第11話 二度と破らない為に
毛布に蹲り、出来る限り少しずつエナジーバーを齧る日々。部屋の外から僅かに聞こえる足音が近づく度に期待し、通り過ぎる度に肩を落とす。こうして口をつけると、ちょっとした苦味と遅れて追従してくる大袈裟な甘味が舌を支配する。落ち込んだ気分が紛れるのだ。
「……ん」
結局あの日以降、今日までシェイクがこの部屋に来ることはなかった。明日は来る、明日は来ると毎日思い続けて、運ばれてくる食事だけを僅かな楽しみに待ち続けた。
(嘘つき……)
その時だった。自動ドアが開く音、こちらへ向かってくる足音。
「っ!」
来た。待っていた彼が。口に咥えていたエナジーバーを放り投げ、毛布を跳ね除けてガラス板へ駆け寄った。
「っ、ェィ……」
シェイクは確かにいた。しかしその隣には、グリムとストームも立っていた。
「ソーンちゃん、着いたよ。第3コロニーに」
部屋の扉が開く。待ち望んでいた筈の来客、待ち望んでいた筈の解放。しかしソーンは嫌な予感を感じ取り、後ずさる。
「ソーン、君を待っている人達がいる。一緒に行こう」
「ぃ、ぁ」
差し出されたグリムの手を払い除け、足を縺れさせながら逃げる。部屋の隅に背中をつけ、尚も近づこうとするグリムへ隠し持っていたエナジーバーを投げつけた。
「当然か……シェイクがいれば来てくれると思ったんだが。やはりシェイクとの面会くらい許可していても……」
「まぁまぁ、別にお前は間違ったことしてないさ」
苦い表情を浮かべるグリムの肩を叩くと、ストームは懐から何かを取り出した。
強化プラスチックで作成された手錠。金属よりも破損しにくく、装着者の手首を傷つけにくい為に採用されているものだ。
「自主的に来てくれないなら、これつけて貰うしかないな。可哀想だからあんま気は進まないけど」
「……!」
嫌な記憶が蘇る。地球にいた時、食事や睡眠の時すら外されなかったあの手錠が、再びかけられる。あれを手に嵌められたが最後、もう死ぬまで自由はない。
ストームが一歩踏み出したのを見て、ソーンが目を固く閉じた時だった。
「おっと」
横から伸びた手が手錠を叩き落とした。驚くグリムとは違い、ストームはまるで驚く素振りを見せていない。
「どうしたシェイクくん。手錠は嫌いか?」
「必要ない」
「ほほー、じゃあどうやってソーンちゃんを連れて行くのかな?」
試す様な物言い。シェイクはストームの肩を引いて下がらせ、ソーンの側に寄る。
怯えた瞳を見た時、シェイクもまた痛む様な表情を浮かべた。差し出されたシェイクの手に、震える目が向く。
「俺には、お前を助けたあの日から、お前を守る責任がある。一度助けておいて、知らない場所と人間にお前を放り出す事は絶対にしない」
ソーンだけではない。グリムやストームにも聞かせる様にはっきりと伝える。
「頼むソーン。俺を信じてくれ」
彼女の瞳の震えが止まった。小刻みだった呼吸が一度止まり、やがて大きく息を吸い込む。
頷いたと同時に、細い手がシェイクの手を握り締めた。
「あっはは、怖いおじさんいらなかったわ。とにかくこれで解決だなグリム?」
「あの時も、お前はそう言った。なのに俺達は、俺はお前を……」
「……はぁ。本当、気にしすぎるなよ」
手を握り合い、歩き出す2人を見たグリムの声は、消え入る様に小さかった。
「あの時と同じ。何にも変わってない」
ドア一枚を隔てた先で、ネクトもまた呟いた。
第3コロニーの中央に位置する行政区画。そこでは他のコロニーの管理情報を統括し、政策の施行や治安維持活動を行なっている。第3コロニー以外にも行政区画自体は存在するものの、ネットワークを通じて伝えられる上層組織の指示に従って活動に務めている。
