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実験好き男子の魔法研究  作者: 日野萬田リン
第四章:学院対抗戦編
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第六十九話:炎の竜、そして才能

前回のあらすじ:アイヴィの必殺技でついにアイヴィ・エスカペアが勝利を収める。


第六十九話です。ニュート対アインです。ニュートという少年に隠された秘密とは……?


「次は君の番だね。がんばって。」


俺がゆっくりと席を立つと、アイズ生徒会長がこちらを向いて声をかける。俺はその声に対して、片手をあげて応える。そして、そのまま準備を始める。


アイヴィとエスカが救護係の人に抱えられて運ばれていくのを横目に見ながら自分の集中力を高める。アイズ生徒会長もそうだが、アイヴィとエスカの二人も最善を尽くしていた。そんな三人に続くのだ。俺だって最善を尽くして見せる。


ゆっくりと深呼吸する。俺が立っている位置の反対側に一人の少年が立っているのが見えた。その少年はひどくおどおどした様子で、アイヴィ・エスカと同様に救護係の人に抱えられているリン・ルン姉妹を見つめている。おそらく、この少年が俺の対戦相手であるニュートという人なのだろう。


その少年は今度は俺の方を見る。ぱっと見はどこにでもいるような普通の少年に見える。しかし、絶対に油断はしてはいけない。彼は平民の身分ながら、第一魔法学院の代表としてこの場に立っているのだ。それはつまり、あのレオ第二王子や双子の聖女が代表として認めたということだ。

彼らが簡単に平民の実力を認めるとは思えない。彼らが認めるだけの理由があるはず。それがどんなものなのか知りたい好奇心もあるが、無詠唱魔法というアドバンテージがある以上、速攻で終わらせてもらうとしよう。


会場の準備も整ったようで、審判の人から上がるように指示される。俺はその指示に従って会場に立つ。俺と同じように先ほどの少年が上がってくる。


俺はその少年に近づき右手を前に出し、自己紹介する。


「アインシュ=ヴァレンタインです。よろしくお願いします。」


彼は平民とはいえ、年上なので最低限の礼儀を整えて挨拶する。彼はビクッと体を揺らす。そしておどおどしながら彼も右手を出してくる。


「あっ……、その……、ょ……しく……。」


俺もちょっと動揺する。この世界に生まれてから初めて会ったタイプの人間だ。今の会話だけで分かる。彼はコミュニケーションが苦手なのだろう。


しかし、逆に考えれば彼の実力は第一魔法学院の中でもずば抜けているのかもしれないと思えてきた。第一魔法学院の生徒はほとんど貴族だ。その中で平民が目立つことになると、面白く思わない人だっているだろう。コミュニケーション能力が高ければうまく立ち回ることもできるかもしれないが、この様子だとそれは無理そうだ。だったら実力でそういった声を黙らせているのではないだろうか。


俺は改めて気を引き締める。決して油断していたわけではないが、気を付けるに越したことはない。


審判の呼びかけがあり俺とニュートさんは所定の位置につく。俺たちが準備できたことを確認して審判が大きく手を挙げる。数瞬、審判が勢いよく手を振り下ろす。


「対抗戦第三試合。ニュート対アインシュ=ヴァレンタインの対戦を始める。……始め!」





無詠唱魔法の一番の利点はその発動速度。俺は先手必勝とばかりに火球を三個作り、ニュートさんの方に飛ばそうとする。その瞬間、俺は驚きで目を見開いた。


迫りくる風の刃に水球、そして火球。大きさ自体はそうでもないが、三種類の魔法が俺の方に向かってきていた。俺は慌てて発動させていた火球を使って相手の魔法にぶつけ相殺を図る。


(早すぎる。もしかして審判のコールの前に詠唱していたのか?)


先ほどのニュートさんの魔法の発動は俺よりも明らかに早かった。しかも複数種類(・・・・)の魔法なのに、だ。


俺はいったん"見"の姿勢をとる。先ほどの異常な速度の魔法、この正体を見極めるためだ。俺はニュートさんの方をしっかり見る。


「……。」


口元が少し動いたのが見えた。何を言っていたのかまでは分からない。その瞬間、先ほどより種類を増やした魔法の束がこちらに襲い掛かってきた。


俺はできる限りかわして、当たりそうな魔法にだけ火球の魔法を使って撃ち落とす。


(おかしい。さっきの口の動きだと多くの詠唱はできなかったはずだ。それなのにこんな数の魔法が飛んでくるはずがない。どういうことだ?)


