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実験好き男子の魔法研究  作者: 日野萬田リン
第二章:学院編
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第三十四話:捜索、そして友達

前回のあらすじ:エスカは危険な実験のモルモットにされるかもしれない。助けに行きたいが、学院長に待機命令を出されてしまう。


超有能なルームメイト、ラビの活躍回です。

寮の自室で自分のベッドに腰を掛ける。両手で自分の顔を覆い、自分の不甲斐なさで泣いてしまいそうな自分の顔を隠す。


(……大丈夫、俺がいなくても大丈夫なはずだ。今回の件で衛兵も動いている。話が届いていれば、騎士団も動いているかもしれない。学院の一生徒に過ぎない俺が動かなくても、きっとエスカは助かるはず……。)


心の中で自分に言い訳をするが、心は全く晴れない。部屋の扉が開かれる。少し重たい足音からラビが入ってきたのだと分かった。


「アイン、戻ってきていたのかい?今、外は大変なことになってるらしいね。」


「……そうだね。」


「エスカの誘拐だけじゃないよ、なぜだか分からないけど町の各地で暴動が起こっているようなんだ。衛兵や騎士団もそちらの対応に追われているらしい。」


思わず顔をあげてラビの方を見る。暴動だって?それじゃあ、今エスカの捜索のために動いている人員はどの程度いるんだ。ちゃんと助けることが出来るのか?


「なんて顔してるんだ。せっかく良い顔なのに台無しだぜ。」


俺の顔を見たラビがそう口にする。その目に何か見透かされているように感じて、思わず目をそらす。きっと今の俺の顔は相当ひどいのだろう。何も言うことが出来ない。


「……こんなんじゃ頼まれなくたってやってたよ。」


ラビが小声で何か言う。よく聞き取れなかったので、ほんの少し目をラビの方に目を向ける。そこには拳を振り上げて今にも殴りかからんとするラビの姿が見えた。


頬に鋭い痛みが走り、俺は吹き飛ばされる。訳が分からない。しかもなぜか知らないが、ラビがうずくまっている。別に反撃したわけでもないのに。本当に何が起こったのかわからない。


「うおぉ、人を殴るのなんて初めてだけど、めちゃくちゃ痛い。なんで殴った側の僕がこんなに痛いんだよ……」


どうやら殴った際に手を痛めてしまったようだ。喧嘩なんてしたことなかったのだろうが、腰が入ったなかなかいいパンチだった。というか正直めちゃくちゃ頬が痛い。口の中にほんのり血の味もする。口も切ってしまったようだ。


ラビが手の痛みに耐えながら、ゆっくり立ち上がる。


「寮の玄関でアイヴィちゃんに会ってな。今まで見たことがないくらい落ち込んでるようだから、元気づけてほしいって言われてな。女の子に心配かけてあんな顔させるなんて、君最低だな。」


アイヴィが……。寮に入れないから、ラビに頼んだのだろうか。彼女にはいつも心配をかけてしまってるな。……あれ?


「なあ、元気づけるのに殴る必要あったのか?結構痛かったんだが。」


「痛みに慣れてる君より僕の方が痛かったね、間違いなく。それでお相子だ。……というのは冗談で、あまりにもお前が死にそうな顔してたからちょっと励ますぐらいじゃどうにもならないと思ったんだよ。うーん、さっきよりはましだが、まだ顔が死んでるな。もう一発行くか?今度は手を傷めないよう道具を使うけど。」


思わず笑みがこぼれる。ふざけてるように見えるが、ラビも俺のことをとても心配してくれているのを痛いほど理解した。


「おおよその事情は理解してる。そのうえで聞くよ、アイン。なんで君はこんなところにいるの。お得意の無詠唱魔法でも使って、さっさとエスカを救出したらいいじゃないか。子供だから?一人だから?それが何だっていうんだい?エスカを助けたくないって言うならしょうがないけど、そうじゃないんだろう?だったら、さっさと動けよ。じゃないともう一発僕の拳が飛んでくるぞ。」


俺はこの世界で子供に過ぎない。たった一人でできることなどたかが知れている。でもそれでもいいんだ。俺が助けたい、そう思ったから助けるために動く。ただのエゴだ。


ゆっくりと立ち上がる。俺の顔から悩みは消え去り、決意に満ちた顔をしているだろう。


「ありがとう、ラビ。おかげで目が覚めたよ。俺はエスカを助けることにした、ちょっと行ってくる。」


扉の方に歩き出すと、ラビが「ちょっと待って」と言いながら俺のことを止める。


「闇雲に探してもエスカの居場所は分からないだろう。だから、この僕がとっておきの情報を教えてやる。」


情報?ラビはもしかしてエスカの居場所を知っているのだろうか。ラビの方を向くと懐から一枚の紙を出し、机の上に広げた。その紙をのぞいてみる。どうやらこの町の地図のようだが、いくつか赤く印がつけてある。


「エスカが行方をくらまして、その捜索のタイミングで各地で暴動。こんなにタイミングが良いことがあると思う?最近は確かに治安が悪くなっていたけど、こんなに急に暴動に発展するとは思えない。しかも、この暴動は目的が不明なんだ。暴動に参加している人は、まるで操られているかのような動きをしている。エスカの失踪と暴動、この二つは何か関係があるね。」


確かにタイミングが良すぎる。そしてもう一つ気になるのは暴動の参加者が操られているかもしれないという点だ。それを聞いて思い出すのはエスカとの決闘。エスカも何らかの精神誘導の魔法をかけられていた可能性があった。

コッド先生本人はそのような魔法を使えないし、大勢に精神誘導の魔法を使うなど普通の人間には不可能だ。けれど、もし精神系の魔法が得意な魔族がコッド先生に協力しているとしたら。俺が倒した魔族ももともとコッド先生の協力者で、その関係で街中に入り込んでいたため近くにいたのだとしたら。


全部妄想に過ぎないかもしれない。でもなぜだか知らないが、そう考えると今までの出来事がすべてパズルのピースのようにかっちりとはまる気がした。


ラビが話を続ける。


「暴動の目的は不明だけど、エスカの失踪と結びつけたら話は別だ。エスカは何か危険な実験の実験体にされようとしてるんだろう?だったら、この暴動は衛兵や騎士をその実験場に近づけない事が目的じゃないかと考えたわけだ。それで、今暴動が起こっている場所を記したのがこの地図だ。もう分かるだろう?」


俺は力強く頷いた。各地で暴動が起こっている中、不自然に一区画だけぽっかりと暴動の起きていない地域があった。


「ここまであからさまだと、逆に罠かもしれない。けど、今情報といえるのはこれが限界だ。後は君に任せるよ、アイン。」


本当にこいつは有能な情報屋だ。これが罠でも構わない。そこにエスカにつながる手がかりがあるかもしれないのだから。俺は再び扉の方へ歩き始める。先程より足取りが軽い。


「最後にアイヴィから伝言だ。『行くのは止めません、でも無事に帰ってきてください』だとさ。」


きっと俺が行くことを分かっていたのだろう。ラビの方は見ず、手だけ挙げて答える。


本当に、ラビもアイヴィも俺にはもったいないほどの最高の友達だ。


三十四話いかがだったでしょうか。青春って感じがしますね。実はラビがこんなに有能なのも設定だけは考えているのですが、今のところそれが本編で描かれるかは未定です。ですが、ラビは本心からアインのことを友達だと思っていてこのような手助けをしています。

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