ここには多数の商業施設や娯楽施設が点在しているが、シェイク達はコロニーの中心を貫く長いエスカレーターの上。行政区画に一直線に向かう階段にいる。
「ね、ねぇグリム兄さん。今回の依頼者って……」
「いや、同業者の筈だが」
艦を降りるまでは目を輝かせていたアルル。このエスカレーターを見てからは一転して死んだような目になっていたが、中腹あたりからは不安げな表情へと変わっていた。
「んで、何でソーンちゃんはシェイクと手を繋いでいるのかな?」
「やむを得ない事情があるんだ」
「へ、へぇ、やむを得ないならしょうがないね」
2人の方へ小刻みに視線を送りながら、アルルは口笛を吹くように唇を尖らせる。
アルル以外のメンバーに走る緊張感は、シェイクの背に顔を埋めるソーンに嫌という程に刺さっていた。
「兄さん、この子を引き渡した後はどうするんだ?」
ペイルが発した、引き渡す、という単語に背が震える。手が強く握られるが、シェイクはただその痛みを受け入れる。
「それは……」
「その後の事は、この引き渡しが終わってから考えるって事で。ほら、最上階が見えて来た」
ストームが指差した先でエスカレーターは途絶えていた。
「あー、もうソーンちゃんとはお別れかー。寂しいね」
「寂しい、か」
ネクトが外の景色を見ながら漏らした言葉に、アルルは思わず言葉を詰まらせた。心にも無いことを言うな、と釘を刺された気がしたのだ。
エスカレーターを昇り切った先。そこには想像を超えた出迎えが待ち構えていた。
「うぇっ!?」
対人用の銃器を抱えた兵士が数十人。いずれもシェイク達を囲む様に配置している。
嗚咽に似た悲鳴を上げるアルルの膝をペイルは軽く小突き、口を強制的に閉じさせる。
皆が固まる中、ただ一人ヘラヘラとした態度を崩さず前に出る人物が。
「おーい! こんな出迎えしたら皆びっくりしちゃうだろーが!! 散れ、散れ!」
獣を追い払う様に手を払うストーム。同時に兵士達が、まるで波が引く様に下がっていく。
同時に奥の方から2人の人物が歩み寄って来た。
「ごめんねーストーム君。僕はやめた方がいいよって言ったんだけど」
「御大将はこんな事しないでしょーよ。だろ、心配性のゾルワルトさんよ」
「これでも少な過ぎるくらいだ」
1人は低い背丈をしたワインレッドの髪の壮年。サングラスのおかげで眼は判別出来ないものの、朗らかに笑う口元からは隠しきれない人の良さが溢れている。
もうその正反対の容姿。見上げる程の高い身長、茶色の長髪と彫りの深さが際立つ顔つき。岩石を削った様な太い腕で張った制服には、ストームのものと同じ腕章がある。
「依頼主が、政府関係者……?」
シェイクはグリムへ視線で問う。しかし彼は黙って小さく首を振った。どうやら意図していた事態では無いらしい。
「失礼ですが、貴方達は本来の依頼主の代理の方々でしょうか。私が聞いていた話では依頼は他企業からのもので、政府軍関係者ではなかったのですが」
「あー、すまないね。単刀直入に言わせれば、君の言う通り僕達は本来の依頼主じゃない。っと、その前に自己紹介をしなければ」
壮年はサングラスを取り、一礼。未だ輝きを保つ美しい琥珀色の瞳がグリムに向けられる。
「僕はハイディアル・ヒストリック。ここ第3コロニー軍事担当総責任者で、コロニー政府軍の大将を担当しているよ。よろしくね」
「……?」
「ここだと一番偉くて、全コロニー政府軍の中で2番目に偉い人、な」
ハイディアルの肩書をいまいち理解出来ていない様子のアルルへ、ペイルが小さく耳打ちした。
「なるほど、完全に理解……うがぁぁぁめっちゃくちゃ偉い人じゃぁぁぁんあばばばば!!?」
