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実験好き男子の魔法研究  作者: 日野萬田リン
第四章:学院対抗戦編
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第七十話:才能、そして非常事態

前回のあらすじ:ニュートは"ギフテッド"の可能性が高く、魔法の発動速度はアインより早い。


第七十話です。ニュート対アイン決着です。ちょっと短めです。


迫りくる魔法を目にして俺は思考の海から帰ってくる。壁を避けるように俺を狙ってくる魔法は相変わらず種類が多い。俺はその魔法をギリギリまで引き寄せて、横っ飛びして転がるようにしてかわす。


態勢を立て直して目の前の少年に向き直る。


彼はこれまでどれほどの苦労をしてきたのだろう。前世ではある程度そういった人に理解のある社会だったので、多少できないことがあったとしてもそれを寛容に受け入れてくれていた。


しかし、この世界ではどうだろうか。ギフテッドなんて単語はもちろん存在しない。他の人ができることが自分にはできない、それを周りは受け入れてくれただろうか。第一魔法学院という厳しい社会の中では、間違いなくつらい時もあっただろう。

そんな中で彼は、学院の代表になるまで上り詰めた。それは彼にとってどれほど大変な事だっただろうか。


俺は背筋を伸ばす。決して彼のことを侮っていたわけではないが、改めて尊敬の念を込めて彼の目をしっかりと見据える。


彼の魔法の発動速度は俺より早い。それを鑑みて彼に勝つための方法を模索する。


現状、彼の攻撃を防ぐことはできている。理由は簡単で、俺と彼では実戦経験で圧倒的に差があるからだ。父さんの訓練に始まり、魔族との戦闘や騎士団との混錬など俺には実戦の経験が多くあるのに対して、彼の方は大して実戦経験がないのだろう。

実戦経験などないに越したことはないのだが、今この場においてそれは非常に大きな差になりうる。彼の攻撃は多種多様な魔法であるが、それ自体は単調なものばかりだ。


威力はどれも同程度、軌道もまっすぐ俺に向かってくるので多少俺の方が発動が遅くても防ぐことができている。

だとすれば、俺の攻め方はこれだろう。いろいろな軌道で魔法を発動し、威力もばらばらにする。そうすれば彼は手いっぱいになるだろう。


ただし、それは俺が攻めに転じることができたらの話だ。少なくとも、彼の魔法が飛んできている間は防御に専念する必要がある。





彼の猛攻が続く。火球が飛んできたと思ったら、風の刃が続けて襲い掛かる。それだけでは終わらず、石の礫が飛んできて水の刃も飛んでくる。


俺はその攻撃を縦横無尽に動きながらかわし、時には無詠唱魔法を発動して彼の魔法を撃ち落とす。

攻められ続けてる俺の方が厳しそうに見えるかもしれない。しかし、実際は攻められている俺の方が涼しい顔をしていて、攻め続けている彼の方が額に汗を浮かべ苦しそうな表情を見せている。


彼の息が途切れ、詠唱が中断される。それはつまり、攻撃の手が休まるということだ。


俺は立ち止まる。動き回ったことでさすがにほんの少し疲れた。しかし、疲労の程度は彼には遠く及ばない。俺は落ち着いて魔力を練り上げ、多数の火球を生成する。


彼はそれを見て絶望的な顔をする。もう彼にはこれらを迎撃するほどの魔力は残っていないのだろう。


俺の魔力の量は多めなのに対して、彼の魔力の量はそこまで多くないのだろう。彼の放った魔法の数を考えれば、魔力切れになってしまうのも無理はない。それに例え魔力量が同じだったとしても、俺は最低限の魔法しか発動していなかったため、結果は同じだっただろう。

結局のところ、魔法の使い方を含む実戦経験、そして魔力量などが俺と彼の間にあった差だ。


俺は放った魔法を彼に当てはせず、彼のそばの地面にぶつける。ほんの少し困惑したような顔を見せるが、俺の意図を理解したのだろう。審判の方に向き直りおずおずと手を挙げる。


「あ……の……。こぉ……さん……し……ます……。」


呆気ない幕切れだったが、対抗戦の第三試合は俺の勝利で終わった。





試合が終了し、俺はニュートさんに近づく。そして開始前と同じように右手を差し出す。それに対して彼はおずおずと手を握り返してくる。


「ありがとうございました。まさか、無詠唱魔法より早く魔法を発動させることができるなんて思いませんでした。」


「その……、こちら……こそ。」


「どんな風に魔法が見えているんですか?あの詠唱で魔法を発動できているってことはおそらく、魔法へのイメージが独特なんだと思うんですけど。いや、もしかして記憶していたイメージを瞬時に引き出しているんですか?」


俺の矢継ぎ早な言葉に彼はたじろぐ。おっと、興奮して勢いよく話し過ぎた。


「すみません。ちょっとテンションが上がりすぎてしまいました。えっと、魔法の研究とか実験を良くしてるので、未知の現象を見るとつい。」


「いや……、大丈……夫……。君の魔法……、無詠唱……すごい……。」


「ありがとうございます。あなたとは今度ゆっくりと話をしてみたいです。対抗戦が終わって帰るまでに一度時間をいただけませんか?」


俺の言葉に驚いたような表情を見せる。


「えっ……と……。僕……と……?時間は……あるけど……。」


「ぜひお願いします!」


審判から会場を早く降りるように促される。俺たちは反対方向に会場から降りる。そこで気が付く。観客席からものすごい歓声が聞こえてくることに。

この歓声に気が付かないとは思ったより集中していたようだ。彼の魔法を避けるのにも相当神経を使っていたから、どっと疲労感があふれ出てくる。


俺は重たい体に鞭打って元の席に戻ろうとする。するとスタッフの人だろうか、慌てた様子で俺の隣を駆け抜ける。そして、審判の人に何かを耳打ちする。審判の人が驚いた顔をして会場の真ん中に立つ。


「問題が発生したため、第四試合は一時延期とさせていただきます!連絡があるまで、皆様しばらくお待ちください。」


問題?何も聞いていないが、何かあったのだろうか。先ほど俺の横を走り抜けたスタッフを捕まえて、事情を聞く。選手である以上聞く権利くらいはあるだろう。


「――。」


スタッフの言葉を聞いて頭が真っ白になる。すぐに俺は走り出し、アイヴィとエスカがいるはずの救護室の方へ向かった。


七十話いかがだったでしょうか。アインの実戦経験を考えると決闘形式はどうしようもないですね。呆気ないですがこれでニュート戦は終了です。そして、救護室では何があったのか……。


次回更新は2/18(金)になります。読んでいただけたら嬉しいです。


お知らせ:以前投稿した短編『ただ一つの変わらない日常』がSVB大賞を受賞しました。自分の作品がこのように評価していただけて非常に光栄に思います。もし良かったら、そちらも読んでいただけたら嬉しいです。

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