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実験好き男子の魔法研究  作者: 日野萬田リン
第四章:学院対抗戦編
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閑話:第二王子と天才少年の出会い

前回のあらすじ:リンとルンは互いの苦手を補いあって、"双子の聖女"となった。


閑話です。第二王子レオ=ノーベルと天才少年ニュートのお話です。


「レオ様ー!レオ様ー、どこにいらっしゃるのですかー!」


口うるさい大人の言葉を無視して僕は城からこっそり抜け出す。城にいても退屈な勉強ばかり。街に遊びに行った方が何倍も楽しい。


それに、城を抜け出したとしても、いつの間にか一人の騎士がついてきている。今回もどうせ僕は気づいていないが、隠れて僕を護衛している騎士がいるはずだ。


頭の固いやつらと違って、その護衛に来る騎士は僕のこういった行為に理解がある。だから、城から抜け出す前に僕を捕まえたりしない。いずれはその騎士すら出し抜きたいとは思うが、今はこれくらいで我慢するとしよう。


僕は街の大通りを歩く。何か真新しいものはないだろうか。目についた店に入ってはいろいろ物色していく。


店の人も僕のことを気に留めない。こんな風に抜け出すのは一度や二度ではないため、今ではもう慣れたものだ。僕が第二王子であると気づいている人はほとんどいないだろうが。


一つの屋台に目が留まる。貴族が食べるような食べ物ではないが、そこで売られている串焼きに妙にひかれたのだ。僕は屋台のおじさんに話しかけ、代金を受け皿にのせる。


「おじさん、それ一つもらえる?」


「んあ?えーと、串焼き一つだな、ですね。少し待て、ください。」


屋台のおじさんはまさか貴族の子供が来るとは思っていなかったようだ。言葉遣いがなっていないが、そんなことで目くじらを立てるほど僕は狭量な人間ではない。


ほんの数分待って出来上がった熱々の串焼きを受け取り、僕は歩きながら頬張る。貴族らしからぬ行為だが、普段厳しく教育を受けている身としたら、これはこれで非常に楽しい。


(これは……、美味しいな。時には城でもこんな食事を出してくれたら良いのに。)


貴族の食事はどれもこれも上品なものばかりで、物足りなく感じることもある。礼儀作法にも厳しすぎる。


王族とは思えない思考をしながら、再び街の散策を始めようと思った時、怒号が聞こえてきた。


「このガキが!いつもうつむいてて、辛気臭えんだよ!」


男が左手で少年の胸倉をつかんで、右手を振りかぶる。男の顔は怒りのせいか、それとも酔っぱらっているのか知らないが、真っ赤になっている。


男の右手は振り落とされ、少年の左頬に突き刺さった。その勢いのままに少年は吹き飛ばされ壁にぶつかった。


「……、あっ……。」


少年のうめき声のような声が聞こえた。理由は知らないが、街中で暴力を子供に振るっているのだ。すぐに衛兵がきて男は取り押さえられるだろう。


それまで静観しようかと思ったが、状況が一変した。男が刃物を取り出したのだ。


「お前なんか!生まれなけりゃ!」


刃物を少年の方へ向けて、男は走り出す。さすがに見ていられないと思い、僕は急いで詠唱を始める。しかし、詠唱を始めるのが遅すぎた。


(間に合わない!)


刃物が突き刺さるより前に、男はずぶぬれになる。まるで、頭上からバケツに入った水をかぶせられたようだ。


僕は周囲を見渡す。もちろんだが、バケツを持って水をぶっかけたような人は見当たらない。間違いなく、魔法による水だ。しかし、あのタイミングで水の魔法を発動できるような人間は見当たらない。


そして、僕はそれどころではないと気づき、刃物を向けられていた少年に駆けよる。


少年はすでに立ち上がって、先ほど殴られていた左頬を抑えていた。僕はその少年をかばうように立ち、ずぶぬれになった男と相対する。


「街中で刃物を、しかも子供に向けたんだ。すぐに衛兵が来る。牢の中で自分の行いを悔い改めるんだな。」


「あ!?」


男がすごい剣幕でこちらを睨みつける。だが、自分の行いに気づいたのか顔を青ざめる。そのまま近くの路地裏に走って逃げようとする。

僕はそれを許さないと、今度こそ魔法を発動しようとするが、後ろから僕の服をグイグイと引っ張られる感触に気を取られてしまい、魔法はあらぬ方向へと飛んで行ってしまい男は逃げて行った。