「静かにしろ!」
再び奇声をあげるアルルの腿へ一撃。静かにしゃがみ込んだ事を確認し、ペイルは再び向き直った。
「これは、大変失礼致しました。私は……」
「あーいやいや、君達の事はストーム君から聞いているよ。地球からここに来るまで本当に色々あったみたいだね。お疲れ様」
グリムの視線の端ではストームが戯けた表情でダブルピースを決めている。こうなると彼の正体が益々謎を帯びてくるのだが、それを尋ねるより早くハイディアルの隣の大男が前に出た。
「失礼。本題に入らせて頂きたいが、その前に名だけ。私はゾルワルト・トールマー大佐。第3コロニー軍所属の軍人です。依頼の件ですが、取引相手こそ変わるものの、内容自体はこのまま継続して手続きを行いたいというのがこちらの意思です」
「つまり、貴方達へソーンを、失礼、この少女を受け渡すと?」
「んー、普通不思議がるよね。これについてはあまり人前で話す事じゃないからなー」
ハイディアルは少し困った様に笑うと、再びサングラスをかけて踵を返した。
「良かったら僕達だけで話そう。良い庭があるからそこで、ね」
「さて、本題っていうのがね」
ハイディアル、ゾルワルト、ストームと向かい合う様にシェイク達が長テーブルに着く。変わらずソーンはシェイクの手を掴んだまま、俯いている。
「その子、あぁ、君達はソーンちゃんって呼んでるんだっけ。ソーンちゃんを君達に引き渡す様に取引を持ちかけたのは、僕達の身内なんだよ」
「身内?」
「第5コロニー所属特別医療研究機関、HERIだ」
「ヘリ? ヘリって、コプター的な?」
アルルがクッキーを頬張りながら呈した疑問にハイディアルとストームは噴き出し、その他は呆気に取られる。
「人類進化特別研究機関。名前は大仰だけど、全てのコロニーに配備されている病院と研究機関の総本部みたいな場所だよ、アルル姉さん」
「へぇー、ネクトはやっぱり物知りだねぇ」
「学校で習うんだよなぁ」
感心した様な台詞に対し、ペイルは小声で呆れていた。
「ぷっふふ、は、話を戻そっか。んで、まぁ色々しがらみとか面倒な事はあるんだけど、全部すっ飛ばしてはっきり言うと、僕達コロニー政府軍的に彼等は信用出来ないんだ」
「信用出来ない、とは? 彼等の支援があるおかげで、私達の様な一般企業でも潤沢な医療支援が得られるのですが」
M・Sだけではない。今やどの企業もHERIから派遣される医師や医療物資を命綱にデヴァウルと戦っている。彼等との繋がりが絶たれる事は死活問題に直結すると言っても過言ではない。
「いや、医療班は信用して構わない。問題は本懐ともいえる、研究班の方。既に内部告発にて、ここを含むその他の機関に無断で、非道な人体実験を行なっていると報告されているのです」
「人体、実験……!?」
シェイクは思い出す。地球で見たトラックと休眠ポッド。そしてソーンが初めて名乗った名前。
「実験体、No.23……」
「ん、君は、地球にしばらくいたそうだね。そしてそこでソーンちゃんと出会った。間違いない?」
「……間違い、ありません」
苦い表情を浮かべるシェイクを見て、ハイディアルは何かに失望した様に俯いた。
「地球には僕達の目が届きにくい。あんなボロボロの星で大層な研究は出来ないと思っていたけど……彼等はそこで実験を行い、その中でソーンちゃんに何かを見出して、君達や他の企業を仲介させて本部に送ろうとした。その何かが何なのかは、きっと」
ハイディアルは数枚の写真を差し出した。
宇宙に燃える様に咲く青い薔薇。《オルドレイザー》。
「このDCDに隠されている」
ハイディアルに続き、ゾルワルトは新たな提案を行った。
