第六十八話:攻略、そして炎の竜
前回のあらすじ:結界攻略のカギは"ごり押し"?
第六十八話です。視点があっちこっちしてしまいました。時系列順にしようと思ったのですが、ちょっと変になってしまったかもしれません。
追記:"双子の聖女"の姉の名前をジンからリンに変更しました。理由はアインの父親と名前が被っていたためです。
<アイヴィ視点>
数多くの光線が迫る。何とかギリギリのところで魔法をぶつけて相殺する。しかし、相殺しきれなかったいくつかの光線が私の後ろにいるエスカさんの方へ飛んでいく。エスカさんはよろけながら横に倒れるように魔法を避ける。
既にエスカさんをかばうほどの余裕は私には残っていない。私たちは体力的にも精神的にも、魔力的にも限界だ。エスカさんも立ち上がるのにすら苦労するほどだ。
審判の方をちらりと見る。その目にはいつ止めるか悩んでいるようにも見える。このままでは審判の判断で試合は終了となり、私たちは負ける。
何をするにも次が最後のチャンスだろう。しかし、あの結界を破る方法は全く思いつかない。
沸き上がる歓声の中、アイン君の声が聞こえる気がした。
最後の力を振り絞る。アイズ生徒会長は最後負けるかもしれないと分かっても最後まで諦めない姿勢を見せた。その後輩である私たちも簡単に諦めていいわけがない。
限界まで魔力を練り上げる。イメージするのは炎の竜。レオ第二王子が使ったあの魔法。
(いや、あの魔法よりもっと大きく。もっと強く。)
アイン君は言っていた。魔法で重要なのはイメージだと。
先ほどレオ第二王子が見せてくれた炎の竜。それは私がかつて絵本で読んで憧れた勇者の魔法。子供のころからずっとイメージはし続けていた。目を閉じていたってはっきりとその形を想像することができる。
急に会場が静かになる。先ほどまでの歓声は全く聞こえない。
私はリンさんとルンさんをまっすぐに見据える。ルンさんは変わらず膝をつき祈る姿勢を変えていないが、こちらを見るリンさんの目は驚愕に見開き、絶句していた。
<三人称視点>
今にも炎の竜が迫らんとするリン=ライト。彼女は自分の見たものが信じられなかった。
(ありえない、だってあれは、勇者の子孫の特別な力を持った人が使える魔法じゃないの?)
リンは心の中で悲鳴を上げる。それは現在では第二王子しか使えないと言われている魔法、それにもかかわらず目の前に立つアイヴィという少女が発動させている。
リンの目にはこの少女の決意のこもった目が、不気味で恐ろしく見えた。
リンだけではない。他にもこの状況を信じられていない人は多かった。
レオ=ノーベル第二王子。来賓用の観客席にて彼もアイヴィが発動させた魔法を見て歯を食いしばっていた。
「はは。アインシュ=ヴァレンタインに教えを乞うた者と聞いていたが、なかなかにどうして。面白い令嬢ではないか。」
それは彼の父親であり、現国王でもあるロウ=ノーベル国王。息子の活躍を見に来ていた王は、第二魔法学院の優秀な人材を見ることができて満足そうな顔である。
「あまり結果が出ないようなら予算の減額も考えていたが、第二魔法学院も捨てたものではないということだな。はっはっは。」
レオ殿下としては第二魔法学院を圧倒的な力で叩き潰し、第一魔法学院の、ひいては自分自身の評価を上げようと思っていたのだが、想定通りにことが運ばずに歯を食いしばることしかできない。
同じく来賓用の観客席。アインシュ=ヴァレンタインの母親クレア=ヴァレンタインも満足そうな顔をしていた。
「あれが手紙にあったアイヴィちゃんね。ふふ、良い感じにアインの影響を受けてるみたいね。彼女にとって自分のしたことがどれほど影響力があるか分かってないんでしょうね。」
クレアはこの次の試合での息子の活躍を期待して、静かにほほ笑んだ。
<アイヴィ視点>
私は頭上にある炎の竜を見上げる。それは私が子供のころからイメージしていた理想の魔法。なぜだか分からないけれど、この魔法ならいける。そんな気がしていた。
「行きます。」
静かに宣言する。私の言葉に呼応するように、炎の竜は結界へと向かっていく。その竜は大きく口を開け、結界ごと飲み込まんとする。
炎の竜が結界とぶつかると同時に、凄まじい衝撃波が周囲へと広がる。炎の竜と結界の力が拮抗していることを示すように結界が波打つ。
ほんの一瞬。私にとっては非常に長いその刹那、とうとう結界にひびが入る。次第に結界を維持していたルンさんの表情が苦悶にゆがむ。隣に立っているリンさんも焦ったような表情を見せる。
魔力がごっそりと無くなってしまったためか、立っていることすらしんどい。だが、何とか踏ん張って倒れないようにする。
静まっていた観客席が急に沸き上がる。それとほぼ同時にガラスが割れるような音がなって、結界が壊れる。そのまま私の魔法は地面へとたたきつけられ、轟音とともに砂埃が巻き上がる。
私の意識がだんだんと薄れていくのを自分でも理解した。そして、そのまま前へと倒れこむ。
<三人称視点>
アイヴィの意識が薄れ前へゆっくりと倒れる。倒れこむ前に、彼女を支える腕が一つ。彼女は安心したようで、笑顔を浮かべたまま意識を失った。
そんな二人を狙って、砂埃を払いながら一本の光線が近づいてくる。
晴れた砂埃の先には意識を失っているルンと、必死の形相をしたリンが片手を前にして立っていた。
「ああああああァ!」
リンの決死な叫び声が鳴り響く。しかし、そんなリンの最後の抵抗を一人の少女が打ち砕く。
「私は信じていました。さすがです、私の親友。」
リンの放った光線を雷光が打ち消す。そして、もう一本雷光がほとばしり、それが的確にリンさんの意識を刈り取った。
審判の試合終了のコールが鳴り響く。ここに対抗戦第二試合は終了した。結果はアイヴィ・エスカペアの勝利に終わった。
六十八話いかがだったでしょうか。ようやく第二戦が終わりました。自分でも忘れかけていましたが、アインの母親はちゃんと見に来ています。次回はアインの番です。
次回更新は2/14(月)になります。読んでいただけたら嬉しいです。