僕は少年の方に向き直る。


「なぜ、あの男を逃がすような真似をした?」


「あ……、う……。」


少年はどうもうまく話せないらしい。どうするべきか悩んだが、暇で時間があったので、その少年に付き合って話を聞いてみることにした。


僕は近くのベンチに腰掛ける。少年は立ったまま座ろうとしなかったので、空いた席をポンと叩いて座るように促す。するとようやく、少年もベンチに腰掛けた。


少年はたどたどしく話す。ただ僕はできるだけ少年が話しやすいように聞き手に回る。いつも話す側である僕としては少し新鮮だった。


聞いてみたところ、どうやらあの男はこの少年の父親らしい。酔っぱらって暴力を振るってくるのは日常茶飯事らしい。それはそれでどうかと思うが……。


ただ、刃物まで持ち出されたのは久しぶりで咄嗟に魔法を使って水をぶっかけたとのこと。


「待て、あの水の魔法は君が放ったのか?」


少年は口どもりながら、ゆっくりと頷く。


(仮に魔法を撃つにしても、詠唱を始めるのは僕よりも遅かったはずだ。それなのに、魔法を放つことができた?どういうことだ?)


こんな口下手な少年が嘘をついているとは思えない。だが、常識的に考えれば、魔法を放つ速度が速すぎる。


僕は面白いと思い、にやりと笑う。


「ちょうど、あそこに枯れかけている花があるだろう。あの花に水をやる要領で魔法を撃つことはできるか?」


少年は少し戸惑ったような顔で、花の方を見る。そして、たった一言。


「『う』」


少年が放った一言は僕には意味が分からないものだった。しかし、水の魔法が発動し、枯れかけの花に水がかかる。


「ふふ、あはははは!面白い、君は面白いな!」


笑いが抑えられない。これほどまでに興味深い人間は初めて見た。今日城を抜け出して幸運だったと、僕は神に感謝した。


「それで、君の名前は?」


「……、ニュート。」





それからはいろいろ大変だった。


まずは、ニュートの家に行ってから彼を引き取った。家族にとって、家の手伝いすらろくにできない少年は厄介者だったらしく、僕が引き取るのは簡単だった。本人は少し渋ったが、家族は罵詈雑言を彼に浴びせ始めたため半ば無理やり僕は彼を連れ帰った。


僕が第二王子だと知った時の彼の顔は今でも忘れられない。


僕はそれから一年間、彼にできる限りの教育を施した。これがかなり大変だった。彼は何をするにも人より覚えが悪く、魔法以外のことはほとんど何もできなかったからだ。


だからこそ、僕は彼の魔法の実力を伸ばす方向に尽力した。魔法に関しては、彼はまさに天才で、まるでスポンジのように魔法を吸収していった。


そして、第二王子としての権限を利用して、彼を第一魔法学院に入学させた。多くの貴族子弟の反発を買ったが、魔法の実力を見せて黙らせた。陰で手を出す者たちもいたが、一つ一つ潰していけば、ある時から彼に手を出すものはいなくなった。


誰も第二王子、つまりは王家を敵に回したくなかったのだ。


"双子の聖女"も彼の実力を認めるまでに至り、今度は対抗戦。


さあ、ニュートの実力を世界にお披露目するとしよう。


閑話いかがだったでしょうか。ニュート視点の話も書こうかと考えたのですが、自分は天才であるニュートの思考を表現することはできないなと思い諦めました。ニュートにとって、レオと出会えたのは本当に幸運で、もし会えなかったらどうなっていたことか……。


お知らせ:次回更新についてですが、少しお休みをいただこうと思います。年度末でいろいろ忙しかったので、少し長めに休んで積みゲーを消化します。3月中の更新はないと思ってください。またフラっと見に来たら更新してるかもしれないので、気が向いたときに読みに来ていただけたら嬉しいです。


追記(3/27):更新再開は4/4(月)を予定しています。変更の可能性もありますが生存報告がてら一応。

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