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実験好き男子の魔法研究  作者: 日野萬田リン
第五章:戦争編
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第八十三話:息子、そして開戦

前回のあらすじ:ヨーダとクレアがジンのもとにやってきた。


第八十三話です。ついに開戦です。


<ジン=ヴァレンタイン視点>


その時がついに訪れた。


「緊急の報告です!国境で帝国の動きあり。数は不明ですが、こちらへ近づいてきているようです。」


いつか来るとは思っていた。来てほしくないという気持ちもあった。だがこうなった以上、俺たちも帝国ももう止まることはできない。


「総員へ通達。すぐに準備を整えろ。……開戦だ。」


「了解!」


その場にいた全員が慌ただしく走り去る。俺はゆっくりと腰を上げ、脇に置いて置いた剣を手に取った。

ゆっくりと深呼吸して、神経を張り詰める。かつての戦いが思い出される。何度も"死ぬかもしれない"という戦いは繰り返してきた。最近はそういった戦いと縁がなかったが、体が感覚を覚えている。


俺は鋭い目つきをして部屋を出る。部屋の扉の前では腕を組んだまま立っているクレアの姿があった。


「怖い顔してるわね。でも、戦いに出る男の顔って感じがして私は好きよ。」


「クレアは避難しておけ。戦争になればどうなるか分からないからな。」


「お断りよ。」


俺は立ち止まり、クレアと向き直る。すでに戦えない人たちの避難は始まっている。できることならその人たちと一緒にここから離れてほしい。

幸い、近くの領で避難民を受け入れてくれる手はずとなっている。そこまで行ければとりあえずの安全は確保できるのだ。


俺のことを"戦いに出る男の顔"と言っていたが、クレアの方こそ決意に満ちた良い顔をしている。


「さすがに最前線で戦うなんて言わないわ。でも、後方で支援するくらいなら私にだってできるわ。いざという時はアインから教わった魔法もあるしね。」


そうだ、こういう人だからこそ、俺はクレアに惚れたんだったな。


「分かった。だが、くれぐれも気を付けてくれ。」


「なら私のところまで敵を通さないようにすればいいのよ。期待してるわよ、あなた。」


俺はゆっくりと歩き始める。妻を、息子を、そしてこの領に住むすべての人を守るために、俺は戦場へと向かっていった。





ゆっくりと壇上に上がる。俺の目の前には武装した兵士が多数。全員がこちらを向いて、俺の言葉を待っている。


これから戦争に向かう勇敢な兵士たちに俺はどんな言葉をかけるべきだろうか。


近くにいる兵士たちの顔をざっと見渡す。誰一人として、下を向いている者はいない。誰もが戦う兵士の顔をしている。


一回の咳払い。その後に俺は全員に届くよう、大きな声で言葉を紡ぐ。


「みんな!俺はともに戦ってくれる君たちのことを誇りに思う。相手は帝国。決して楽に勝てる相手ではない。だが、俺は君たちとならこの戦いにだって勝てると信じている。」


そこまで言って一呼吸の間を置く。右手に剣を持ち、高く天へ掲げる。


「守るべきもののために!行くぞ!」


俺の言葉に続き、大きな歓声が沸き上がる。気合は十分。後は戦うだけだ。


「敵影多数。魔族の姿も見られます。」


俺のもとに報告が届く。魔族がいるという情報は事前につかんでいたので、驚くことではない。どうやら魔族は敵勢力の先陣にいるようだ。おそらく先手を取ってこちらの混乱を招く作戦だろう。


だが、そうやすやすと流れを渡すわけにはいかない。俺は兵士たちの先頭に立つ。


「領主様……。」


「心配するな。相手が初手から戦力を投入するんだったら、こちらだってそれに応えるまでだ。」


距離はもう近い。先頭に立つ魔族はにやりと気持ち悪い笑顔を見せる。何をするか分からないが、おそらく何かしらの魔法を放つつもりだろう。


だが、遅すぎる。


次の瞬間、俺はすでに魔族の隣に立っていた。一泊遅れて、魔族はようやく俺に気づく。その驚いた顔のまま、首から上が地面に落ちる。


あっという間の出来事に帝国軍は呆気に取られているようだ。俺は剣についた血をわざと帝国軍の方に飛ばして払う。帝国軍の兵士の顔に、魔族の血が飛び散る。


帝国軍の兵士は顔についた血を手で触る。その顔はまるで、信じられないようなものを見た顔だ。


俺は一歩下がり、剣を天に掲げるように振り上げる。そして、その剣を大地を切り裂くかのように勢いよく振り下ろした。


俺の剣はただ空を切るのみだったが、その意味合いは両軍にとって全く異なるものだったことだろう。


自軍にとって、それは「行くぞ。」とでも言うような合図に。


帝国軍にとって、それは「切り伏せる。」とでも言われたかのように。


この時点で、どちらが先手を取ったのかは明らかだった。





<三人称視点>


少し離れた場所で、皇帝とその側近は戦争の様子を眺めていた。


「これはすごい。情報では聞いていたが、実際に見てみると本当に人間離れしているな。あのジン=ヴァレンタインと言うのは。」


見てすぐにわかるほど帝国軍は劣勢だというのに、皇帝から余裕の笑みはいまだ消えていない。


「皇帝さんよ。何で役に立たなそうな(・・・・・・・・)魔族ばっかり前線に立たせてんだ?それに、あの銃?とやらも持たせてないみたいだし。」


隣に立っていた魔族が皇帝に向かって言う。それに同意するように他の魔族も黙ってうなずく。その魔族たちに対して、皇帝は右手を挙げて応える。


「まあ黙って見ていろ。これからが面白くなるんだから。たとえあのジン=ヴァレンタインが人間離れしているといっても、人間である以上限界はあるんだから。」


皇帝は腰に提げた懐中時計を手に取り、時間を確認する。そして帝国側の空を仰ぎ見た。


「そろそろ時間だ。来るぞ。」


皇帝は帝国側からやってくるそれを見て満足そうな顔をする。その脅威はジン達のすぐそばまで迫っていた。


八十三話いかがだったでしょうか。本当は兵士の数とかも書こうと思いましたが、実際の戦争での兵力がどの程度か、それが時代に即したものなのかとか分からなかったためあえて明言を避けました。読者の皆様の想像力にお任せします。


次回更新は4/18(月)になります。読んでいただけたら嬉しいです。

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