「『うぃ』、『ぱ』、『とら』、『ぱ』。」


多くの魔法が再び迫りくる。今度はかすかにだが聞こえた。しかし、俺には意味のない単語の羅列にしか聞こえなかった。にもかかわらず、魔法は正常に発動し俺に襲い掛かってきている。


何とかギリギリのところで迎撃しつつ、俺は観察を続ける。そして、同時に考察を行う。


(魔法に重要なのは"イメージ"だ。詠唱の本質はそのイメージの補完。もしかして、あの意味わからない単語の羅列が詠唱なのか?)


そう考えている間にも意味の分からない単語の羅列を発した後に様々な魔法が飛んでくる。


俺はいったん土の壁を作り出し、それを遮蔽にすることで安全地帯を作り出す。魔法が防げたことを確認してほんの少しだけ思考にふける。



例えば『炎』と一言詠唱して火をおこすことは可能だ。しかし、それを火球の形にして敵の方に飛ばすとなれば、しっかりとしたイメージを持つために詠唱をする必要がある。


果たして意味のない単語で魔法を発動させることは可能か?答えはイエスだ。他人にとって意味のない単語であっても、自分にとって十分に事象をイメージすることさえできれば魔法は発動するだろう。

そうすればどのような魔法が発動するか事前に察知することができず、敵は対応が遅れる。一種の暗号のようなものだ。決闘の形式であれば、非常に有用であろう。


では、暗号化した単語の羅列によって魔法を連続することは可能か?この質問には非常に難しいと答えざるを得ない。再三言うように、魔法に重要なのはイメージだ。連続して魔法を発動するということは、連続して別の魔法をイメージすることに他ならない。


一つ魔法を発動して、改めて別の魔法を発動する。頭の中のイメージを切り替える必要があるので、別種の魔法を同時に発動するのは非常に難しいのだ。

俺の無詠唱魔法でも、複数の魔法を完全に同時に発動するのは難しい。どうしてもタイムラグが発生してしまうのだ。


しかし、ニュートさんの魔法はそのタイムラグがほとんどない。俺にとっては意味のない単語を羅列しているようにしか見えないが、彼にとっては一つ一つにしっかりとした魔法のイメージがある。しかもそのイメージの切り替えが異常に早い。ほとんど無いと言っても良い早さだ。


"ギフテッド(・・・・・)"


俺の頭の中にふとこの単語が思いつく。ギフテッドとはある特定の分野において異常な才能を発揮した人のことだ。かつて天才と呼ばれていた人たちはこのギフテッドが多かったとも言われている。

だが、ギフテッドは単純に天才というわけではない。ギフテッドの中には発達障害を併発している人も多く、社会に馴染めなかったり、苦手なことは本当に苦手で何もできないという場合も多い。


かつて湯川()が生きていた世界では、研究者という立場上ギフテッドの人と会うこともあった。会った人たちはみな異常と言えるほどの才能を発揮していた。


もしかしたら、このニュートという少年もそう(・・)なのかもしれない。


だとすれば彼がコミュニケーションを苦手としていることも、異常な速度で多種の魔法を発動させているのも納得がいく。全く関連が無さそうな単語の羅列で魔法を発動していることも、だ。


どれも俺には不可能なことだ。もしかしたら"天才"という言葉は俺のような人間ではなく、他の人には真似できない才能を持つ人に与えるべき称号なのかもしれない。



六十九話いかがだったでしょうか。ギフテッドという単語は実際にある医学用語です。今の社会でこの言葉が浸透しているとはとても言えませんが、そういう人たちは確かにいます。ニュート君が使っている技術は他の誰にも使えませんが、アインが使う無詠唱は他の人たちも使える、この二つを対比したくてニュート君に登場してもらいました。でも本文でそれを表現するのが難しい……。


次回更新は2/16(水)になります。読んでいただけたら嬉しいです。

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