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実験好き男子の魔法研究  作者: 日野萬田リン
第二章:学院編
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第三十話:暴走、そしてお見舞い

前回のあらすじ:エスカとの決闘を行う。魔法の暴走からエスカを守るためにアインは大怪我をしてしまう。


三十話目です。目が覚めると知らない景色だったことは皆さんはありますか?ちなみに自分はあります。

全身に痛みを感じながら目を覚ます。体を起こそうとするが、鋭い痛みが走るため起こすことが出来なかった。何とか首から上を動かして周囲を見渡すと、一人の男がそれに気づいたのかこちらに近寄ってきた。


「ふむ、もう目を覚ましたのかい。ここは学院の近くにある治癒院だ。学院の保険医だけでは治療しきれないのでね。こちらに運んでもらったというわけだ。」


見慣れない景色だとは思ったが、ここは治癒院か。医療系の魔法のスペシャリストたちが集まっているとは聞いているが。


「とりあえず君の容体について説明するね。肋骨・腕・足を含む10箇所以上の骨折に加え、大きな火傷。どれも命に別状はないとはいえ、重症だね。まだ一日しか経っていないのに目を覚ますとは、君は頑丈なのだな。」


身体強化魔法を使っていたからこの程度で済んだのだろう。一歩間違えれば本当に命を落としていたかもしれない。


「エスカ……は……?」


声を出すことすら億劫ではあるが、これだけは確認しておきたい。


「エスカ……、ヴィレッジ家の令嬢であったかな。彼女も一命はとりとめたよ。骨折や火傷は君の方が重かったが、彼女は頭を強くぶつけていてね。ちょっと前まで生死の境をさまよっていたが、峠は越したと言っていい。」


良かった。爆発に巻き込まれた衝撃で、エスカを離してしまっていたので無事なことが確認できただけでも良かった。


「意識も問題ないようだね。治療は行ったが、激しい運動などをすると骨折は再発する恐れがあるのでしばらく運動は厳禁だ。とはいっても、その痛みが治まるまでに二、三日はかかるだろうからそれまでは入院してもらうがね。」


これだけの重傷で数日の入院で済むとは。医療に関しては魔法がある分、前世より進んでいるのかもしれない。とりあえず一番心配だったエスカの体のことは聞けたので良しとしよう。俺は目を閉じて、深い眠りに落ちた。




周囲から話し声が聞こえて目を覚ました。眠りにつく前より心なしか痛みが引いている気がする。体を動かそうとするが、やはりまだそこまで回復はしていないようだ。


「あっ、起こしてしまいましたか?すみません。」


声の方に視線だけ向けると、心配そうな顔をしたアイヴィの顔が見えた。他に誰かいるのだろうかと周囲に意識を向けると、これまた心配そうな顔のヨーダ兄さんとラット兄さんがいた。


「あー、悪い。ラットとアイヴィちゃんは初対面だったから、互いに自己紹介してたんだ。」


「そうだね。それにしても心配したよ。急に魔法学院から連絡が来て、『弟さんが重傷を負い治癒院に入院しました』なんて言われたんだから。」


ヨーダ兄さんもラット兄さんも忙しいはずなのにわざわざ時間を作ってくれたのだろう。心配をかけてしまったことを申し訳なく思う。


「それにしても一体何をしたらこんな大怪我をするんだい?また魔族が出たわけではないだろうし……、まさか危険な実験とかしてるんじゃないだろうな?」


ラット兄さんからしたら俺は魔法の実験狂いみたいなものなのだろう。真っ先に思い浮かぶのが魔法の実験とは。すると、ヨーダ兄さんも真剣な表情に変わり事情を聴きたそうにしてきた。


「まだアイン君は話すのもしんどそうなので、私が説明します。とはいっても、詳しい事情は私も知らないんですが……。」


そういってアイヴィが助け舟を出してくれた。正直、まだ話すのもしんどいので、代わりに説明してくれるのは助かる。それに細かい事情など俺も知りたいのだ。


アイヴィがかくかくしかじかと兄さんたちに説明している。訓練をしていたら急に決闘を申し込んできたこと、決闘で魔法が暴走したこと。特に訂正することもなかったので俺も黙って聞いていた。


「決闘か……。また古臭い慣習を持ち出してきたな。しかし、その教師はどういうつもりだったんだろうな。生徒に決闘を持ちかけるように唆し、決闘中の魔法の暴走も止めようとしないなんて。」


