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実験好き男子の魔法研究  作者: 日野萬田リン
第二章:学院編
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第三十六話:暴動、そして戦闘開始

前回のあらすじ:アインの助っ人は騎士団長タレス。エスカはようやくコッドの本性に気が付いたが、時すでに遅し。


前回の続きでエスカ視点から始まります。そして、ついにアイン達vsコッド達が開始します。

<エスカ視点>


「いやっ、来ないで!」


コッド先生が怪しく赤く光る石を手に近づいてくる。私は恐怖感からか、本能的にそれを拒絶する。


「エスカ、そんなこと言わないでくれよ。魔族と協力しているのを黙っていたことは悪いとは思ってるけど、他は嘘もついていないんだ。」


そう言ってコッド先生は一旦立ち止まると、持っていた赤い石を宙に掲げる。


「これは魔核といってね。強力な魔物の核となる部分だ。いや魔物の魂そのものといっても過言ではない。これを取り込むことで人間は大きな力を得る。才能だけでは届きえない領域に足を踏み入れることが出来るんだ。」


そう言ってゆっくりと魔核をおろす。そしてほんの少し悲しげな顔を見せる。


「だが誰にでもというわけにはいかない。ある程度の力がないと体ごと崩壊してしまうのでね。私自身が取り込むにはこの魔核は力が強すぎる。だけど、エスカ、君は違う。魔法使いとしてしっかりとした実力を持ち、魔力も豊富にある。君なら崩壊することなく、この魔核を取り込むことが出来る。まあ、君の人格が最後まで残っているかはわからないけどね。」


コッド先生が恐ろしい。そこに立っている魔族よりもはるかに恐ろしく感じる。助けを求めて私は出来る限り大きな声で叫ぶ。そんなことお構いなしとばかりにコッド先生は歩み寄ってくる。とうとう私の横たわるベッドのすぐ近くまで来てしまった。


「そう嫌がるな、君が求めていた力がここにあるんだ。これさえあれば君はアインシュ=ヴァレンタインなど赤子同然に扱うことができるだろう。本当にうらやましい。」


そう言ってコッド先生は私の胸の上に魔核を置く。皮や肉があるはずなのに、まるでそんなの関係ないかのように魔核は私の体にめり込んでいく。全身に激痛が走る。喉から出る叫び声が自分のものだとは信じられない。



痛い。


なんでこんなことになったのだろう。私が求めた力はこんなんじゃない。


いたい。


どうして?力を求めてしまったから?いやだ。死にたくない……。


いた…い……。


だれか……たす…けて……。


私の意識はそこで暗闇に落ちた。




<三人称視点>


エスカの叫び声が治まった。少し離れた場所に待機していたコッドがゆっくりとエスカの横たわるベッドに近づいていく。エスカの様子を確認したコッドは、満足そうにうなずき、大きな笑い声をあげた。


「ははは、成功だ!体が崩壊してもいないし、魔物化の兆候も見られない。この子は間違いなく大きな力を手に入れた!才能だけでは絶対に届かないはずの領域へたどり着いたのだ!これは人類の大いなる進歩だ。私は歴史にその名を刻んだんだ!」


その様子を魔族の男はどこか冷めた目で見つめていた。まるでコッドのことを憐れんでいるかのように。


エスカの目がゆっくりと開かれ、周囲の様子を確認するように顔を動かす。体を動かそうとして、ガシャンと音が鳴る。まだ外されていない手枷を不思議そうに見つめる。


「エスカ、気が付いたのか。もうその枷は必要ないな。すぐに外そう。」


コッドが枷を外す。すべての枷を外すと、ゆっくりとエスカは起き上がり自分の体の感触を確かめるかのように体を動かす。


「調子はどうだ。ああ、言わなくても分かる。最高の気分だろう。力を手にするというのは概して気持ちがいいものだからな。だが、これはまだ始まりに過ぎない。もっと実験を重ね、最高の魔法使いを大量に作り上げるんだ。ああ、夢が広がるよ。」


そうまくしたてるコッドの方をエスカは不思議そうに見つめる。ゆっくりと右手をコッドの方に向けた瞬間、轟音とともにコッドに雷が落ちた。雷が直撃したコッドはほんの少し焦げた臭いを発しながら倒れる。誰の目からも絶命したの明らかであった。


「なんじゃこの人間は。ぐちぐちと喚きおって。魔王(・・)たる我の前で騒々しいぞ。」


エスカが、いやエスカだったものがあげた右手を下ろしながらすでに物言わぬコッドに向かってそう言う。その様子を見た魔族の男は今度は満足そうな顔をして、跪き、頭を下げる。


