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実験好き男子の魔法研究  作者: 日野萬田リン
第二章:学院編
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第二十八話:授業、そして決闘

前回のあらすじ:アベル先生とアイヴィに魔力操作を教える。エスカはどうも元気がないようだ。


二十八話目です。前半はアイン視点、後半はエスカ視点です。タイトルが若干のネタバレになっていますが、楽しんでいただけたらと思います。

いつものように放課後訓練をしていると、アイヴィが嬉しそうな顔でこちらに近づいてきた。


「こんにちは、アイン君。いつものように訓練ですか?」


「やあ、アイヴィ。見ての通りだよ。前みたいに急に魔族に襲われても大丈夫なようにきちんと鍛えておかないとね。」


「魔族なんてそうそう出会うものではないですし、ましてやこんな街中ならよっぽどのことがない限り会わないと思いますけど……。」


アイヴィの言う通りではあるのだが、やはり前回魔族が急に現れたことが心に引っかかっていたため、しっかりと訓練をしておこうと思っていたのだ。


「そうだ、アイン君に教わっている魔力操作と無詠唱魔法ですが、進展があって話そうと思ったんです。」


「魔力操作と無詠唱魔法?ということはもしかして……。」


「はい!ついに無詠唱魔法に成功したんです!」


それは本当にすごい。魔力操作がうまくいっていなかったので、もう少し時間がかかるかと思っていたのだが。


「とは言っても初級魔法ぐらいの威力ですし、まだ詠唱した方が早いぐらいですけどね。」


そう言ってアイヴィは目を閉じて手を前に出した。ほんの数秒後、彼女の手のひらに小さな炎が浮かび上がった。彼女は目を開けると、「どう!?」と言わんばかりの笑顔でこちらを見てきた。


「それでも魔力操作の感覚はつかんでいるということだよね。慣れれば魔力操作は早くなっていくだろうし、動かせる魔力の量が増やせればより大規模の魔法も発動させることが出来るさ。」


アイヴィの魔力は俺よりはるかに多い。おそらくこのまま魔力操作をマスターしたら、きっと俺なんかよりはるかに優秀な魔法使いになることが出来るだろう。


俺とアイヴィがそこで話していると、こちらに向かって走ってくるラビの姿が見えた。息を切らして慌てた様子で俺たちのところまで来ると、ぜぇぜぇと肩で息をしながら膝に手をついた。


「ラビ、そんなに慌ててどうしたんだ?息を切らして全力疾走なんてお前らしくないじゃないか。」


「うっ、うるさい。いや、そんなことはどうでも良い。アイン、今すぐ訓練所から出てさっさと帰るんだ。さすがに寮までは……。」


ラビが言い切る前に、学校の近くにいた生徒たちがざわざわとしだした。ラビがそっちの方を向き「遅かったか」とつぶやく。


俺も目線をそちらの方に向けると、先ほどまでの元気のない感じとは打って変わって、どこか心を決めたかのような顔をしたエスカがこちらに悠然と歩いてくるのが見えた。


わけが分からない。エスカは確かコッド先生の所に呼ばれていたはずだが、もう話は終わったのだろうか。それにしても彼女の雰囲気が数刻前とは打って変わってしまっているのも気になる。混乱から抜け出そうと頭を回転させていると、エスカがもう俺の目の前までたどり着いていた。エスカは一度大きく呼吸をすると、意を決して言葉を発する。


「この言葉を言うのは二度目になりますね。私、エスカ=ヴィレッジはアインシュ=ヴァレンタインに決闘を申し込みます。」


「は?」


思わず変な声が出てしまうほどに予想外の言葉がエスカから発せられた。このタイミングで決闘だって?もしかして、自分が学年で一番魔法が使える事を、魔族を倒した俺を決闘で倒すことによって証明しようとしているのだろうか。確かに彼女のプライドを守るという点だけなら決闘は分かりやすい手段なのかもしれないが……。


