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実験好き男子の魔法研究  作者: 日野萬田リン
第二章:学院編
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第四十話:魂、そして決着

前回のあらすじ:一つの体に二つの魂、この状況からヒントを得たアインはエスカを助けるべく決意を固める。


四十話目です。キリのいいところまで詰め込んだら、見事に字数が多くなってしまいました。ちょっと長いですが、読んでいただけたら嬉しいです。

魔王とタレス騎士団長、二人の戦いは一進一退の攻防を繰り返しいまだに終わりが見えなかった。騎士団長は型にはまったようなきれいな太刀筋で、早く・強く・正確に剣を繰り出す。魔王は型にはまらない自由な剣で、身体強化された肉体の力でそれに柔軟に対応し、さらには反撃まで繰り出していた。

少し距離を取れば、両者の間で風と雷の魔法が飛び交い、隙が見えたとみるや再びどちらかが切り込んでいく。


「かか、懐かしいぞ!この緊張感のある戦い、しばらくぶりじゃ!ほれ、速度を上げるぞ、対応してみせい!」


「ぬう!?」


恐ろしいことに魔王の速度が最初よりますます上がっていっている。今では騎士団長も防戦一方となってきているようだ。魔王の素早い剣を何とか防御するが、最後に繰り出された回し蹴りに反応することが出来ず、俺の近くに吹き飛ばされる。


騎士団長は汗をぬぐい、肩で息をする。俺はそんな騎士団長にゆっくりと歩み寄る。騎士団長もこちらに気付いたようで、ちらりと一瞬だけ視線をこちらに向けるが、すぐに魔王の方に視線を戻し警戒をあらわにする。


「青臭い理想論だってのは俺だって分かっています。それでもやっぱり俺はエスカを助けたい。」


「……策はあるのか?」


騎士団長はこちらを見ずに俺にそう問いかける。介入するタイミングはいくらでもあった。この一息つくタイミングでの介入に意味があると判断してくれたのだろう。俺は騎士団長の質問に答える。


「……成功する可能性は限りなく0に近いでしょう。でも、0ではない。大きな隙を作っていただけたら、やって見せます。」


騎士団長は黙り込む。どうするべきか悩んでいるようだ。


「一度だ。一度だけチャンスをやろう。もしそれに失敗したら、なりふり構わず奴を殺す。この身に代えても。いいな?」


俺は大きく頷き騎士団長の隣に立つ。武器を持っていない俺にできることは魔法による援護だ。懐から魔法陣を取り出し、魔力を流し込む。風の刃や火球など多くの魔法が発動し、魔王に襲い掛かる。


「かか、良いだろう。二人同時に相手してやろう。我の雷からは誰も逃れられん!」


そう言って、俺の魔法をすべて撃ち落とす。騎士団長は自分の周囲に風をまとい、それを噴出する推進力とともに魔王へ突進する。魔王もそれに反応し持っていた剣で騎士団長の魔剣を受けようとする。

しかし、騎士団長は魔剣から突風を発生させ魔王の態勢を崩し、思いっきり魔王の持っていた剣を弾いた。剣を落とすまでは至らなかったが、魔王に大きな隙が見えた。それを確認した俺は魔力の膜(・・・・)で全身を覆ってから、魔王の前に転移する。


(魔王の態勢は完全に崩れたまま。いける!)


俺は手をまっすぐと、魔王の胸にある魔核に伸ばす。俺の手が届く直前、魔王が不気味に笑っているのが見えた。


「何をするか知らんが、やらせるわけなかろう!」


そう言って魔王は激しい雷撃を発生させた。とてつもない轟音とともに、俺に雷が降り注ぐ。魔王が高笑いしているのが聞こえる。俺を殺したと確信しているのだろう。俺はその雷撃を意に介さず、魔核に手を触れる。


「ばかな!?なぜ死なん!?」


魔王の顔が驚愕に染まる。やったことは簡単だ。自分の体の周りに電気を通しやすい膜(・・・・・・・・・)を形成し、その膜を通して雷を地面に逃がしただけだ。前世の知識で電気については良く知っている。その性質さえ知っていれば、はっきり言って魔王の雷撃は怖いものではない。まあ、この方法を思いついたのは一度電気を食らってからだったが。


俺は残っていた魔力をすべて注ぎ込む勢いで、魔核に魔力を流し込み魂への干渉をイメージしながら魔法を発動させる。そして、俺の目の前は真っ白になった。




<エスカ視点>


(ここは、どこでしょうか?)


気が付いたら私は真っ白な空間に一人立っていた。確か、私はコッド先生の実験所にいたはずだ。魔核を胸の上に置かれてからの記憶がない。


(ここは天国でしょうか?あのような実験だったのです。命を落としていても不思議ではありませんね。)


心の中で、一人ごちる。そして膝から崩れ落ち、涙があふれる。自分の不甲斐なさ、後悔、そして寂しさ。多くの感情がごちゃ混ぜになってあふれてくる。


「……なんで私が……こんな目にっ」


両手であふれ出る涙をぬぐう。その際に妙な抵抗を感じたので見てみると、手に枷のようなものがはめられていることに気付く。同じようなものは足にもつけられており、鎖のようなものが伸びていた。鎖の先を探そうと背後に視線を向ける。その先に見えたものに思わず息をのむ。

そこには2m程の大きさの赤い石がそ立っていた。それは私の胸におかれた魔核にそっくりで、私の手足につながれている鎖はどうやらその赤い石につながっているようだった。そして気付く、鎖がその赤い石に引っ張られていることを。


私は本能的な恐怖を感じ思わず走り出す。しかし、鎖が伸び切ったところでそれ以上先に進むことが出来ず倒れこんでしまう。私が倒れていることなどお構いなく、鎖はゆっくりと引っ張られ赤い石に飲み込まれていく。


手足についた枷を外そうと試みるも、びくともしない。何となくではあるが、このまま赤い石に飲み込まれてしまったら本当に終わりだと、そう感じた。


ふと、今この場とは別の光景が頭に浮かんだ。目の前にアインシュ=ヴァレンタインと体格の良い一人の騎士が目に入る。


(確かあの方は、ドレッド領の騎士団団長の……タレスさん……?)