魔王様(・・・)、復活おめでとうございます。俺、ああいや、私たちはあなたの復活を心よりお待ちしておりました。」


「うむ、我を復活させたのはお主でったか、大儀である。しかし、まだ魔核が体になじんでおらぬようじゃ。魔力をうまくコントロールできん。」


「勇者にやられてしまった際に、魔核にも大きな損傷がありましたので、完全な回復には時間がかかるでしょう。ですが、魔王様が復活なされたと知れば、魔族も再び一致団結して、今度こそ人を滅ぼすことが可能でしょう。」


「時間がかかるのはしょうがないの。じゃが、下手に今動けば体が我の魔力に耐え切れん可能性がある。少し瞑想でもして魔力の制御に我は努める。お主は入り込んだネズミの処理を頼む。」


魔族の男は自分たちが通ってきた通路の方を見据える。ネズミが二匹、この建物に入り込もうとしている。


「俺は戦闘が苦手なので、通してしまうかもしれませんが構いませんか?」


「かかか、もしここまで来たなら、我が相手してやるとしよう。」


魔族の男は恭しく礼をして、転移魔法を発動させ、その場を後にした。魔族の男がいなくなったのを確認して、エスカの姿をした魔王はその場に座り込み、目を閉じ、魔力のコントロールを始めた。




<アイン視点>


ラビから情報をもらい、実験が行われている可能性が高そうな建物を探した結果、最も怪しいのは今目の前にある廃工場であるということが分かった。


早く中に入ろうと思い、扉に手をかける。その瞬間、背後からものすごいさっきのようなものを感じた。俺は剣を抜き、後ろから近づいてくる何かを警戒する。

暗くてよく見えなかったが、近づいてくるのは人のようだ。近づいてきたその何者かの顔を見て安堵の息を漏らす。


「タレス騎士団長。」


「君は確か、アインシュ君だったな。なぜ君がここにいる。」


俺は不自然に暴動が起こっていない区画があるという情報を得て、エスカを助けるためにここに来た旨を伝える。何となくだが、ラビの名前は出さない方が良いかと感じたので、情報元は黙っておくことにした。


「なるほど、我々騎士団にも同様の情報が入ってな。多くの人員を割くことが出来ないから、私自らやってきたというわけだ。」


タレス騎士団長がいてくれるのであればとても心強い。この人が相当な実力者であることは見れば分かる。


俺は再び扉に手をかけて、ゆっくりと開ける。中からは何の音も聞こえない。気配も感じなかったので、物音を立てないようにしてゆっくりと廃工場の中に入る。タレス騎士団長も俺に続いて入ってくる。中に誰もいないことを確認すると、騎士団長は小さな声で呪文を詠唱し光の魔法を発動させた。工場に入る前の受付のような場所で、奥へ続く通路が見える。


奥へ進もうと歩み始めたその瞬間、部屋の隅の方から気配を感じた。俺は剣を抜き臨戦態勢に入った。横ではタレス騎士団長も同様に剣を構えていた。


部屋の隅にいたのは魔族の男であった。先程までは確かにそこに何もいなかったはず。それなのにこの男がいるということは、以前戦った魔族と同様に転移を使えると考えてよいだろう。


「まいったな。想定より早いんだよ、めんどくせえ。なあ、一時間後に出直してくれないか?」


茶化すように魔族の男は言う。隙だらけだ。踏み込もうと力を入れた瞬間、隣から風を切るような音が聞こえ、その直後に金属音が響き渡る。


「おいおっさん、話を聞く気はねえのかよ!」


タレス騎士団長の剣を、逆手にして持った二刀の短剣で防いでいる。かなりのスピードだったはずだが、それを受けることが出来たということはこの魔族もかなりの実力者なのだろう。魔族の男は騎士団長の腹を蹴って吹き飛ばすことで距離を取った。


「アインシュ君、この男は私が引き受けよう。君は先の様子を見てきてくれ。心配はいらない。この程度の男なら何人も切ってきた。すぐに追いつくさ。」


そういう騎士団長の顔はどこか余裕が感じられる。それに対し、魔族の男の顔は引きつってしまっていて、余裕などないようだ。俺は小さく頷き、一気に奥の通路の方に走り出す。


「はいそうですか、って通すわけないんだよなあ!」


魔族の男が俺に迫ってくる。短剣で俺に切りかかってくるが、その刃は騎士団長の剣によって軽く受け止められる。今度は先程とは逆に、騎士団長が魔族の腹を蹴飛ばして距離を取る。そこまで確認して、俺は暗い通路を奥へ進んでいった。


三十六話いかがだったでしょうか。エスカに魔核が埋め込まれていく場面は某錬金術師アニメを参考にしたので、既視感を抱いた方は多いのではないでしょうか。そして、まさかの急展開、あっけなくコッドは死んでしまい、魔王が登場しました。次回はタレスvs魔族の男です。


土日に書き溜めをしょうと考えているので、次回更新は10月11日を予定しています。

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