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実験好き男子の魔法研究  作者: 日野萬田リン
第三章:夏季休暇編
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第五十一話:馬車の中、そして魔物退治

前回のあらすじ:馬車の中でエヴァに治癒魔法について聞いたところ、光魔法というものがあるらしいということを知った。


五十一話目です。人数が増えるとそれぞれの個性を出しながら話を進めることが非常に難しいと気づきました。


「完全に荒れ果てているな。墓が今の場所に完全に移ってからはここを訪れる人はいなかったという話だが、ここまでとは。」


冒険者一行とともに荒れ果てた旧墓地を歩く。そこら中に壊れかけた墓石がおいてあり、草も乱雑に生い茂っていて歩きにくい。


今のところ魔物の気配は感じられない。旧墓地の敷地はかなり広く、中心近くにある管理者の屋敷辺りに魔物がいるとのことなのでそこに向かう。


「もう一度確認をしておくぞ。魔物が現れた場合、前衛に俺とカール、中衛にアイン君、その後ろにエヴァだ。エルは他に魔物がいないか周囲を警戒するんだ。攻撃はなるべく俺とカールで受けるが、魔法の攻撃だから受けきれない可能性もある。敵の魔法には気を付けて、常に回避できるように身構えておいてくれ。いいな。」


リーダーのジョージの号令に俺たち全員がうなずく。事前に何回か言われていた内容だ。各々の役割が明確で分かりやすい。俺の役割は魔物を魔法で攻撃することだ。


出現するレイスという魔物は実態を持たず、剣などの物理攻撃は効かない。しかし、その分魔法には弱いらしく、ある程度実力を持った魔法使いであれば対処は難しくない魔物らしい。


だが逆に言えば、このパーティにおいてレイスに有効打を打てる人間が俺しかいないということだ。そのことをパーティの他のメンバー、特に斥候のエルは気にしているようだった。


その心配はもっともだろう。実際パーティの核となる攻撃役を外部の貴族の子供にやらせるなど、依頼主である公爵からの紹介でなければ間違いなく断っているはずだ。


そんな風に考え事をしていると、魔物が出現したようだ。エルの声を皮切りに全員が配置につくために動く。


レイスの見た目は幽霊(・・)と呼ぶのが一番正確だろう。半透明な体に顔がついていて、宙に浮いている。ジョージとカールが前に出た瞬間、レイスが魔法を放ってくる。普通の火球の魔法だが、数が多い。


ジョージは持っている大剣でいくつかの火球を切り裂き、カールは大盾で火球を受け止める。それでも止めきれなかった火球が俺に迫る。そこまで早くはないので、俺は余裕をもって避ける。


そのまま左手を前に突き出し、風の刃の魔法を放つ。様子見のつもりで放った大して威力の無い魔法だ。しかし、俺の魔法はそのままレイスに当たり、叫び声を上げる。まだ倒しきれてはいないが、大きなダメージを与えられたようだ。


レイスが怒りをあらわにし、再び魔法を放とうとする。しかしそれより早く、俺は先ほどより威力を高めた風の刃を放つ。レイスに俺の魔法は命中し、叫び声を上げてレイスは消滅してしまった。


想像していたより弱かったため、俺は一瞬呆気にとられる。そんな俺の困惑をよそにジョージが俺に寄ってきて肩を組んでくる。


「ふはは、君はすごいな。無詠唱魔法というのはあんなに素早く魔法を放つことができるのか。」


「本当ね。あの速さで魔法を発動できるとか、冒険者なら引く手あまたよ。」


「ちっ、確かに今のはすごかったと言わざるを得ないな。」


上からジョージ、エヴァ、エルの順である。手放しに褒められてしまい、少し照れる。唯一話していなかったカールはというと、少し悔しそうにしている。


「すまなかった、火球をいくつか反らしてしまった。本来なら前衛の俺たちが受けきらなければならないのに。」


「確かに。魔法使いっていうのは魔法を発動するときは基本無防備になっちまうから、今のは前衛として反省しなきゃなんねえな。幸い、アイン君がそんなの関係ない感じだったからよかったけど。すまん。」


「いえ、気にしないでください。二人がある程度魔法を受けもってくれたから、こちらには簡単に避けられる程度の魔法しか来ませんでしたし。」


実際二人がかなり魔法を抑えてくれたので、余裕をもって魔法を発動させることができた。普段俺が戦闘をするときは、近接戦闘を絡めながらなので魔法は単調なものになりがちなのだ。


「はい、話はそこまで。前二人は怪我とかしてない?」


「ああ、俺は問題ない。カールも大丈夫だったか?」


ジョージの声にカールはゆっくりと頷く。怪我がないことを確認した俺たちは再び魔物を探して前進し始めた。





数体のレイスを討伐した後、墓の管理者が住んでいたという館の前についた。館の周りが墓だらけで正直住みたいとは思わない立地だが、建物自体は立派なもので、何ならヴァレンタイン家の実家より大きい。屋敷も墓と同様長らく放置されていたようで、寂れてしまっている。


「屋敷の中にも魔物がいるという話なので、これから屋敷の中に入る。大分寂れてしまっているから、全員足元にも気を付けるように。」


そういえば廃墟に入る際にはいろいろ注意が必要だというのはどこかで聞いたことがある。いきなり足元が抜ける可能性もあるので、前衛陣は特に足元に注意が必要とのこと。剣を振った際に足元が抜けて隙だらけになったところをやられてしまうということが、冒険者の間ではよくあることらしい。


ギシギシときしむような音を立てて、重そうな扉を開ける。外は日光が当たっていたため、陰鬱とした空気をしているといっても、暗くはなかった。しかし、建物の中はその光が十分に入っていなかったからか、かなり暗い。


リーダーのジョージもそう感じたのか、何も言わずにエルに目配せをする。エルは荷物からたいまつを取り出し、火をつける。エントランスに明かりがともされる。ざっと見た感じは周囲に魔物は見えない。


ジョージを先頭にして屋敷の中を進む。廊下でばったりとレイスに出くわすこともあったが、特に問題なく倒すことができた。

廊下のような狭い空間で動きにくそうではあったが、逆にそれはレイスの魔法がやってくる範囲も制限されるということ。カールの盾で魔法を受けきって、俺が魔法を放って討伐という形でレイスを討伐していく。


大体一通り探索しレイスを討伐していったが、エルが怪訝な顔をして壁や床を気にしていた。ある程度レイスを討伐したからか、他のメンバーは多少気が緩んでいたところだったので、エルに声をかける。


「どうした、エル。何か気になることがあるのか?」


「……。なんか壁とか床に違和感を感じてな。ちょっと調べてみてもいいか、リーダー?」


ジョージがうなずく。エルが壁や床をあちこちと触って何かを探している。そして壁のある部分を押すと、「ゴゴゴッ」という音とともに地下へと続く階段が現れた。


すごい。正直全く気付かなかった。こういうのに気づけるのはさすがパーティの斥候を担当しているだけある。


地下へと続く階段を見て、ジョージは険しい顔をする。


「俺の勘が嫌な予感がすると告げているのだが、行かないわけにはいかないよな。」


その言葉に全員が同意する。俺たちは嫌な顔をしながらもゆっくりと階段を下りて行った。


五十一話いかがだったでしょうか。12月になりましたね。今年もあとわずか。年末に向けて忙しくなっていきますが、更新は続けていきたいです。


次回更新は12/6(月)になります。読んでいただけたら嬉しいです。

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