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実験好き男子の魔法研究  作者: 日野萬田リン
第五章:戦争編
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第七十九話:同じ、そして通信機

お久しぶりです。新年度になりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。自分も少し忙しくなっているのでしばらく投稿はゆっくりになるかもしれませんが、可能な限り頑張ります。


前回のあらすじ:レオ第二王子はニュートと偶然出会い、彼の才能を見出した。


第七十九話です。第五章"戦争編"開幕です。第四章ではアイン以外の視点が多くなるかもしれません。


<アイン視点>


対抗戦から数か月、年末も近づいてきたころ、俺は第二魔法学院に戻って実験に従事していた。とはいっても、以前までとはちょっと毛色が違い、戦争を視野に入れた実験をメインに行っていた。


例えば武器の開発だ。手軽に扱える武器として、魔法陣を内蔵した銃の開発を行った。もちろん、俺たちのような魔力操作を扱える人間以外の人でも扱えるように、魔石も内部機構に組み込んだものだ。

今までにも同じような武器は作られていたが、この世界においてあまりそれは普及しなかった。その理由は簡単で、魔石の中の魔力消費が激しく、ほとんど消耗品となってしまっていたからだ。


そこで、俺が提案した解決策は二つ。一つは魔法陣自体の改造。魔法陣を改良して魔力消費を抑えるように魔法陣を変えた。そしてもう一つは、魔石の交換を容易にできるように銃の設計をやり直したのだ。


まだまだ改善の余地はあるが、とりあえず形になったその武器は"魔法銃"と名付けられ、試作および実験としていくつかの騎士団や衛兵に配られることになった。

剣や槍をずっと扱ってた彼らにとって、真新しいもの過ぎて扱いに苦労していたようだったが、これから徐々に普及していけばいいだろう。それまでにより性能の良いものを作り上げていけばいい。


ちなみに魔法銃を開発しようと思った理由は簡単で、王都での事件で銃を手に入れたからだ。おかけで作ってもらう時に構造を解説するのも容易だった。


他にもいろいろなものの開発に着手しているのだが、特に力を入れたのは"通信機"の開発だ。


戦争において情報の速やかな伝達というのは非常に強い武器となる。通信機の開発は急いで開発すべきものの一つだった。


実は通信機の送信側については対抗戦前にすでに構想が出来上がっていた。魔力に文字情報を載せて、電波のように飛ばすことはできていた。


だが、実用的な通信機には程遠かった。


一番の問題点は、送信側が送った情報を受信側がどう受け取るかだった。そもそも送信側が飛ばした情報が届いているかも分からなかった。


それを解決してくれたのは転移魔法陣の存在だった。転移魔法陣で学んだ座標の設定の仕方。それによって正確に送信機から魔力を目的の場所に飛ばすことができるようになったのだ。





今は改めて作成した試作機のテストを行うところだ。今は実験棟の一室。学院長から特別に俺にあてがわれた実験室だ。今までの諸々の活動が功を奏して、実験棟の一室を学生の身分ながらもらえることができたのだ。


カタカタとこの世界の文字に合わせた自作のキーボードに入力する。送り先を指定し、送信する。送信したことを確認して俺はその場を離れた。情報がきちんと届いたか確認に行くためだ。


俺は寮への道を歩く。受信機は寮の自室に置いている。相室のラビに確認だけお願いしたのだが、あいつ妙な事していないだろうな。受信機を作るのもかなりの労力を要したのだ、変にいじくられていなければいいのだが。


「ラビー?ちゃんと届いたかー?」


俺は何の気なしに自室のドアを開ける。妙だな?ラビの返事がない。部屋の中を見て俺は驚愕した。そこにはいるはずのないアイヴィとエスカの姿があったのだ。

二人は通信機を興味深げに見つめている。部屋の中にラビはいたのだが、椅子に座ってニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべて俺の方を見ていた。


