露出したところへ更に砲撃を叩き込み、鎮圧する事が狙いだ。

 爆弾の設置を務めるDCDは、アルルの《ソニックスラスト》と、グライの《ガルドミナス》。その殿を務めるDCDとして、グリムの《バインドホーク》とネクトの《ジェネレビオ》が選ばれた。


「援護は任せる」

「……了解」

 《ガルドミナス》と《ジェネレビオ》が変形、指定ポイントへと移動を開始する。


「アルル、無理はするな。俺の援護じゃ心許ないかもしれないが、焦らずに行動するんだ」

「うんうん! 援護期待してるよ、グリム兄さん!」

 《ソニックスラスト》と《バインドホーク》も同様にポイントへと向かう。

 先の一件でアルルのことを気に掛けたが故、直接グリムがバディを組んだのだが、話す様子からは不安は感じられない。

(俺の思い過ごしなら、いいんだが……)


 グリムは一度自身の思考を打ち切り、レーダーを注視する。全機が指定の場所へ到着したことを確認し、通信を繋いだ。


「オペレーション・サテライトブレイク、開始!」



 瞬間、《アスカロン》から一斉に砲火が放たれる。同時に、

「よっこいしょっと!!」

 ストームが駆る《ヴァレットボックス》からもそれに匹敵する弾幕が展開。《ヴァレットボックス》には普段の武装プラットフォームへ、更に機体を覆うほど巨大なプラットフォームユニットを接続。そこへ対艦ミサイルユニットや徹甲連装砲ユニット、対空防御機銃を接続している。

『こんなもん何処から持って来た?』

「ビーム兵器が世に普及してから実弾兵器の開発ラインが縮小傾向になってるのは知ってんだろ。俺みたいなロートルがある程度需要の足しになってるんだよ」

『単なる無駄遣いじゃないってことか』

「こいつじゃねぇと扱いづらい辺りは無駄ポイントかもな」

 《ヴァレットボックス》は4本の腕を巧みに用いて、大量のトリガーを使いこなしている。ある意味、このDCDの専用装備となっているのだ。


 廃棄コロニーへ降り注ぐ炎に対し、触手の動きが目に見えて活発化する。

 触手に亀裂が走り、内部から管の様な器官が伸長。細長いエネルギー弾を大量に撃ち返す。

「ここまでは作戦通りだな! ビーム撹乱幕展開! 砲撃の手は緩めるな!」

 それを見たダイゾウが指示を飛ばすと、それを聞いたレイツが流れる様にモニターを操作。瞬時に撹乱幕を射出する。

「フェン、坊主が言ってた奴は見えるか?」

『いいえ、影も形も。一応警戒はしておく』


 フェンが駆る《ライナルディン》は《ヴァレットボックス》の近くを漂う様に待機している。

 背中へ新たに装備したバックパック、今までそこへ背負っていた大盾を左手に、そして右手には新たな武器を携えている。耐ビーム塗料を塗布した実体剣、そしてその剣先にはライフルの銃口が備え付けられている。レイツが有り合わせの武器を組み合わせて設計した、ライフルブレードと呼ばれる兵装である。


 レイツとフェンには、予めシェイクがある話を通していた。


── 赤いデヴァウル……《レッドラファー》をマークしておいて欲しい。《オルドレイザー》は今回の作戦じゃ遊撃に回れない。奴の乱入に対応出来るのは……性能を見ても、《ライナルディン》が適任だと思う ──



 そして作戦も次の段階へ移る。


 《アスカロン》へとデヴァウルの注意が惹きつけられた事を確認し、爆弾を設置する部隊が廃棄コロニー内部へ潜入を開始。


 内部も同様に触手からの弾幕が襲い掛かるが、《ガルドミナス》は回避、《ジェネレビオ》はファイアスケイルで触手を撃墜。即席のコンビだが、連携力の低さを個の腕前でカバーし合う。

(十分だ、無理な連携はむしろ事故に繋がる……)

 その時、《ガルドミナス》の行方を塞ぐ様に触手が襲い来る。咄嗟にロングライフルを発射しようとした時、

「っ」

 降り注ぐ細い光条が触手を貫き、爆炎へと変える。すぐさま横へ回転回避し、炎から逃れる。

「すまない、助かった」

『余計なお世話かもしれないけど、一応』

 通信機から響く素っ気ない応答。こちらはこちらで気難しいとグライは小さく溜息を吐いた。

「……第一ポイント、到着」

 廃棄コロニーの基部へ、搭載していた小型の爆弾を射出。狙い通り付着した事を瞬時に見届け、足を止めないまま次のポイントへ移る。

「グリム、そっちは?」

『第一ポイントに着いた。こっちは問題ない』


 順調に作戦は進んでいる。そう思われた時だった。


『なっ!? 中からデヴァウルが、しかもこの数!?』

「どうしたグリム、おい、っ!?」

 あちらで何が起きたのか。それはすぐにグライとネクトの眼前で起きる事になる。


 大きく裂けた口を開き、飛び出した眼玉、身体中に大量の棘を生やし、肥大化した胸鰭を翼の様に羽ばたかせている。


 それらが目視しただけで数十匹、群体を成してこちらへ迫って来る。


「この数は!!」

「っ、まずい!」

 《ガルドミナス》と《ジェネレビオ》は変形を解除。ロングライフルとビームマシンガン、ファイアスケイルで応戦する。

 何体かは撃墜したものの、圧倒的な物量の前にはまるで意味がない。大口を開けて食らいつこうとする単純な行動しかしないものの、当たれば機体の一部を食い千切られてしまう事が確約されている。

『グライ、ネクト、一度ルートを変える! 指定ポイントで合流するぞ!』

「策があるのか!?」

『上手くいくかは別として、ある!』

「了、解! 聞いたか!?」

「聞いてる!!」

 一瞬の隙をつき、2機は再び巡航形態へ変形し、離脱。


 グリムが指定したポイントへ急ぐのだった。



続く

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