表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
実験好き男子の魔法研究  作者: 日野萬田リン
第五章:戦争編
93/137

第八十六話:抵抗、そして奇跡

前回のあらすじ:一人で戦うジンのもとに駆け付けたのは、彼の愛する妻クレアだった。


第八十六話です。とある映画のワンシーンをイメージしました。


注意:戦争などの悲惨な情景の表現があります。苦手な方はご注意ください。


<三人称視点>


倒れこむジンの隣に立ったクレアはそっと膝をついて、ジンへ手を伸ばす。ボロボロになるまで一人で戦っていた彼を慈しむ女神の手のようであった。


ジンは信じられなかった。


ここは戦場。どれほどの力を持っていたとしても、一歩間違えれば死に至るような場所だ。事実、訳の分からない空からの攻撃で、多くの人間が死んだ。

そんな場所に、そこまで戦えるわけでもない、後方で支援を担当していたはずのクレアがいるはずがない。


しかし、それは死ぬ直前に見る幻覚などではなく、まごうことなき現実であった。


「どうして……ここに?」


かろうじて声を絞り出す。クレアはジンにそっと微笑みかける。


「私はあなたの……、ジン=ヴァレンタインの妻ですから。あなたを一人になんてさせません。」


クレアは立ち上がり、ジンを守るように前に立つ。そして、キッと目の前の魔族たちを睨みつけた。


魔族たちは二人のやり取りを見てほんの少し呆ける。しかし、先頭に立つ男が笑い始め、その笑いが魔族たちに連鎖していく。


「はははっ!愛情とかいうやつか?くだらねえ!何の力も持たない女が俺たちに何できるってんだ。」


魔族は腹を抱えて笑う。そして、気持ちの悪い笑みをクレアへ向ける。


「確かにジン=ヴァレンタインは強かった。それは認めてやる。だが、お前に何ができる?さっきの魔法だって、俺の隙をついて打った魔法だろう。それでも俺に傷一つつけられない。お前が来たところで、何も出来ねえんだよ!」


「黙りなさい。」


クレアが左手を前に突き出す。それと同時に先ほどと同じような火球が発生し、魔族へと飛んでいく。

しかし、魔族はこともなげにその魔法を振り払った。


「無詠唱魔法か。だが、全然足りねえな。あんた、ろくに戦闘の経験ないだろう?無詠唱魔法を使えても無意味ってわけだ。」


クレアは苦々しい顔をするが、その目はまだ闘志を失っていない。


「ちょっとばかし遊んでやるよ!」


その魔族が右手を上げるに合わせて、魔族たちは魔法を発動させる。空中には無数の魔法。クレアだけでは到底迎撃することなんてできないほどの、圧倒的な暴力。


それがクレアに降りかかる。


「やめろおおおおおおおおお!」


ジンの叫びが響き渡る。だが、現実は無常。無数の魔法による爆発がクレアのその華奢な体を襲う。耐えきることなどできるはずもなく、クレアは吹き飛ばされ地面を転がる。


魔族の男は大げさに両手を頭の上にのせて困った素振りを見せる。


「おいおい!こんだけで死んでくれるんじゃねえぞ!……お?」


魔族の視線の先には立ち上がろうとするクレアの姿。それを見て満足そうに魔族はうなずく。



「いいねえ。あの程度で終わっちゃ面白くねえ。それに最後は良い悲鳴を上げてくれよ。」


「やめ……ろ……。」


絞り出すようにジンが声を上げる。ジンはすでに限界を超えている。クレアに魔法が向けられた瞬間、無理やりにでも体を動かして守ろうとしたがそれでも体は言うことを聞かない。立ち上がることもできなくなっている。


それでも、ほんの少しだけでもクレアのもとに近づこうと、ジンは這うようにして地面を進む。


一方、クレアは何とか立ち上がるが、先ほどの魔法を受けてすでにボロボロになっている。だが、その目からはやはり闘志は消えていない。


魔族の男はそれを見てニヤニヤと笑みを浮かべるが、傍に立つ別の魔族がそっと近寄る。


「あんまり時間をかけるな。ジン=ヴァレンタインのせいですでに犠牲も多く出てるし、時間もかなり経ってる。あの人(・・・)がそんなに待つと思うか?俺はごめんだぜ、さっきの奴らみたいな目に合うのは。」


その言葉を受けて、一気に魔族の男は不機嫌そうな顔をして舌打ちをする。


「しゃあねえな。……じゃあ、二人そろってさっさと死ねよ。」


魔族の男が魔法を発動する。先ほどとは火力が全く違うのが一目見て分かる。それに続いて他の魔族たちも先ほどより強い魔法を発動させていく。


ジンは何とかクレアのもとにたどり着く。クレアもふらつきながらジンに寄り添うように膝をつく。


ジンとクレアは目を合わせる。二人の様子はまるで、共に生き、共に死ぬと覚悟した夫婦のようであった。いや、実際に二人はそう思っていたのだろう。


「すまない、クレア。……愛してる。」


「謝らないで。ふふふ、私も愛してるわ。」


クレアはアインからもらったネックレスを強く握りしめる。容赦ない魔法の暴力が二人へ降り注いだ。





<???視点>


今この場にいるのは、いくつもの偶然が積み重なった結果だ。



未完成の魔道具がうまく動作しなかったら。


魔道具の知らせに気が付くことができなかったら。


転移魔法陣に必要な巨大な魔石、入手困難なそれを手に入れることができなかったら。



全てを挙げることができないほどの多くの偶然。一つでも違っていれば、今この場にいることはできなかっただろう。


あまりにも多くの偶然が積み重なった結果、人はそれを"奇跡"と呼ぶのかもしれない。


俺はゆっくりと腰の剣を抜く。大切な家族(・・・・・)を守るため、俺は戦う。


八十六話いかがだったでしょうか。ついに、"彼"が参戦します。


土日に予定がありますので、次回更新は4/27(水)になります。読んでいただけたら嬉しいです。


お知らせ:GW中は帰省する予定なので、更新が滞ると思われます。細かい予定についてはまたお知らせします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