「ここからは新たな取引、に近いものになります。その子に加え、君達が保有しているこのDCD、《オルドレイザー》をこちらに引き渡して貰いたい」
「《オルドレイザー》を、引き、渡す……」
一同に緊張が走る。しかしそれぞれが抱えた思いは異なっているだろう。
「彼女がいなければ起動しない事は把握しています。貴社から送られた報告書を精査した結果、この選択が互いに最善と判断しました」
「しかし、《オルドレイザー》は私達の貴重な戦力です。それを失うのは……」
「無償で譲れと言っている訳ではありません。本来提示されていた額に加え、これらを」
電子タブレットが差し出される。受け取ったグリムの横から、アルルとペイルが内容を覗き見る。
「……ねぇこれ、桁が多すぎてよく分かんないんだけど」
「金だけじゃない、何だこの量の弾薬と予備部品、武器とDCDまで……!」
「武装とDCDは来月より配備される先行量産仕様のものです。これでも不満でしたら、何かしら他の物資も譲渡しますが」
しかしこれだけの内容を見てもなお、グリムの顔は浮かないものだった。それを察したのか、ゾルワルトがもう一言付け足そうとした時、
「……パイロットは、どうなるんですか」
ペイルの言葉が、シェイクの視線を動かした。
「パイロットは……君、だね。シェイクくん。映像を見させてもらったけど、はっきり言って君の操縦技術は目を見張るものがある。僕としては引き続き《オルドレイザー》のパイロットを続けて貰いたい」
「それはつまり……」
「君も、こちらに来てくれないかな? ソーンちゃんと一緒に」
ハイディアルから差し出される手。皆の視線がシェイクに集まる。
「す、凄いじゃんシェイク、大出世だよ!」
「……良い機会だろ。ここに戻ったのだって、7年前のケジメを着ける為らしいじゃないか。だったらここよりもあっちに行った方が最善だ」
「シェイク……」
グリムは2人の言葉を諫められない。何も間違っていないのだ。あの日の決着をつけるのならここよりも多くの情報が手に入る。政府軍ならばシェイクの腕も遺憾無く発揮出来るだろう。《オルドレイザー》の謎も、ソーンの謎も解けるに違いない。
だが、本当にそれでいいのか。
「あの、お言葉ですが ──」
「お言葉ですが、お断りします」
グリムに被せる様に、シェイクはハイディアル達へ告げた。
「シェイク……」
「それは、パイロットを辞退するという事かい?」
「いえ、全てです。私は、っ、俺は《オルドレイザー》も、ソーンも、貴方達に渡す事に反対です」
「っ!」
ソーンの顔が初めて上がる。驚いて離しかけた手を、シェイクはまたしっかりと握った。
「お前、何を言ってるんだ!」
ペイルが立ち上がる。しかしもうシェイクの視線は動かない。
「彼の言葉に私も同意です。貴方は依頼内容を把握していたんですよね?」
ゾルワルトに対する返答は簡潔だった。
「はい。全て承知しています」
「なら何故……」
「俺が成し遂げなければならない事が、そちらでは出来ないからです」
シェイクは立ち上がり、一度閉じた目をしっかりと開いた。
「俺は確かに、7年前の過去に決着をつける為に地球から戻りました。でもただそれを成し遂げられればいい訳じゃないんです。もう家族を失わない、家族との約束を破らない。その為には、ソーンも《オルドレイザー》も、M・Sになくちゃいけないんです」
「俺達とお前はもう家族なんかじゃ……!!」
「お前達にとって俺は家族じゃない。でも俺にとって、お前達は今でも家族だ」
ペイルを一切迷いのない瞳が見つめた。言葉に、声色に、ペイルの口は塞がれる。
しかし静寂は長くは続かない。
「それが、一方的に相手方との契約に違反していい理由になるの?」