二人は俺が入ってきたことに気づいていないようだった。俺はラビの耳を引っ張って小さい声でラビに話しかける。


「おい、何でアイヴィとエスカがここにいるんだよ。ここは男子寮だぞ。」


「別に男子寮だからと言って夜間じゃなければ女子が入っても問題ないだろう。二人がお前を訪ねてきたから、部屋にあがって待ってもらうことにしたんだ。お前はその"通信機"?とやらを動かしたらすぐに戻ってくるって言ってたし。」


通信機に夢中になっていたアイヴィが俺に気づいたようだ。すくっと立ち上がり俺たちの方に向く。


「こんにちは、アイン君。突然お邪魔してすみません。」


「気にしなくていいよ。部屋に居たのにはびっくりしたけど。」


「それより、この"夜ごはんのおかわりは二回までにしろ"っていうのは……?何かの暗号ですか?」


良かった。俺の送ったメッセージは無事届いていたようだ。アイヴィの言葉にラビは顔を真っ赤にする。


「お前!そんなの送ったのか!?別にいいだろおかわりの三・四回くらいしても。」


「いや、明らかに多いだろ。しかも日によってはお前夜食も食ってるじゃないか。」


「うっ」と明らかに気まずい表情をラビは浮かべる。それとは対照的に、アイヴィは貼り付けたような笑顔のまま固まってしまった。


すると、ずっと通信機に興味津々だったエスカもこちらを向いた。すごい剣幕だが、静かに話始める。


「アイン君、これが前に話していた通信機ですか?先ほどの"夜ごはんのおかわりは二回までにしろ"という手紙を遠隔から送ったということでしょうか?」


「うん、そうだよ。まだまだ改善の余地は多いけど、さっき実験室からこの部屋の通信機に送ったものだよ。想像してたより時間もかからないし、十分実用可能かな。」


「これは直ちにお父様へ連絡しないといけませんね。アイヴィさんも父君に連絡したほうがよろしいですよ。この発明はまさに革命と言えるものです。さすがアイン君……ですね……。」


エスカは前々から通信機の有用性に気づいていた。戦争も近い今、すぐにでも前線に配備したいことだろう。


「まだ確認しないといけないことが多いけどね。必要な魔力量の確認に始まり、通信可能な距離の測定。やることは山積みだ。」


将来的には、音声を送れるようにして、できることなら携帯できるようにしたいものだ。やるべきことは多いが、一つずつ解決していこう。


それに、現段階でも戦争において重要な役割を果たすことはできると思う。距離の確認はしなければならないが、中継地点を設けるなどすれば相当な距離への情報の伝達が可能になるだろう。それに前世の電波とは違って魔力を用いているのだ、もしかしたら距離の制限だってないかもしれないし、障害物の影響だってないかもしれない。


そこまで考えて、ふと思い出す。二人はどうして俺を訪ねてきたのだろうか。わざわざ部屋まで来るとは何か緊急の用事でもあったのだろうか。


「そういえば、二人は俺に何か用?今日はフリーの予定だったと思うんだけど。」


二人はいつも実験や訓練に付き合ってくれている。本当に"いつも"なので、できる限り俺の側で予定を空けるようにしているのだが。


俺の言葉にアイヴィはむっとした表情をする。


「フリーだから、です。私たちに休みって言っても、アイン君は結局休まずに訓練に実験とかいろいろしてるじゃないですか。」


アイヴィの言葉にエスカは深くうなずき同意する。


「無理やりにでも休んでもらわないと。気づいてないかもしれませんが、目の下に隈もできてます。疲れがたまっている証拠です。」


「アインは真面目すぎなんだよな。もう少しサボり方を覚えた方が良いんじゃないか?例えば、目の前の美少女たちを誘って遊びに行ったりな。あっ、今日は帰ってこなくても俺は気にしないよ。」


余計な一言を放ったラビに俺は無言で拳骨をかました。


七十九話いかがだったでしょうか。第五章"戦争編"ではヴァレンタイン領での話が多くなるのですが、そうなるとシリアスな話ばかりになってしまうのでその前に少しほのぼの回(少しのシリアスを含む)です。


次回更新は4/6(水)を予定しています。読んでいただけたら嬉しいです

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