もしかしたら私を助けに来てくれたのかもしれない。ほんの少し希望が見えた。思わず笑みがこぼれる。しかし、次の瞬間。


「えっ……?」


騎士団長と思しき人物は激しい風の魔法を私に放った。何とか避けたようではあるが、そのまま剣を手に本気で騎士団長は攻撃をしてきていた。自分では体が全く動かせないが、この視点は間違いなく私のものだ。私が騎士団長から本気の攻撃を受けていることに困惑する。


声も聞こえてくる。騎士団長の声、アインシュ=ヴァレンタインの声、そしておおよそ自分のものとは思えない口調の……私の声。


聞くに私は単純に何かに操られているわけではないようだ。今の私は、かつて人類を恐怖のどん底に陥れた存在、魔王となっているらしい。騎士団長はその務めを果たすべく、私を殺そうとしているようだ。どうにも他人事のように感じるのは、体が私の意志で動かすこともできず、こうして見ることしかできないからだろうか。それでも騎士団長の殺気だけはひしひしと感じる。何としても私を殺さんとするはっきりとした殺意だ。


鎖に体が引っ張られる。しかし、私にはもう抵抗する気力がなくなってしまっていた。私はどうすることもできない、後はただ騎士団長に殺されるか、それともこの戦いに勝って人類の敵になってしまうか。ただ流れに身を任せるだけだ。

心なしか、私を引っ張る力が強くなった。赤い石が徐々に近づいてくる。もう手を伸ばせば届く距離だ。


(私の生まれた意味とは何だったのでしょう……?)


幼少期の頃、初めて魔法を使えた時は嬉しかった。お父様やお母様、みんなが喜んでくれて、一層頑張ろうと思えた。偉大な魔法使いになることを将来の夢と言い始めたのはいつからだっただろうか。人並み以上の努力は怠ったつもりはなかったが、成長を実感できなくなってきたのはいつからだっただろうか。何でもいいから”今”を変えたいと思ったのはいつからだっただろうか。


(そんな考えだったから罰があたった……、ということですか。お父様・お母様、先立つ不孝をお許しください。)


私と騎士団長の戦いは苛烈さを増していた。動きは見えてはいるものの、私では反応できないほどの速さで剣戟を繰り返している。そして蹴りを食らった騎士団長と距離が離れる。


ふと疑問に思う。アインシュ=ヴァレンタインは何をしているのだろうか。確かに今の魔王の力を持った私は強い。それでも、彼は私の想像が及ばない力を持っていることは身をもって感じている。騎士団長と協力して攻撃すれば、倒すこともできるだろう。


その考えに至ったちょうどその時、彼は騎士団長の隣に立った。その目はどこか決心がついたかのような、強い目をしていた。


(彼と騎士団長が協力すれば、たとえ魔王であっても勝ち目はきっとありません。何かと彼には迷惑をかけてしまいました、私の最期に彼がいるのも運命なのでしょう。)


死を覚悟したその時、彼が言葉を発する。


『青臭い理想論だってのは俺だって分かっています。それでもやっぱり俺はエスカを助けたい。』


信じられなかった。私はもう死んでしまうものだと、諦めきっていた。でも、彼は諦めることをせず、助ける方法を模索していたと言う。これこそがきっと、彼と私の最大の違いなのだろう。私にとって彼、アインシュ=ヴァレンタインはまぶしすぎる。


それでも、なぜだろうか。彼が『助ける』と口にした瞬間から、私も死にたくないという気持ちがふつふつと湧き出てきた。彼の言葉にはそれだけの”力”を感じた。


鎖に引っ張られる。背中が赤い石に触れる。もう時間は残っていないことは直感で分かった。涙をあふれさせ、顔をくしゃくしゃにしながら、手を伸ばす。


「たす……けて……」


目の前の空間に亀裂が走り、光がほとばしる。伸ばした私の手が、暖かい誰か(・・)の手につかまれ、引っ張られる。気が付いたら、私の手足につながっていた鎖はなくなっていて、赤い石から引きはがされる。


私以外誰もいなかったはずの空間に現れた誰か(・・)によって抱きしめられる。その人の腕の中はまるでお母様のように暖かかった。私は情けなくも、大きな泣き声をあげる。まるで、赤子の産声のように。


本当はこの誰か(・・)が誰なのかはわかっている。死を覚悟し、すべてを諦めた私を救うために、最期まで諦めず、戦った彼。


彼が赤い石に向かって、まっすぐに手を伸ばす。その手から、強力な魔力のようなものが放たれる。その瞬間、私の目の前は真っ白になった。


四十話いかがだったでしょうか。すべてを諦めてしまったエスカと最後まで諦めず救おうとしたアイン、この二人の対照的な感じをエスカ視点で書きたかったのですが、ちょっと冗長になってしまった気がします。文才が欲しい。


見事にワクチンの副反応に襲われ、書き溜めもなくなってしまったので次回更新は10/15(金)としたいと思います。それが第二章最終話となる予定です。


追記:予約投稿をミスした上に10/16(土)と書こうとしていたのに間違えていることに今気づきました。今さら訂正するのもあれなので、10/15(金)にちゃんと更新したいと思います。ちなみに今はだいぶ副反応もおさまりました。

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