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実験好き男子の魔法研究  作者: 日野萬田リン
第四章:学院対抗戦編
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第五十九話:生徒会室、そして友人

前回のあらすじ:対抗戦のメンバーにアイヴィとエスカも選ばれた。


第五十九話です。自分はあまり年下や後輩が活躍しても気になりませんが、それを気に病む人もいるんですよね。


対抗戦のメンバーに選ばれた俺、アイヴィ、エスカの三人は学院の中で生徒会長を探していた。対抗戦についての打ち合わせをしたいと言われていたので生徒会室に寄ったのだが、生徒会室には誰もおらず鍵も開いていなかったのだ。

生徒会室の前で待ちぼうけを食らうのもどうかと思ったため、生徒会長がいるであろう教室まで探しに行こうという話になったのだ。


廊下を歩いていると、俺たちの向かっている先から騒がしい声が聞こえてきた。


「生徒会長、なぜ一年生が対抗戦の代表なのでしょうか!?私の方が絶対に活躍することができるはずです!」


「確かに、一年生が代表と聞いて不安になる気持ちは分かる。だが、一年生とはいっても選ばれたメンバーの実力は本物だ。僕がこの目で確認したことだ。」


どうやら生徒会長と女子生徒が言い合いをしているようだ。いや、言い合いというよりは女子生徒が一方的に文句を言っているようだ。


アイヴィとエスカの二人が参加表明をした翌日、生徒会長は「念のため、二人の実力を見たい」と言ってアイヴィとエスカで模擬戦を行ったのだ。俺たちにとってはいつもの光景ではあったが、生徒会長の顔は引きつっていた。


忘れがちではあるが、無詠唱魔法はこの世界では高等テクニックだ。それを平然と行っている一年生はそれだけでも常識外れと言えるだろう。

そのことをアイヴィとエスカも忘れてしまっているあたり、彼女らも随分と常識はずれな俺に染まってきたと言えるだろう。


「あのアインシュ=ヴァレンタインなら分かります。魔族との戦闘は私も見ていましたから。ですが、他の二人はアインシュ=ヴァレンタインの腰巾着でしょう。なぜ、そんな人たちが……。」


そこまで言って、俺たちの存在に気づいたようだ。遅れて生徒会長も俺たちに気づく。そこで良いことを思い付いたと言わんばかりに手をたたく。


「そこまで言うのであれば、実際に戦ってみれば良いだろう。そうだな、対抗戦のルールに従って二対二なんてどうだろうか?彼女たちにとっても良い練習になるだろう。」


急な話の振りようにアイヴィが驚いた顔をする。エスカは冷静そうな顔をしているが、闘志が隠しきれていない。


「私では練習相手にしかならないと……。良いでしょう。ただし、私が勝てばメンバーを変更してもらいますがよろしいですね。」


「その条件で構わないよ。では今日の放課後に訓練場で。」


女子生徒はアイヴィとエスカを睨みつけて、廊下を反対方向へ歩いて行った。生徒会長がこちらに寄ってくる。


「やれやれ、本当に困ったよ。今年の一年生の実力もろくに知らずに文句を言う輩が多いのなんの。メンバー変更を要求するなら君たちじゃなくてもう一組の方だろうに。」


二対二の方も二組選出されている。メンバーに悩んだ結果、生徒会の二人を生徒会長は選んだのだ。その二人は生徒会のメンバーに選ばれるだけあって、同じ学年の中では頭一つ抜けている実力とは聞いている。

この言い方を鑑みるに、生徒会長は生徒会の二人よりアイヴィ・エスカのコンビの方が強いと考えているのだろう。自分が教えた二人がそのように評価されているのが何だか嬉しく感じる。


「今日の練習相手はあの方ということですね。ふふ、腕がなりますわ。」


「えっと、エスカさん。そんなに張り切らなくても。先輩だし……。」


「いけません。私たちがなめられるというのは、私たちに魔法を教えてくれた師であるアイン君がなめられているということになります。徹底的に叩き潰さないと。」


それは論理が飛躍しているし、言いすぎなのだがやる気になっているなら別に良いだろう。さて、放課後が楽しみだ。





<アイヴィ視点>


「さあ、そろそろ始めようか。」


生徒会長の声が響く。私の隣にはエスカさんが威風堂々とした態度で立っている。そして向かいには女性の先輩が二人。彼女らは私たちに敵意を隠そうせず、今にもとびかからんとばかりにこちらを睨みつけてくる。


「ルールの確認をするよ。対抗戦と同じで、物理的な攻撃は禁止。それと中央の線を越えて相手に近づくことも禁止。医務室の先生にも来ていただいているから多少の怪我は良いけど、大けがするような魔法は禁止。もし、ルール違反をしようものなら僕とアイン君で全力で止めにかかるからね。」


そういって医務室の先生とアイン君に続けて視線を向ける。


私は顔を伏せる。そもそも、私は対抗戦のメンバーに選ばれるような人間ではないのだ。魔法の実力ではない、精神的な問題だ。

自分でも理由は分かっている。魔力が豊富にもかかわらず魔法を使うことのできなかった私は、家族の間でも前に出るようなことは咎められ続けてきた。


対抗戦のメンバーに選ばれることが名誉だということは分かっている。しかし父や兄に知られたら、また「お前なんかが。」と咎められるような気がしてくるのだ。


エスカさんの言葉でとっさに「出る」なんて言ってしまったが早計だったかもしれないと、少し後悔している。だって、「王都でデートなんてできる機会、なかなかありませんね」なんて言われたら仕方ないじゃないか。


「顔を上げてください、アイヴィさん。」


思考が中断されて、エスカさんの方を見る。


「過去にあなたがどんな経験をしてきたか私は詳しくは知りません。ですが、これだけは言わせてもらいます。あなたはもっと自信を持つべきです。」


自信。昔に比べたらマシになった方ではあるが、やっぱり子供のころから染みついた性分というのはなかなか変えられないものなのだ。


「……これは友人(・・)として言っているのよ。」


「え?」


小声で聞こえにくかったが、今確かに"友人"と……。


思い返す。今まで自分に"友人"と言える人間はいただろうか。ドレッド公爵家に取り入ろうと私に接触してくる人間は多くいた。しかし、そのような連中も私の家での扱いを知ると離れていった。

そんな色眼鏡なしで見てくれたのはアイン君が初めてだったかもしれない。そんなアイン君つながりで知り合ったが、エスカも私に公爵家の身分など関係なく接してくれていた。


私は顔を上げ、まっすぐと前を見据える。性格はそう簡単に変わるものではない。それでも一歩踏み出してみよう。


最終的に私たちは無詠唱魔法によって、圧倒的な勝利を収めたのだった。


第五十九話いかがだったでしょうか。大分前向きになって来ていたアイヴィですが、エスカの一言でさらに一歩前に踏み出しました。そして戦闘シーンもなくなった先輩には申し訳ない気持ちでいっぱいです。対抗戦が始まると戦闘シーンをめちゃくちゃ頑張らなきゃいけないので、ばっさりカットしました。


次回更新は未定です(1月中旬くらいかも)。少なくとも年内の更新はこれで終わりです。気が向いたときにまたフラっと見に来てくれたら更新しているかもしれません。それでは、良いお年を!

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