「えっと、じゃあ俺もこの言葉を言うのは二度目になるんだけど……。断る。」


「いや、この決闘は魔法学院が認める正式なものだ。断る権利はお前にはない。」


野次馬をかき分けるようにして、コッド先生がそんなことを言いながら現れる。


「貴族個人の決闘は断ることが可能だが、教師である私が認めたこの決闘は正式なものと判断する。」


自分が無茶苦茶なことを言っているのが分かっているのだろうか。確かに上の人間に命令されて下の人間が決闘をするというシステムはあったはずだが、悪用を防ぐためにそのシステムが適用されるのは王家ぐらいだったはずだ。くそ、決闘に関する法についてしっかりと覚えておけば良かった。


反論をするが、周囲の野次馬たちの歓声にかき消されてしまい、エスカもコッド先生ももうこちらの話に耳を傾けてくれない。


そうして俺はエスカと決闘をすることになったのだ。どうしてこうなった……。





<エスカ視点>


私は今コッド先生のもとに向かっている。理由は簡単で呼び出しを受けたからだ。最近の私の授業態度が良くないものなのは自分でも分かってはいるが、どうもかつてのように魔法に向き合うことが出来ない。


実技授業で超級魔法を発動させられなかった時の周囲の目、もちろんそれにはコッド先生も含むが、それを思い出すと今でも体が震えてしまう。今まで自分が一番であり続けていたため、自分がアインシュ=ヴァレンタインより劣っているのではないかと考えるとどうすればいいか分からなくなってしまっていた。


そんなことを考えながら歩いていると、コッド先生の研究室の前にたどり着いた。ノックをするとすぐに返事が返ってきたので、扉を開ける。様々な資料や本が整理されて大きな本棚にある以外はいかにも普通の部屋という感じだ。


「よく来たね、エスカ。とりあえずソファに座りなさい。」


コッド先生がそう言ったので、遠慮がちにソファに腰を掛ける。この後説教が待っているのは間違いないので、少し憂鬱になる。


「さて、さっそくなんだが……。最近の君の授業態度はどうにも目に余る。予習・復習もしないどころか授業中もどこか呆けている。非常に優秀な生徒だと思っていただけに私は残念に思っている。」


コッド先生の言葉が心に刺さる。


「先日の事件以降、一年の中で最も優秀な魔法使いはアインシュ=ヴァレンタインだと言う人間も多い。君は入学式の日に自己紹介で言っていたね、魔法に関しては誰にも負けるつもりはない、と。それなのに今は……、はぁ。」


(やめて、そんなこと言わないで。)


膝の上で握った拳に力が入る。もしあの日、魔族に襲われたのが私だったら、なす術なく殺されてしまっていただろう。魔族が襲来してきたのに死者が一人も出なかったのは間違いなくアインシュ=ヴァレンタインのおかげなのだ。


「君がそんな状況ではもう認めてしまったも同然だ。アインシュ=ヴァレンタインこそがこの学年で一番優秀な魔法使いであると。」


「違う!」


思わず叫んでしまった。それを認めてしまうことは、今までのエスカ=ヴィレッジという存在そのものを否定してしまうことになってしまう。私は今までも、そしてこれからも一番であり続けなければならないのだ。


コッド先生は「ふむ」と言って顎に手を当てる。少し考えるそぶりを見せ、エスカの方をまっすぐと見つめてくる。


「そう思うのであれば、証明するしかあるまいな。」


「しょう…、めぃ…?」


先生の言ったことがいまいち理解できず、声が震えながらも聞き返してしまう。だって証明するということはつまり……。


「以前君はアインシュ=ヴァレンタインに決闘を申し込んでいたな。その時はけむに巻かれてしまったようだが、今回は私も立ち会って正式な決闘を行おう。アインシュ=ヴァレンタインにその決闘で勝つことによって、自らが一番であると証明するんだ。」

二十八話目いかがだったでしょうか。実際の教育現場にこんな先生がいたら非難轟々でしょうね。でもなぜかコッド先生の場面を描いている時は筆の進みがいい気がします。次回はエスカとの決闘です。

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