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実験好き男子の魔法研究  作者: 日野萬田リン
第四章:学院対抗戦編
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第七十六話:兄妹仲、そして転移先

前回のあらすじ:ドレッド家の兄妹仲は改善されてきているようだ。


第七十六話です。再び誘拐事件の犯人ゾイ=フーシェの屋敷にやってきたアイン達。彼らが知る黒幕の正体とは……。


<アイン視点>


「それじゃ、そろそろ出発するか。アイヴィちゃんとエスカちゃんも行くから準備して。」


「私たちもですか?」


ヨーダ兄さんの言葉にエスカが疑問をはさむ。確かに、先ほど外出制限を解除されたが、誘拐犯の家の調査に行くとは思っていなかったようだ。


「さすがにアイン一人で行かせるわけにはいかないからな。二人の護衛をしながらアインを連れていくとなったら、二人についてきてもらうのが一番良いだろう。それに、ずっと宿に缶詰状態だったなら少し外に出て気分転換くらいした方が良い。」


前半はともかく後半は納得だ。態度には出ていないが、二人ともストレスが溜まっているだろう。散歩がてら外出した方が良い。


ということで、俺とアイヴィとエスカ、それとヨーダ兄さん、デザルグさんの五人でアイヴィ誘拐事件の犯人ゾイ=フーシェの屋敷へと向かった。





ゾイ=フーシェの屋敷に来た俺は真っ先にあの魔法陣の描かれた部屋へ向かった。あの時はひどい惨状で見るに堪えない部屋だったが、騎士団によって掃除されたのだろう、血の跡は残っておらずただ魔法陣だけが部屋の中で異彩を放っていた。


俺は口を覆うように顎に手を当てて、魔法陣をじっと見つめる。


(魔法陣を解析するうえで重要なのは、描かれている線がただの魔力供給のためのパスなのか、それとも魔法を発動させるための根幹部分なのかを判別することだ。例え見たことのない魔法陣であったとしても、それは変わりないはずだ。)


単なる魔力供給のパスと思われる線を脳内で削除していく。特に魔石をはめ込む中心部から伸びる線の多くはこのパスだ。

残った部分をさらに細かく解析していく。この魔法陣が"転移"の魔法陣であると仮定するとほんの少し光明が見えた気がした。


(転移の魔法陣なら"座標"に当たる部分が必ずあるはず。……これか?)


魔法陣の中から数字と思われる部分を見つける。崩れていて読みにくいが、おそらく間違いないだろう。


(となると、それにつながるこの部分が転移の根幹か?興味深い……、っと今は知的好奇心を満たす時間じゃない。)


必要な情報は「この魔法陣はどこにつながっているか?」ということだ。得られた情報から俺は転移先の計算を始める。





<ヨーダ視点>


「俺たちは別の部屋を探してみるか。アイン、魔法陣については任せたぞ。」


声をかけてみるも、アインはすでに思考に耽っていて俺の言葉など聞こえていないようだ。


屋敷は広い。それにすでに騎士団が入念に調査を行った後だ。何も見つからない可能性もあるが、俺たちは二手に分かれて捜索することにした。


俺とエスカちゃんは主に一回を捜索することにした。一部屋一部屋大雑把に見て回っていく。どうせ他の騎士が詳しく調べているだろう。となれば後は直感に従って変なところを見つけるだけだ。


「えっと、ヨーダさんはアイン君のお兄さんなんですよね?アイン君って小さい頃はどんな子供だったんですか?」


そんな風に部屋を回っていると、エスカちゃんがそんな質問をしてきた。俺は足を止めてエスカちゃんの方に向き直る。


「ん?アインの小さいころか……。今とあんまり変わってないと思うけど、どうなんだろうな。あいつは俺が理解できるような人間じゃないから分かんねえや。」


「変わってない……ですか。」


「魔法に夢中で一度集中しだすと周りの話も聞こえなくなる。時たま誰も思いつかないような突拍子もない発想をして、周りの人の度肝を抜いてくる。うん、やっぱり変わってないな。」


「ふふ、そうですね。」


俺の言葉にエスカちゃんは笑顔になる。アイヴィちゃんといい、エスカちゃんといい、アインの周りの女の子はみんな良い子ばかりだ。


アインは一見自分の好奇心に従って行動しているように見えるが、その実周りのことをとても気にかけている。もし身内に何かあろうものなら、文字通り全身全霊を尽くして助ける。そんな生き方は男の自分から見てもかっこいいと思うのだから、それを間近で見たアイヴィちゃんやエスカちゃんが惚れてしまうのも無理ない。


「エスカちゃんから見たアインの話も聞いてみたいな。学院でのアイツの様子とか。」


それからは捜索もそこそこに、アインのことで話は盛り上がった。


アイヴィちゃんかエスカちゃんか、それとも両方かはたまたもっと増えるのか。将来義妹になるかもしれない人から話を聞けるのはなかなかに楽しかった。





探索も一通り終え、デザルグたちと合流する。二人も久しぶりの兄妹の会話に花を咲かせていたようだ。とはいっても、アイヴィちゃんはまだ少しデザルグの態度に慣れていないようだ。


昔デザルグがアイヴィちゃんにした行いは消えないが、これから兄妹の絆を結んでいくことだろう。


実はドレッド領でアインとアイヴィちゃんに会った時くらいに、デザルグから相談を受けていた。あいつはかなり実力主義の人間だったが、俺達兄弟の関係を見て思うところがあったらしい。

人に弱みを見せたがらないデザルグがそんな相談をしてきたこと自体、俺にとっては驚くべきことだった。だからこそ、俺はデザルグに協力して兄妹の関係修復に協力したのだ。


今回の護衛の件も、最初に言い出したのはデザルグだった。あいつの性格からして、絶対に自分からアイヴィちゃんに言ったりしないだろうから、後でこっそりアイヴィちゃんに教えることにしよう。


俺たちが合流したのとほぼ同じくらいに、部屋からアインが出てきた。


「兄さん、地図ってある?大きいやつ、できれば世界地図が良いな。」


アインの口調はかなり真剣なものだ。これは騎士団が見つけた情報を裏付けることになると、俺は確信した。





<アイン視点>


「兄さん、地図ってある?大きいやつ、できれば世界地図が良いな。」


俺の言葉にヨーダ兄さんはデザルグさんの方を見る。デザルグさんはうなずいて、鞄から一枚の折りたたまれた紙を取り出す。


机の上でその紙を広げると、そこには王国を中心とした世界地図が描かれていた。


地図、特に世界地図はかなり高価なものだ。それを持ち歩いていたということは、騎士団の方でもこの情報を手に入れていたのだろう。


俺は世界地図を睨みつけ、自分の計算結果と照らし合わせるように指でなぞる。


(転移先はここからはるか南。ヴァレンタイン領よりもっと先。それはつまり……。)


俺の指がある地点で止まる。それを見てアイヴィとエスカは息をのむ。ヨーダ兄さんとデザルグさんは腕を組んで難しい顔をしている。


「転移先はここ。帝国領(・・・)です。」


アイヴィを狙ったのは帝国。しかも、魔族までもが帝国に協力している。考えたくないが、嫌な予感だけがぬぐえなかった。


七十六話いかがだったでしょうか。ということで、今回の事件の黒幕は帝国でした。まだまだ謎は多いですが、これからは帝国との戦いがメインになっていくと思います。


次回更新は3/9(水)になります。読んでいただけたら嬉しいです。

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