ネクトからの問い。これもまた正当な意見だった。
「少なくともその子を引き渡す事までは正式な契約だし、その子がいなきゃ《オルドレイザー》は動かせなくなる。それについては?」
「そもそも本来の依頼主との契約じゃない以上、こっちにも交渉をやり直す権利はある筈だ。そうだろう、ストーム?」
それまで沈黙していたストームへシェイクは問う。すると彼は大袈裟に腕をひらひらと振って見せた。
「ありありだ。シェイクが言ったこともあるが、そもそもM・Sの資産である《オルドレイザー》、及び正式パイロットの譲渡と移籍は、M・Sの責任者と本人の了承がなきゃ出来ない。政府軍の招集なんて文言を使ってもダメだ。そんな無茶が通じたら、DCD産業の衰退に繋がる」
ストームが確認する様に、ハイディアルとゾルワルトへ目を向ける。ハイディアルは和かに、ゾルワルトは困惑した様に頷いた。
「何よりお前ら、流石に冷たいんじゃねーの? 今時こんな家族思いな奴、血が繋がってる本当の家族でもいないぞ?」
「最初の理屈は了承しました。ですが、最後の感情論だけは納得出来ません。貴方に私達の何が分かるんですか」
「あらかたの事情は聞いてるよ。でも割り切って一緒に戦う事くらい、許してやってもいいんじゃないのか?」
「家族だったからこそ、どうしても割り切れないし、どうしても許せない事だってあるんです」
ネクトの言葉に空間が凍った。それまで冷静だったシェイクの身体が小さく震えだす。
手でソーンは感じた。彼の痛み、あの時《オルドレイザー》で伝わった痛みを。
「……あー、はいはい。んじゃ強引だけど条件を付けよう。どっちにもそれなりに利益がある条件をな」
ストームは止まった空間を無理やり動かし、まずはハイディアル達へ手の平を向けた。
「まず、ソーンちゃんと《オルドレイザー》の譲渡はしない代わりに、こっちの方で定期的に身体検査結果、及び解析データ、戦闘記録を政府軍、正確には御大将達に提供する。あくまでこっちの目的はソーンちゃんの保護と謎の解明だ、少し遅くはなるがその分手間はかからない」
そして次はシェイク達へと向ける。
「んでそっちにはソーンちゃんと《オルドレイザー》のデータを得る為の支援をする。この辺はグリム達とおいおい考えていくが、可能な限りのことはやるつもりだ」
「また勝手な事を……」
「やっぱりストーム君って面白いね。いいよ、僕に出来る限りの事はしてみる」
ハイディアルとゾルワルトの反応に、ストームは笑う。しかしそれでもネクトの表情は変わらない。
「《オルドレイザー》の暴走の件は? 原因が分からない、未知の力の暴走。私達だけじゃない、これが一般人にも及ぶかもしれないんですよ?」
「あー、それなんだよなぁ。あれの原因が分からない事には……いや、まぁ一つあるにはあるよ? あるけどさぁ……」
わざとらしく両手を後ろに回すストーム。その視線を見たシェイクは、今一度ネクト達へ向き直った。
「次また《オルドレイザー》が暴走して、もしも誰かに危害を加えると判断したら……その時は撃墜してくれ」
「シェイク!?」
「は、はぃ? はぃぃぃ!?」
「何言ってるんだ、お前……!?」
グリムとアルル、ペイルは激しく動揺する。しかしそれを初めて聞いた筈のソーンは、唇を固く閉じ、胸を少し張っていた。
「とまぁ、本人達はこんな感じだけど。どうかな、家族思いのお嬢さん」
「……」
ネクトは3人とは違い、一際目を鋭くしてシェイクを睨む。やがてゆっくり歩み寄り、宣告した。
「その時が来たら、覚悟して」
ネクトが踵を返すと同時に、ストームが手を叩く。音が消えるより早くこの会合を締めた。
「じゃあ成立、って事で」
続く