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実験好き男子の魔法研究  作者: 日野萬田リン
第三章:夏季休暇編
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第四十七話:先祖返り、そして勧誘

前回のあらすじ:ダニエル公爵と二人きりにされてしまった。


四十七話目です。前回に引き続き公爵との会話回です。


公爵と俺、部屋に二人取り残された状態で、粛々と話は進んでいった。今はとりあえず事件のあらましを話したところだ。


「ふむ、人体に魔石を埋め込むことでそのような事になるとはな。それで、君は魔石を引っこ抜いて彼女を助けたというわけか。」


全部は話していない。特に魔核が"魂"に相当していること、そして俺自身が"魂"に干渉してエスカを救ったことは何となく話してはならない気がした。

俺の"魂"に干渉する魔法は下手に悪用しようものなら大変なことになる。具体的に言えば、今回の事件を比較的簡単に起こすことができる。それはつまり、人工的に魔族を生み出すことすら可能かもしれないということだ。

だからこそ、この魔法は俺の中に留めるだけにしておく。


「気になることは多くあるが、とりあえずはこの辺にしておこうか。後は彼女から話が聞ければよし、というところだな。」


ようやく話が終わりそうだ。事件のあらましを公爵に話すという任務を終えて、ほんの少し方から荷が下りた気分になる。


「では、これからは別の話をしよう。」


公爵がそう告げた瞬間、俺の方に再び重い荷が載ってきた気がした。アベル先生たちと話していたため、来るかもしれないとは思っていたが、長く話をしていて忘れてしまっていた。


「アインシュ=ヴァレンタイン君。君にはこのドレッド家の魔法使いとして仕えてほしい。もちろん君が不自由にならないようにしよう。聞くところによると、君は魔法の実験を多くしているらしいね。ドレッド家が力を尽くして君の実験に協力しようじゃないか。」


「……、確かにその条件はとても魅力的に感じますね。ですが、こちらに理があるばかりでそちらに理があまりないように感じます。」


今出されている条件は俺にとって理のあるものばかりだ。俺がいることによってドレッド家にどのような利益が出るのだろうか。


「君は自分の価値を理解していないのかい?私は娘の手紙で君のことを知った時は驚愕したよ。その歳で無詠唱魔法を使いこなすだけでなく、剣技もタレスに認められるほど。さらには無詠唱魔法を人に教えることができる。君の価値は計り知れないよ。」


一呼吸おいて、公爵はさらに話を続ける。


「はっきり言おうか。君が今まで通り生活をしているだけで、魔法の技術に関して大きく発展するだろう。君がもたらす発展をいち早く我が領が享受する。それだけで我が領地にとっての大きな利益となるだろう。分かってくれたかな。」


ある程度評価されているとは思っていたが、まさかここまで評価されているとは。


「自分のことをそこまで評価してくれて光栄です。つまり自分はいつも通り魔法の研究を続け、その成果をドレッド家に渡せば良いということでしょうか?」


「"成果を渡す"だけではないかな。君の魔法技術を我が領の騎士団や兵士たちに教えるというのもしてもらうだろう。そして君自身の実力を鑑みるに、騎士団や冒険者の仕事を手伝ってもらうこともあるだろう。」


おおよそ予想通りだ。公爵が考えているメインの仕事はこちらの方だろう。つまるところ、兵力の増強を考えているのだろう。

無詠唱魔法を魔法を使える兵士全員が俺レベルまで使えるようになれば、はっきり言って国内一の兵力になることは間違いない。なんなら、そのレベルの兵力を公爵が持っていれば、国盗りを考えていると王に思われてしまっても仕方ないだろう。


公爵がどこまで考えているのか分からないが、俺の返答は実は話を聞く前から決めてある。


「とてもありがたい話ではあるのですが、私はまだ魔法学院の学生に過ぎません。まだ将来のことは決めていませんので、返答はもうしばらく待っていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」


公爵は満足げにうなずく。


「うむ、君にとって重大な決断になることは間違いないだろうからな。今ここで決めろとは言わぬさ。」


良かった。今ここで決めろと言われたらどうしようかと思った。けど思った以上にあっさりだな。まだ何かあるのだろうか。


「ふむ、その顔では何か察しているのか?そう構えるな。確かに、少し頼み事をしようとは思っているが、そこまで警戒されるいわれはないぞ。」


やはりまだあったか。だが頼み事とは?


「お試しと言っては何だが、君にほんの少し手伝いをしてもらいたくてな。さっき言ったように、少し冒険者の仕事の手助けをしてもらいたいのだ。」


冒険者の手助け……。何か言われる可能性は考えていたが、この展開は完全に予想外だ。しかも話自体は興味をそそられる。

今まで俺があったことのある冒険者は一組、このドレッド領に来る時の護衛の冒険者たちだけだ。彼らの話はとても面白かったし、道中で現れた魔物の観察もなかなかに面白かった。


「なるほど、冒険者には興味があるのか。それはちょうど良いかもしれんな。実は冒険者にとある依頼をしていたのだが、その冒険者のチームの一人が怪我をしてしまってね。君がいれば冒険者たちも依頼を完遂できるだろう。」


そんなに俺は顔に出やすいのだろうか。さっきから随分と表情から自分の思考を読まれてしまっている気がする。


「依頼内容は魔物退治。剣などの物理攻撃が効きにくく、魔法主体で戦うことになるだろう。冒険者チームの欠員というのが魔法使いでな。依頼の速やかな完遂が困難になったと泣きついてきたのだよ。本来なら別の冒険者を探すところなのだが……。ああ、もちろん報酬は冒険者たちの分とは別に用意しよう。」


俺が断った場合、別の冒険者を探すことになるのだろう。危険はあるかもしれないが、魔族や魔王以上の脅威ということはないだろう。しかも、公爵家からの依頼を受ける冒険者ともなれば間違いなく経験豊富、もしくは有望な冒険者なはずだ。そういった人たちとのパイプを作っておくのもありなのかもしれない。

それにこの程度で"恩を売る"ということにはならないかもしれないが、公爵家との話の材料になるかもしれない。


「分かりました、その依頼引き受けます。」


「それは良かった。詳細については後で書面にしてバースから渡してもらおう。話は以上だ。長々と付き合わせてしまって悪かったな。」


「いえ、こちらとしても公爵との話は楽しかったです。それでは失礼します。」


俺は残っていた紅茶を一気に飲み干し、部屋を出る。部屋の前にはルカさんが待機していたので、二人の居場所を聞く。二人は今庭を見ているとのことなので、ルカさんに案内してもらうことにした。



四十七話いかがだったでしょうか。あまりにも長々としすぎたので、エスカの件はばっさりカットすることとなりました。物理攻撃が効きにくく、魔法が有効な魔物……、いったいどんな魔物なんだ。


次回更新は11/24(水)になります。読んでいただけたら嬉しいです。

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