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実験好き男子の魔法研究  作者: 日野萬田リン
第三章:夏季休暇編
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第五十二話:魔物退治、そして変異種

前回のあらすじ:旧墓地の魔物を討伐していたら、地下へと続く怪しげな階段を発見した。


五十二話目です。前線を戦士が守って、後ろから魔法使いが攻撃する。非常にバランスが良いですよね。前線を張りながら魔法で攻撃できるアインがおかしいんです。


地下へと続く謎の階段を歩いていく。神官のエヴァ曰く、貴族の屋敷ならこういった逃走用の地下通路があるのは珍しくないが、貴族ではない墓守の屋敷にこのような通路があるのはなぜか分からないとのことだ。


よく考えれば、この屋敷に住んでいたという墓守がどんな人間だったのか俺たちは全く知らない。もしかしたら、墓守はこの地下で何か怪しい実験をしていたのかもしれないし、怪しい儀式でも行っていたのかもしれない。


階段を下りた先には少し広い部屋があった。そして俺たち全員が息をのむ。そこにはかなりの数のレイスが部屋中を徘徊していた。


俺たちはいったん部屋を出ていき、距離をとってから小声で相談を始める。


「何であんな数がいるんだ?今まで倒してきた分と同じくらいいるぞ。」


斥候のエルが会話の口火を切る。その言葉は俺達全員の内心を表していた。その言葉に険しい顔をしてリーダーのジョージが答える。


「最悪だ。あれだけの数が一か所にまとまるというのは本来あり得ないはずだ。それが起こってるなら理由は一つ、変異種が存在するのだろう。」


「変異種?」


ジョージの言葉に俺は疑問の声を上げる。


「変異種というのはその名の通り、魔物が変異したものだ。多くの場合、変異種は元となった魔物より強力になる。例えば、知性を得たり、同種の魔物を従えて群れを形成したりとな。変異種がいるだけで任務のランクが一つか二つ上がるほどには厄介な存在だ。」


「ここ最近旧墓地の近辺で魔物の数が増えていた理由も多分そいつのせいね。どこから呼んできたのか知らないけど、変異種がいる場所は魔物が多くなる傾向があるわ。」


エヴァが補足する。変異種という言葉は初耳だったが、普通の動物にも突然変異というものが起こる以上、魔物にそういうことが起こっても不思議ではないだろう。

個人的には興味をそそられる対象ではあるが、研究するには如何せん多くの場合危険すぎる。


「俺たちにとっての最善はここで引くことかもしれないな。」


ジョージの言葉にエルがかみつく。


「は?リーダー、それだと依頼失敗になるけど良いのか?」


「現状あれだけのレイスに加えて変異種を相手にするのは難しいという判断だ。魔法使いがアイン君しかいないからな。さすがに危険すぎる。それに、これは事前に聞いていた情報と明らかに異なっている。俺たちに非はないわけだからお咎めはないだろう。」


冒険者たちにとって、依頼を受ける際の情報というのは極めて重要視されている。もし情報が間違っていれば、危険性は大きく上がり命に関わるかもしれないのだから当然だ。


「だが、今変異種を倒しておきたい気持ちもある。ここは町からそう遠くない。今は旧墓地の内部だけに魔物の発生は収まっているが、遅くなればなるほど魔物の勢力が拡大し対処が難しくなるという可能性もある。」


ジョージは葛藤しているようだ。Bランクパーティとして今回のような事態には対処しうる実力を持っているが、今は貴族の子供を助っ人としている以上無理はできないという葛藤だ。

その葛藤を察し、俺はある提案をする。


「様子見で一回挑戦してみるのはどうですか?部屋の奥には入らず、すぐに引くことができる位置から俺が魔法で攻撃する。無理そうなら引くし、行けそうならそのまま攻撃を続けるというのは。」


ジョージは苦々しい表情を浮かべる。俺の提案を受けたいが、悩んでいるというような表情だ。


「俺の事なら気にしなくて大丈夫です。それなりに修羅場をくぐって来てますので。」


「……、分かった。君の負担が大きくなってしまうのは申し訳ないが、よろしく頼む。」





魔物がうようよしている部屋まで戻ってきた。作戦は今までと同じ。前線にジョージとカール、その後ろから俺が魔法で攻撃する。

少し違うのは残り二人、エヴァとエルの役割だ。先ほどまでと違い、今回は退路の確保を最優先にしてもらっている。エルは階段の上の安全の確保。エヴァもそこですぐに治療ができるように準備してもらっている。


俺は魔物に気づかれないように周囲をうかがう。数が多い。一体に気づかれると連鎖的に気づかれて、最終的には大量の魔法が飛んでくることになるだろう。それを防ぐためにも、一回でできる限り多くの魔物を排除しなくてはならない。


どうする?どんな魔法を使えば、一気に魔物を排除できる?


俺は考える。極大魔法クラスの魔法を使えば一斉に排除できるかもしれないが、ここは地下だ。魔法の余波がこちらに襲ってくる可能性もある。だったら、規模が小さめの魔法をたくさん打った方が良いか。

それならばと思い、俺はポケットから数枚の魔法陣の書かれた紙を取り出す。今までの闘いから、この魔法陣に書かれた魔法でレイスなら十分倒すことができるはず。


俺は二人に目配せして、魔法陣に魔力を込める。魔法陣に俺の魔力が通い、光を発する。数体のレイスが俺に気づき、襲い掛かろうと魔法を発動させようとする。


それでも俺の魔法が発動する方が早い。


「行きます。」


俺は掛け声とともに魔法陣を放り投げる。魔法が発動し、火球や風の刃など様々な魔法が一斉にレイス達に飛んでいく。

多少狙いが甘いものもあったが、大半はレイスに当たり大きな悲鳴とともにレイスが消滅していく。


一体だけ機敏な動きで俺の魔法をかわしている個体がいる。おそらくあれが噂の変異種とやらだろう。まずは取り巻きの普通のレイスを潰していこう。


俺の魔法が当たらなかった数体のレイスから魔法が飛んでくる。その魔法はジョージとカールが受け止めてくれているため俺までは届かない。その間に今度は普通に魔法を使い、一体ずつレイスをつぶしていく。


行ける。この場にいる三人全員がそう思った瞬間、変異種と思われる個体が魔法を発動する。普通のレイスの放つ魔法と違い規模が段違いだ。


カールが俺の前に出て、その大きな盾で魔法を受け止める。しかしその威力を殺しきることができず、カールの大きな体が壁まで吹き飛ばされる。


変異種の次の魔法が来るより早く俺の魔法が発動する。カールが俺のことを守ってくれたためにできた時間だ。この一撃で確実に仕留める。


風の刃が部屋の中を吹き荒れる。変異種のレイスに当たり、断末魔とともにレイスは消えていく。レイスが消えた後に残ったのはきれいな赤色をした魔核だけだった。


俺とジョージはカールを横から支えて、地上へと続く階段を上がっていった。



五十二話いかがだったでしょうか。変異種というイレギュラーに対して戦う判断をするのは冒険者としては間違っている気がしますが、放っておくと被害が拡大する可能性があると考えると人情のある人なら戦いたくなってしまいますよね。


次回更新は12/8(水)になります。読んでいただけたら嬉しいです。

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