ヨーダ兄さんが俺の言いたいことを言ってくれた気がする。何か考えながらアイヴィの説明を聞いていたラット兄さんが口をはさむ。


「決闘を持ち掛けた理由は分からないけど、他は一応説明できるね。学院の決闘で教師が認めたから断れなかったという前例は確かあったはずだ。それもずっと昔だったはずだけど。あと魔法の暴走を止めようとしなかった件だけど、立会人は決闘が終わるまでは干渉してはいけないっていう決闘のルールがあるんだ。おそらく魔法が暴走した時点では勝敗が決していなかったため、手を出すことが出来なかったんじゃないかな。」


なんと。そんなことまで知っているなんて、さすがラット兄さんだ。しかし、わざわざ説明してくれた兄さんには申し訳ないが、コッド先生がそこまで考えていたとは思えない。俺には何か別の狙いがあるようにしか思えないのだ。


「ま、アインが危険な実験に手を染めたわけではなくて良かったな。」


ヨーダ兄さんもそんな風に思っていたのか。そこまで信用がないのかと少し悲しくなる。


「はは、もし次に怪我したら『ああ、また女の子を守ろうとして怪我したんだな』と思うことにするさ。魔族の時も今回も、結局はそういうことだったんだし。」


「そうだねヨーダ兄さん。ああ、いつから僕の弟はこんな"たらし"になってしまったんだろう。」


そういって二人は笑う。反論したいが、うまく話すこともできないのでそれすらも厳しい。俺はすがるようにアイヴィの方を見ると、アイヴィはどこか冷たさを感じる笑みを浮かべて、「たらし……、たらしかぁ……。」とつぶやいている。怒った時の母さんを彷彿させるような笑みだ。


俺に味方はいないようだ。




「さて、そろそろ俺はお暇するかな。デザルグに仕事押し付けてきてるし、そろそろ帰んないと後で復讐されちまう。」


あれから軽く近況の報告をお互いにしているとヨーダ兄さんがそんなことを言い出した。


「そうだね。僕もそろそろ帰るよ。大量に出てる課題を片付けなきゃいけないからね。ここから官吏学院は割と距離もあるし。」


やはりヨーダ兄さんもラット兄さんも忙しかったのか。でも仕事を押し付けるのはよくないと思うのだが。


「んじゃ一緒に出るか。最後に、アインもアイヴィちゃんも気をつけろよ。今回の件とは関係ないだろうが、最近妙に治安が悪くなってたりするからな。騎士団でも見回りを強化しているが、そもそもそういうのに出くわさないよう気を付けるんだぞ。」


それから二人は「じゃあな(ね)。」といって部屋から出ていった。残された俺とアイヴィの間に沈黙が流れ、少し居心地の悪さを感じる。何か話題がないかと思案する。


「そっ、そういえば。エスカの様子は知ってる?」


エスカの名前を出すと、ほんの少しだけジト目で俺を見た後、ため息をつきながらも教えてくれた。


「アイン君が身を挺してかばったので命に別状はないらしいです。頭を打っていたため、まだ意識は戻っていないようですが。」


まだ意識は戻っていないのか。意識が戻ったらなんと声を掛けたらいいだろうか。決闘は結局俺の勝ちということになってしまったし。


「ずいぶんのその人のことを気にかけてるんですね。」


アイヴィのジト目が強くなった気がする。しまった、話題の選択を間違ってしまったか。


「まっ、まあ、彼女はクラスメイトで友達だしね。しかも責任の一部は俺にある気がしなくもないし。」


彼女がここまで追い詰められてしまった原因に俺がいるのは間違いない。もう少し上手くやっていれば、こんな大怪我することもなかっただろう。色々と後悔はあるし、人の心というものは本当にわからないことばっかりだ。


アイヴィの手が俺の手の上に乗せられる。えっ、と思いアイヴィの方を見ると泣きそうな顔でこちらを見ていた。


「彼女がどんな経緯で決闘を申し込んで、魔法を暴走させるほどまでに追い詰められてしまったのか、私には分かりません。なので、これは私のわがままなんですが、心配させないでください。爆発に巻き込まれたアイン君を見て、私、わたしは……。」


そういって言葉を詰まらせてしまった。その後、アイヴィが泣き止むまで俺も何も言うことはできなかったのだった。

三十話目いかがだったでしょうか。ヨーダとラットの二人の兄は実は自分の兄を参考にした部分があります。弟の浮いた話に対して、二人で茶化してくる感じはそっくりです。治癒院でのイベントが思いつかなかったので、次回には退院しています。

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